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日本伝統工芸品産業に関するアンケート~Ⅰ

2017/07/20
日本伝統工芸品産業に関するアンケート~Ⅰ



「日本伝統工芸品産業に関する知的財産権・業態アンケート」
~調査分析結果のご報告 第一弾~
「知財アンケートⅠ」




当機構では去る2016年11月、金沢工業大学院生 石井典子さんとの共同研究として「日本伝統工芸品産業に関する知的財産権・業態アンケート」 実施いたしました。
このアンケートは、伝統工芸産業内における知的財産に関する現状や問題点、また生産活動を行う上での問題点を明らかにすることを目的として行ったもので、多くのご協力のもと121もの団体・企業様より回答を賜ることができました。ご回答くださいました皆様に厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

下にアンケートの調査分析結果第1弾として「知財アンケートⅠ」の結果をご報告いたします。

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調査内容

●名称:「日本伝統工芸品産業に関する知的財産権・業態アンケート」~知財アンケートⅠ~

●目的:伝統工芸産業を生業としている個人・団体の知的財産に関する現状・意識・問題点を明らかにする
    
●調査者:「知財アンケートⅠ」…石井 典子
     
●対象:日本伝統工芸士、製造事業者、事業協同組合他330件(内回答があったのは121件)

●方法:アンケート用紙を郵送にて送付。回答をFAXで返信、もしくは返信用封筒で返送。


調査結果
アンケート送付330件中、121件から回答をいただきました。
カテゴリー別の回答件数は下の表のようになっております。全てのカテゴリーの方々からバランスよく回答いただくことができました。

回答者

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~知財アンケートⅠ~【調査者:金沢工業大学院生 石井 典子】

Q1.以下の言葉について聞いたことがありますか。
Ⅰ問1

Q2.「Q1」の権利の中で現在保護を受けている権利はありますか
Ⅰ問2

Q3.現在携わっている伝統工芸・文化、工芸技術で他者との競争において知的財産権について危機感がありますか。
Ⅰ問3

Q4.過去に「Q1」の権利等で、技術や知的財産について権利を侵害された、又は侵害していると警告を受けたことがありますか。
Ⅰ問4

Q5.今後、自身の伝統工芸・文化、工芸技術を継承していくために、知的財産権による保護が必要だと思いますか。
Ⅰ問5

Q6.「知的財産」を学んでみたいと思いますか。
Ⅰ問6

Q7.「知的財産」について学ぶ場合、ご自分でびたいですか。又は、会社・組織の部下に研修として学ばせたいですか。
Ⅰ問7

Q8.どのような日程であれば学びたいですか。
Ⅰ問8

Q9.どの程度の費用であれば学びたいですか。
Ⅰ問9


また、知的財産の活用については下のような意見をお寄せいただきました。

 ●知的財産権に対しての現状
 ・商標や意匠権についての基礎知識が当業界全般に希薄かと思う。
 ・商標などについては審査がとても厳しい。もう少し緩和してもらいたい。
 ・零細企業が多く、国・政府・地方自治体の協力がないと対応が難しい。
 ・制度の内容が現状に即していない部分がある。
 ・秋田県に於いては知財の専門家を派遣してくれる部署があり利用している。
 ・江戸時代から続いているものありで、自分たちで創作しているものではないので、自分たちには著作権がない。



 ●知的財産権による権利保護の必要性について
 ・特殊な技術に関しては保護すべきだと思う。
 ・最近は趣味のハンドメイドで様々なものを作成し、販売する人も多いため、これらと区別をするために知的財産権の活用も必要である。
 ・既存の技術の囲い込み(独占)が問題となったケースもあるため、慎重さも必要。
 ・一つ一つ手作りで製作しており、同じものは二つとないためあまり考えたことがない。
 ・昔のスタイルで製作しているため、型などは利用してもらって構わない。おそらく真似しても売れないはず。
 ・仕事に関して、知っていることは何でも伝えている。



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アンケート調査の結果、知的財産権に関する意識・認識は高く、権利保護のため既に知的財産権の保護を受けている、問題が起こったときには弁理士等に相談する心づもりである、という意見も見られました。そのことから知的財産権の侵害に危機感を持っている方が一定数いらっしゃることが分かります。
さらにその中でも商標権や意匠権は比較的関心が高いようです。
地域によっては、地方自治体が知的財産権に関するセミナーを行っていたり、専門に対応してくれる部署があったりするところもあるようですので、そういったものを活用するのも良い方法なのではないでしょうか。
しかしながら、全体の3分の2にあたる方は、「危機感を感じない」もしくは未回答となっており、全体としては知的財産権侵害への危機感は低い、という結果となりました。 また、制作には高度な技術が必要であることや、二つとして同じ作品がないことなどから『知的財 産の保護については今まで考えたことがなかった』、というご意見や、『知的財産の及ばない、それ以上の価値のあるものを作っていく必要がある』、というご意見も目立ちました。


第二弾「伝統工芸品産業・地域振興Ⅱ」アンケート結果とまとめに続く


レポート編集者/JTCO 中村あゆみ