江戸情緒を伝える心地よい揺らぎ~和船友の会(1)
訪問先: 東京都江東区「和船友の会」さま
訪問日: 2017年02月26日
船底に打ちつける水の音、水辺の茅を風が掻き分ける音、水鳥がみなもから飛び立つ羽の音。どれも動力で走る船の上では、気づくことのない音です。
時代劇などで、船頭さんの漕ぐ櫓(ろ)でゆらりゆらりと進む和船を目にしたことがある方も多いことでしょう。江戸は、その名の示す通り川や運河に囲まれ、目前に海を臨む水辺の街でした。そこでは、日々たくさんの和船が人や荷物を載せて、また漁をするために行き交っていました。東京都江東区の横十間川(よこじゅっけんがわ)親水公園では、そんな水辺の江戸情緒を味わえる、和船の乗船が楽しめます。
今回は、和船の操船技術を今に伝える「和船友の会」の会員の皆さまに、お話をお伺いしました。
レポート(1)
全ての人に和船体験を~和船友の会の活動
―「和船友の会」はどのようにして始まったのですか。
平成7年3月に実施した和船櫓漕ぎ試乗体験会がきっかけで、この会に参加した人が発起人となりその年の5月に結成されました。いまでは、東京だけでなく地方出身の会員も多くなっています。例えば、リタイア後にテレビやネットで見て操船の技術を学びに来る人、船舶関係の学校出身の若い人 など、さまざまな背景の会員が在籍しています。
―現在会員の方は何名くらいいらっしゃるのですか。
毎年4~5名ほど増えており、現在の在籍者は70名くらいですが、主に活動しているのはそのうち20~30名くらいです。20~30代の若い人も増えていますが、現役世代は平日には活動に参加できませんし、80代になるとなかなか体力的に大変になる人も多くなりますので。
―どのようにして船頭さんになるのですか。
先輩の船頭より操船を学び、検定試験に合格すると晴れて船頭になり、お客さんを乗せて船を漕ぐことができるようになります。また、櫓漕ぎの技術だけでなく、和船修理の技術も学びます。この船体保守の技術も非常に重要です。和船には所々に銅板が使われており、これが腐食してくるので手入れをしなければなりません。年に一回、二艘(そう)ずつ陸に上げて、2~3か月かけて修理します。
※記者メモ:取材した日も、操船を学ぶ見習い船頭さんや、艇庫で保守作業をしていた方がいらっしゃいました。
船首の銅板部分。
―新たな造船はどのようになっているのですか。
現在、江東区の佐野造船所に和船建造の技術を持った船大工さんがおられます。この造船所でもっとも最近作られたのは、2012年に進水した網船(船名:みやこどり)で、この船は、佐野造船所の龍太郎さん・稔さん兄弟による、和船友の会7艘目となる和船です。
―年間、どのくらいの人が乗船されるのですか。
この横十間川親水公園では、年50日ほどの乗船日があり、1日あたり平均100名とすると、年間5,000名は乗船されることになります。3~4月の大横川で行われる「お江戸深川さくらまつり」では、8日間で4,000名が乗船されます。
最近では外国人の方も増えており、オリンピックに向けてさらに増えていくと思います。
―イベント時の船の搬送はどのようにされているのですか。
「お江戸深川さくらまつり」や、3月に旧中川で行われる「リバーフェスタ」の際には、クレーンで釣り上げて大型トラックに乗せて搬送します。
船頭の方々は、皆さんお揃いの半纏に江戸柄の粋な帯を締め、操船時には編み笠を着用されるので、もうこれだけですっかり気分は江戸町人です。どの方も和船への造詣が深く、乗船時には大変興味深いお話をたくさん聞かせてくださいました。次回はいよいよ乗船のレポートです。
半纏に編み笠姿の船頭さん。
インタビューレポート(2)に続く。
いよいよ乗船!~ヴァーチャルリアリティによる「いまここで乗る和船」