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JTCOメルマガ『風物使』

2012年02月15日 配信
「雪雲が春誘う」~ 季節の使い・JTCO『風物使』立春号

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  「雪雲が春誘う」~ 季節の使い・JTCO『風物使』立春号
    vol.33 2012年02月15日発行(旧暦 01月24日・睦月)

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拝啓
各地で大雪が降り、寒い日々が続く冬の日々、皆さまいかがお過ごしで
しょうか。温かい栄養たっぷりの鍋物などで、体を芯から温めて流感に
も負けない体作りをしたいものですね。


+‥‥+ 2012年立春号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ……… 天から舞い降りる白い華:『雪』
 ・季節の行事………… 八戸えんぶり [青森県八戸市] 
 ・JTCOからのお知らせ 伝統工芸(1件)・伝統文化(8件)新規掲載 
 ・編集後記


,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…


【気象】天から舞い降りる白い華:『雪』

今年は欧州で寒波が押し寄せ、日本では各地で大雪が降るなど、寒く雪の多
い冬となりました。立春を過ぎ、例年なら咲いているはずの梅の花も、まだ
固いつぼみのままそのときを待っているものも多いのではないでしょうか。
かつての日本は今よりも寒く、雪も多かったと言われています。人々はどの
ように雪を見、冬を過ごしていたのでしょうか。

「沫雪は千重に降りしけ恋ひしくの 日長き我れは見つつ偲はむ」
(柿本人麻呂『万葉集』2334)

(訳:淡雪よ、千重にも降り積もれ。あなたへの思いを、降り積もる雪のよ
うに日々重ねる私は、雪にあなたを想っています。)

『万葉集』には、150首を超える雪の歌が、淡雪(沫雪)、白雪、大雪、初
雪などさまざまな表現で収められています。それらの多くは寒さや悲壮感を
感じさせるものではなく、雪のはかなさを切ない恋にたとえたり、初雪にそ
の年の豊穣を願ったり、梅とともに春の訪れを予感させたりと、美しく心や
身の回りの情景を表すものになっています。

平安文学にも、多くの雪の情景が登場します。その頃の貴族の屋敷は壁もな
い板張りの寝殿造りで、暖房器具といえば火桶(ひおけ)や炭櫃(すびつ)
と呼ばれる火鉢のようなものしかなかったので、相当寒かったはずなのです
が、文学作品には寒さに対するネガティブな表現はあまり出てこないようで
す。『源氏物語』の『朝顔』の段には、童女を雪の積もった庭に下ろして
「雪丸げ(ゆきまろげ=雪転がし)」をさせたとありますし、『枕草子』で
は雪をむしろ歓迎するくだりが多く、有名な「香炉峰の雪」の場面では格子
と御簾を高く上げて雪見をしたり、五節や御仏名(宮中で行う懺悔の儀式)
などの行事に雪が降らず雨になってしまうのは、残念だと書かれています。
屋敷の奥に閉じこもって火に当たるよりもむしろ、積極的に雪を楽しんでい
たことがうかがえますね。

雪が生んだ民間伝承としてよく知られるものに「雪女」の物語がありますね。
これは雪深い北日本のお話のようなイメージがありますが、愛媛県、鳥取県
などの雪の降る西日本にも同じようなものが伝えられているのだそうです。
雪女の物語は、吹雪が戸に吹きつける音が訪ねてきた誰かが戸を叩く音に似
ているため、子のいない老夫婦や妻のいない男が、待ち侘びたその人と一緒
に暮らすという、雪のように儚い幻想から生まれたとも言われています。貴
族階級が屋敷で雪を愛でていたころ、山野に住む民衆は家の中で誰かと肩を
寄せ合って春を待っていたのでしょう。

上品な冬のモチーフとして、雪柄は今でも人気があります。雪の結晶を初め
て観察したのは紀元前の中国人で、それが平安時代の日本に伝わり、「六出
(りくしゅつ)」、室町時代には「六花(りっか)」と呼ばれました。家紋
や着物に雪の結晶が描かれるようになったのは江戸時代以降で、雪を顕微鏡
で観察して結晶図を描いた『雪華図説』(土井利位・どいつとしつら、1832
年)が発表され、広く図柄として広まりました。雪粒の一つ一つがあのよう
な均整の取れた形であるということに、当時の人々も自然の造形の神秘を感
じたことでしょう。1936年、世界で始めて雪の結晶を人工的に生成したは中
谷宇吉郎という日本の物理学者でした。菱形12面体の氷の結晶に重力がかか
るとあのような美しい六角形になるのだそうです。

「冬ながら空より花のちりくるは 雲のあなたは春にやあるらむ」
(清原深養父(きよはらのふかやぶ・清少納言の曽祖父)『古今集』)

(訳:冬だというのに、空から花が舞い散ってきた。雲の向こうは、もう春
なのではないだろうか。)

雪の向こうには、花咲く春が近づいてきています。野山の花が咲くまでは、
空から舞い降りる雪の華と、白く輝く風景を心に留めたいものです。



,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

八戸えんぶり [青森県八戸市](2/17~2/20)

http://www.city.hachinohe.aomori.jp/kanko/festival/enburi/

※以下、上記ホームページより引用
八戸地方を代表する民俗芸能で、国の重要無形民俗文化財に指定されており、
青森冬の三大まつり、みちのく五大雪まつりに数えられています。
えんぶりは、その年の豊作を祈願するための舞で、太夫と呼ばれる舞手が馬
の頭を象った華やかな烏帽子を被り、頭を大きく振る独特の舞が大きな特徴
です。
その舞は、稲作の一連の動作である、種まきや田植えなどの動作を表現した
ものです。
また、えんぶり摺りの合間の子供達による可愛らしい祝福芸も、見る者を楽
しませてくれます。


,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『伝統工芸館』に新規記事が追加されました。

伝統工芸:三川内焼
http://www.jtco.or.jp/japanese-crafts/index.html

伝統文化:左義長まつり、八幡まつり、高岡御車山祭、安乗の人形芝居、春
鍬祭、稲荷神社獅子舞、秋田竿燈、幸若舞
http://www.jtco.or.jp/japanese-culture/index.html


,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第33号(2012年立春号)を最後までお読みくださったみな
さま、誠にありがとうございました。

冬になるといつも思うのが、「昔の人はどうやって冬を過ごしていたのだろ
う」ということです。貴族の館であれ庶民の粗末な庵であれ、暖房器具も衣
服もそろわず今よりもずっと寒かったのに違いはありません。かつての人は
寒さから逃避することよりも、むしろ寒さと向き合うことで冬の生活を楽し
く、豊かに過ごしていたのかもしれませんね。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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