JTCOメルマガ『風物使』
2011年10月28日 配信「夕焼空に雁が啼く」~ 季節の使い・JTCO『風物使』寒露・霜降号
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「夕焼空に雁が啼く」~ 季節の使い・JTCO『風物使』寒露・霜降号
vol.30 2011年10月28日発行(旧暦 10月2日・神無月)
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拝啓
朝夕は冷え込む日も多くなり始めた今日この頃、皆さまいかがお過ごし
でしょうか。インフルエンザも流行っているとのこと、寒暖の差に気を
つけて過ごしましょう。
+‥‥+ 2011年寒露・霜降号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
・今号のテーマ……… 文を運ぶ遠方の住人:『雁(カリ)』
・季節の行事………… 箱根大名行列 [神奈川県箱根町]
・編集後記
,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…
【生物】文を運ぶ遠方の住人:『雁(カリ)』
「秋の夜の露をばつゆとおきながら 雁のなみだや野べをそむらん」
(壬生忠岑『古今和歌集』巻5-258)
(訳:鮮やかに色づいた秋の草木は、夜露だけで染まったものなのだろうか。
悲しげに鳴く雁の涙が、落ちて野辺を染めたのではないだろうか。)
冬に向かい、山野が次第に荒涼とした風景に移り変わっていく秋の和歌には、
しばしば「雁」(ガン)が季語として登場します。ガンは秋が深まってくる
と北方から渡ってくる冬鳥で、春になり水がぬるむ頃になると再び北に帰っ
て行きます。
日本で見られるガンの仲間はマガン、カリガネ、ヒシクイなど数種類おり、
今では大規模な飛来地は北日本の湖沼に限られてしまっているようですが、
和歌や文学に描かれていた頃は、西日本でも身近に見られた鳥だったので
しょう。ことに秋の夕焼けの中をねぐらに帰っていくガンたちの物悲し気
な啼き声が、寂寥感漂う秋の情景や物思いする心を引き出すために多くの
歌に詠まれています。
また、ガンが隊列をなして山の向こうから飛来するさまは、戦国時代には
援軍に見立てられ、武門の吉兆の鳥として好まれました。吉祥の文様とし
て、雁文は柴田家や真田家の家紋としても用いられています。
「薄墨にかく玉づさと見ゆるかな 霞める空にかへる雁がね」
(津守国基『後拾遺和歌集』71)
(訳:夕霞の空を帰っていく雁の列は、薄墨紙にしたためた手紙を思わせる
ものだな。)
ガンが毎年遠方から飛来し、またどこへともなく飛び去っていく習性は昔の
人の想像力を駆り立てたようで、古来ガンは文使いとも考えられていました。
上記の歌は、その言い伝えとガンが群れて飛んでいくさまをかけたものです。
また、「雁道(かりのみち・がんどう)」とは、近世以前の日本人がガンな
どの渡り鳥が飛んでいく人知未踏の秘境として、陸奥・蝦夷の北方、または
朝鮮半島の東側にあると信じていた土地のことです。かつての日本人にとり、
ガンは身近な鳥ながら、神秘に満ち溢れた存在だったのですね。
ガンの啼く声やその飛ぶ姿が身近でなくなった今では、それらが秋の情景を
いっそう鮮やかにするものであるとは実感できなくなりました。北に旅する
ことがあれば、雁たちの集う湖沼を訪ねて、かつての日本人が彼らに感じた
思いを追憶してみたいものです。
,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
箱根大名行列 [神奈川県箱根町] 11月3日(水・祝)
http://www.hakoneyumoto.com/pr/daimyogyoretu/
小田原藩主・大久保氏の行列を再現したもので、「下にー下にー」の掛け声
と共に、旗持ち、露払い、挟み箱、毛槍、鉄砲などの大名行列170余人に
続き、芸者連や音楽隊など、総勢500名近くが早雲通りや滝通りなどを練
り歩きます。昭和10年、箱根湯本で温泉博覧会が開催されたときに始まっ
たお祭りです。
,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
『風物使』第30号(2011年寒露・霜降号)を最後までお読みくださったみな
さま、誠にありがとうございました。
カナダに住んでいた頃、学校や住宅地近くの空き地で、黒と白、茶色の模様
がくっきりと鮮やかな大きな鳥を時々見かけました。友達が、見つけるたび
に"Canada Goose!"と言っていたので、今から考えるとガンだったのだなと
思います。
彼らは堂々としたもので、大通りを横切るときは「ケーッ!」と大声を出し
て車を止めさせ、ドライバーたちが見守る中、悠然と車道を渡っていくので
した。なかなか車の途切れるタイミングを計りかねていた私も、ガンたちの
後をこれ幸いと渡ったものでした。
そんなガンたちの中には、渡りをせず一年中人里に住み着くつわものもいた
ようです。野性を失ってしまったのなら憂うべきですが、日本も鳥たちにと
ってそんな居心地の良い場所であってほしいとちょっぴりうらやましくも思
いました。
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【季節の使い・JTCO『風物使』】
発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日
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特定非営利活動法人 日本伝統文化振興機構(JTCO)
〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
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・編集後記
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【生物】文を運ぶ遠方の住人:『雁(カリ)』
「秋の夜の露をばつゆとおきながら 雁のなみだや野べをそむらん」
(壬生忠岑『古今和歌集』巻5-258)
(訳:鮮やかに色づいた秋の草木は、夜露だけで染まったものなのだろうか。
悲しげに鳴く雁の涙が、落ちて野辺を染めたのではないだろうか。)
冬に向かい、山野が次第に荒涼とした風景に移り変わっていく秋の和歌には、
しばしば「雁」(ガン)が季語として登場します。ガンは秋が深まってくる
と北方から渡ってくる冬鳥で、春になり水がぬるむ頃になると再び北に帰っ
て行きます。
日本で見られるガンの仲間はマガン、カリガネ、ヒシクイなど数種類おり、
今では大規模な飛来地は北日本の湖沼に限られてしまっているようですが、
和歌や文学に描かれていた頃は、西日本でも身近に見られた鳥だったので
しょう。ことに秋の夕焼けの中をねぐらに帰っていくガンたちの物悲し気
な啼き声が、寂寥感漂う秋の情景や物思いする心を引き出すために多くの
歌に詠まれています。
また、ガンが隊列をなして山の向こうから飛来するさまは、戦国時代には
援軍に見立てられ、武門の吉兆の鳥として好まれました。吉祥の文様とし
て、雁文は柴田家や真田家の家紋としても用いられています。
「薄墨にかく玉づさと見ゆるかな 霞める空にかへる雁がね」
(津守国基『後拾遺和歌集』71)
(訳:夕霞の空を帰っていく雁の列は、薄墨紙にしたためた手紙を思わせる
ものだな。)
ガンが毎年遠方から飛来し、またどこへともなく飛び去っていく習性は昔の
人の想像力を駆り立てたようで、古来ガンは文使いとも考えられていました。
上記の歌は、その言い伝えとガンが群れて飛んでいくさまをかけたものです。
また、「雁道(かりのみち・がんどう)」とは、近世以前の日本人がガンな
どの渡り鳥が飛んでいく人知未踏の秘境として、陸奥・蝦夷の北方、または
朝鮮半島の東側にあると信じていた土地のことです。かつての日本人にとり、
ガンは身近な鳥ながら、神秘に満ち溢れた存在だったのですね。
ガンの啼く声やその飛ぶ姿が身近でなくなった今では、それらが秋の情景を
いっそう鮮やかにするものであるとは実感できなくなりました。北に旅する
ことがあれば、雁たちの集う湖沼を訪ねて、かつての日本人が彼らに感じた
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箱根大名行列 [神奈川県箱根町] 11月3日(水・祝)
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小田原藩主・大久保氏の行列を再現したもので、「下にー下にー」の掛け声
と共に、旗持ち、露払い、挟み箱、毛槍、鉄砲などの大名行列170余人に
続き、芸者連や音楽隊など、総勢500名近くが早雲通りや滝通りなどを練
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『風物使』第30号(2011年寒露・霜降号)を最後までお読みくださったみな
さま、誠にありがとうございました。
カナダに住んでいた頃、学校や住宅地近くの空き地で、黒と白、茶色の模様
がくっきりと鮮やかな大きな鳥を時々見かけました。友達が、見つけるたび
に"Canada Goose!"と言っていたので、今から考えるとガンだったのだなと
思います。
彼らは堂々としたもので、大通りを横切るときは「ケーッ!」と大声を出し
て車を止めさせ、ドライバーたちが見守る中、悠然と車道を渡っていくので
した。なかなか車の途切れるタイミングを計りかねていた私も、ガンたちの
後をこれ幸いと渡ったものでした。
そんなガンたちの中には、渡りをせず一年中人里に住み着くつわものもいた
ようです。野性を失ってしまったのなら憂うべきですが、日本も鳥たちにと
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【季節の使い・JTCO『風物使』】
発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日
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TEL/FAX: 03-3431-5030
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