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JTCOメルマガ『風物使』

2011年09月15日 配信
「赤とんぼが風を切る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』白露号

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  「赤とんぼが風を切る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』白露号
    vol.28 2011年09月15日発行(旧暦 8月18日・葉月)

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拝啓
台風のあと、全国的に残暑が戻ってきた今日この頃、皆さまいかがお過ご
しでしょうか。本格的な秋の行楽シーズンを迎える前に、秋のお出かけの
プランニングなどもしておきたいですね。


+‥‥+ 2011年白露号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ……… 日本はトンボの連なる国?:『トンボ(蜻蛉)』
 ・季節の行事 ……… 吾妻神社馬だしまつり [千葉県富津市] 
 ・編集後記


,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…


【昆虫】日本はトンボの連なる国?:『トンボ』

「秋津羽の姿の国に跡垂るる 神の守りや我が君のため」
(『続後撰和歌集』)

(訳:あなたをお守りするために、神がトンボの羽のように美しいわが国に
降り立ってくださるのですよ。)

澄んだ秋空の下をスーイスイと音もなく滑るようにトンボたちが飛び交う風
景は、秋の情趣をかきたてるものですね。刈り入れの終わった水田などでよ
く見られるいわゆる「赤とんぼ」は十分に成熟したアキアカネ(特にオス)
たちで、梅雨の頃に一斉に羽化して暑い夏の盛りを涼しい山岳地帯で過ごし、
秋になると産卵のために群れをなして人里に降りてきます。

冒頭の歌にあるように、トンボの古名は「秋津(あきつ、あきづ)」と言い
ます。日本の国は古くは「秋津洲(あきつしま)」と呼ばれましたが、これ
は初代神武天皇が日本の国土を見渡して「蜻蛉(あきづ)の臀(とな)めの
如くあるかな(雌雄のトンボが尾をくわえ合い、交尾をしながら輪になって
飛んでいるように、山々が連なる美しい国だなぁ)」(『日本書紀』)と言
われたという故事に基づいています。また、トンボは害虫を捕食することか
ら日本では古来から縁起の良い虫とされてきました。同じく日本書紀に、吉
野で狩りをしていた雄略天皇(第21代)がアブに腕を刺さされたところ、ト
ンボが飛んできてアブをさらっていったため、帝が喜んでその地を「あき
つ」と名づけたという話も残されています。

「秋津洲」は当初は大和の一地方の呼び名でしたが、次第に日本の国全体を
さすようになり、「大和」の枕詞にもなりました。おそらくその頃にも、秋
にトンボたちが飛び交う風景がそこかしこで見られたのでしょう。沖縄の方
言では、いまでもトンボが「アーケージュ」と呼ばれ、古い日本語の名残り
を見ることができます。

「蜻蛉」と書いて「トンボ」とも「カゲロウ」とも読みますが、平安時代に
『蜻蛉日記』や『源氏物語』の第52帖の帖名となった『蜻蛉』は、いずれも
はかなさの象徴であることから、スイスイと飛ぶトンボのことではなく、1
日と経たずに命を終えるカゲロウのことを指していると思われます。鎌倉時
代には夏の薄衣をトンボの美しい透明な羽にたとえる歌に詠まれており、薄
く繊細なものの表現として登場します。

「今日よりは夏と聞けども名にし負へば 涼しくなりぬ秋津羽の袖」
(『守覚法親王五十首歌』)

(訳:今日から立夏というけれども、トンボの羽と言われる薄衣を身につけ
れば、きっと涼しく感じることでしょう。)

戦国時代になると、敏捷に空中で獲物を捕らえたり、決して後ろには飛ばず
ぐいぐいと前に常に推進するさまが武将たちに好まれ、トンボたちは「勝
虫」として兜の前立てや鎧、矢を入れる箙(えびら)や刀の鍔(つば)、印
籠や衣服の装飾に盛んにあしらわれました。また、岩手県の民話「だんぶり
長者」(だんぶりとは奥州の方言でトンボのこと)には、まじめな百姓の男
が山から飛んできたトンボに導かれて酒の湧き出す泉や黄金を見つけたとい
う話が残っており、農村ではトンボが山の精霊の化身と考えられていたこと
が伺えます。

日本では国の名前になるほど愛されているトンボたちも、欧米では「魔女の
針(witch’s needle)」などと呼ばれ、子どもが嘘をつくとトンボが飛ん
できて唇を縫ってしまうというような俗信があり、気味の悪い虫と考えられ
ているのだそうです。所変われば、ですね。

トンボが一番多いのは実は梅雨の時期だそうですが、「赤とんぼ」に歌われ
るアキアカネたちが交尾のために乱舞するシーズンは秋雨前線の通過するこ
れからで、中には晩秋から初冬まで生き延びるものもいるそうです。空気の
澄んだ秋の1日、トンボに導かれて歩いていると、何かよいことに巡り会え
るかもしれませんよ。


,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

吾妻神社馬だしまつり [千葉県富津市] 9月17日(月)
http://www.piconet.co.jp/nippon-net/nippon.cgi/see/14565

ヤマトタケルノミコトの身代わりとして、走水の海神の怒りを鎮めるために
入水したオトタチバナヒメの遺品が岩瀬の布引きの浜に打ち上げられると、
どこからともなく一頭の馬が現れました。馬は遺品をくわえると、吾妻神社
に上って行きました。この故事に基づいて、「オメシ」と呼ばれる神馬の鞍
に神霊である御幣をつけ、ヒメの遺品漂着地と伝えられている岩瀬海岸まで、
2人の青年が馬の手綱とたてがみを両側から掴み疾走する勇壮な神事です。
神霊を馬の背に移して渡御する神事は、飾り神輿のできる以前の古態と考え
られています。


,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第28号(2011年白露号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。

空気が冷えて草花に露の玉が出来始める頃のはずですが、台風一過のあと
関東地方では玉の汗が流れる日々が戻っています。秋虫に押されがちだった
セミたちも心なしか勢いを取り戻しつつあり賑やかに鳴いています。店頭に
はナシやブドウなど、秋の味覚が並んでいますので、まずはそんなところか
ら秋を楽しんでみたいですね。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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