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JTCOメルマガ『風物使』

2011年07月25日 配信
「夕映えに撫子咲く」~ 季節の使い・JTCO『風物使』大暑号

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  「夕映えに撫子咲く」~ 季節の使い・JTCO『風物使』大暑号
    vol.25 2011年07月25日発行(旧暦 6月25日・水無月)

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拝啓
関東地方では猛暑と寒いくらいの涼しい日が交互に訪れる今日この頃、
皆さまいかがお過ごしでしょうか。涼しげなはがきに暑中見舞いをし
たためて、しばらくご無沙汰しているあの人にご挨拶してみませんか。


+‥‥+ 2011年大暑号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ…… 【草花】清らかで勇敢な花:『ナデシコ(撫子)』
 ・季節の行事 ……………… 貴船祭り(神奈川県)
 ・編集後記


,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…

【草花】清らかで、勇敢な花:『ナデシコ(撫子)』

「石竹(セキチク)が花見るごとに娘子らが 笑まひのにほひ思ほゆるか
も」(大伴家持『万葉集』巻18-4114)

(訳:ナデシコの花を見るたびに、あの子達の笑顔の美しさを思い出しま
す。)

先週一週間の日本列島は、アジア初のサッカーワールドカップをもたらした
「なでしこジャパン」の話題でもちきりでしたね。彼女たちのピッチでの凛
とした戦いぶり、チームメイトや対戦相手を思いやる優しさ、浮ついたとこ
ろのない笑顔など、どれを取っても世界中の人々の心を捉えるに余りあるも
のでした。

ピッチで見事に花開いたなでしこジャパンと時を同じくして、ナデシコの花
たちも7月~9月にかけて花期を迎えます。「大和撫子」とは、たおやかで芯
の強い日本女性の美称ですが、華やかではないけれども、細かく分かれたピ
ンクの花弁が楚々として愛らしく、それでいて丈夫でしっかりとしたナデシ
コの花姿とぴったりと重なります。万葉の時代から、愛する女性を思い起こ
させる可憐な花として、ことのほか日本人に愛されてきた花だというのもう
なずけますね。平安時代には「撫子合わせ」という物合わせ・歌合せの遊び
に利用され、鎌倉・室町時代には生け花として部屋を飾り、江戸時代には多
くの品種が作られました。

ナデシコは日本や朝鮮半島、中国が原産地で、日本で自生するカワラナデシ
コなどの品種はヤマトナデシコとも呼ばれます。冒頭の歌の「石竹」とは、
中国からもたらされたカラ(唐)ナデシコの別名です。古くは夏から秋にか
けての長い期間咲くことから「常夏(トコナツ)」と呼ばれ、源氏物語では
光源氏のかつての恋人であった夕顔の娘、玉鬘と光源氏が出会う第26帖の帖
名になっています。

「なでしこのとこなつかしき 色を見ば もとの垣根を 人や尋ねん」

(訳:ナデシコの花のように美しいあなたを見たら、お父様(源氏のライバ
ルである内大臣)も亡きお母様(夕顔)の行方をお尋ねになるでしょう
ね。)

常夏の帖では、この歌に先立って暑い夏の夕映えに庭に植えられたカラナデ
シコとヤマトナデシコが咲き乱れる様子が描写されています。玉鬘は恵まれ
ない境遇で育ったにもかかわらず、たおやかで美しく考え方のしっかりとし
た女性として描かれており、平安時代にはすでにナデシコがしなやかで美し
い日本女性の象徴であったことが伺えます。

ナデシコの花言葉には、女性的な「純愛」「無邪気」「貞節」のほかに、意
外なことに「大胆」「勇敢」「快活」などもあります。花言葉の起源はオス
マントルコ時代の17世紀のイスタンブール(当時はコンスタンチノーブル)
で、花から受けるイメージを花に託して相手に想いを伝える「セラム」とい
う習慣なのだそうです。たとえば「純粋なあなたを愛している」と伝えたけ
れば、「純粋」「愛」という花言葉を持つ花を組み合わせて贈り、相手も花
の組み合わせでそれに応えるという具合でした。花言葉の内容は、スイセン
が「うぬぼれ(自分の姿に見とれてスイセンになってしまったナルキッソス
の話より)」など、ギリシャ神話の影響を強く受けており、ヨーロッパに紹
介されて19世紀に大流行した後、世界中に知られるようになりました。古代
の日本でナデシコがただかわいいだけではなく、芯の強い女性を象徴する花
であったように、地中海世界の人々も、ナデシコの花に秘めた強さや情熱を
見出したのかもしれません。

可憐で繊細な姿ながら、穏やかな春ではなく酷暑の中に凛と咲くナデシコ。
折れない心で私たちを勇気付けてくれたなでしこジャパンの姿を、この夏ピ
ンクの花に重ねてみたいと思います。



,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

真鶴 貴船祭り(神奈川県足柄下郡真鶴町)7/27~28

今から千年以上前の夏、真鶴岬に突如後光とともに現れた一隻の屋形船に詰
まれた木像12体を貴船神社にお祀りしたことを起源とする祭りです。漁業で
の大漁や、石材採掘や石材回漕業にたずさわる人々の安全を祈願して17世紀
頃に行事として基本形式がつくられました。日本三大船祭の一つで、船を利
用して渡御・還御する華麗で勇壮なお祭りです。

(国指定重要無形民俗文化財)
http://www.town-manazuru.jp/data/kankou/k-mat.htm


,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第25号(2011年大暑号)を最後までお読みくださった
みなさま、誠にありがとうございました。

なでしこジャパンの佐々木監督が、以前海外の関係者に手放しでほめられた
ことに、「なでしこの選手はピッチに出るとき上着をそっとベンチの上に畳
んでおく」というものがあったそうです。日本女性としては、着ていたもの
をそのまま地面に脱ぎ捨てたりしないのはごく普通のことなのですが、こう
いった何気ない振る舞いも海外の人の目には品よく映るのだなあと、そんな
風に躾けられたことにちょっと感謝してしまうのでした。女性だけでなく、
男性も品のよい振る舞いで世界の人々を魅了してしまいましょう!


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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