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JTCOメルマガ『風物使』

2011年06月06日 配信
「菖蒲の香気に雨落ちる」~ 季節の使い・JTCO『風物使』芒種号

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 「菖蒲の香気に雨落ちる」~ 季節の使い・JTCO『風物使』芒種号
    vol.22 2011年06月06日発行(旧暦 5月5日・皐月)

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拝啓
今年は少し早めの入梅となった日本列島ですが、皆さまいかがお過ごし
でしょうか。編集者の都合により、しばらくお休みをいただいてしまい、
申し訳ございませんでした。夏に向けて元気に再開してまいりますので、
なにとぞ変わらぬご愛読のほどお願い申し上げます。


+‥‥+ 2011年芒種号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・季節の祭り…………… もとは女性の節句?:『端午の節句』
 ・旬の味………………… 初夏は香りのよい新物を:『ゴボウ』
 ・季節の花……………… 邪気払いに:『ショウブ(菖蒲)』
 ・編集後記


○o 季 節 の 祭 り ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

もとは女性の節句?:『端午の節句』

「あかねさす紫野(むらさきの)行き標野(しめの)行き 野守は見ずや
 君が袖振る」
(額田王『万葉集』巻1-20)

(訳:茜色がさす御料地で薬草を摘んでいると、袖を振るあなたが見えまし
た。御料地の番人には見られなかったかしら。)

今日は、旧暦の5月5日、端午の節句にあたります。「端午」とは、旧暦の5
月にあたる午(うま)の月の最初の午の日(=端(はし)=始まり)とい
う意味で、のちに「午(ご)=五」に通じ5が重なる日として、3月3日、7月
7日、9月9日と同様に節句としてお祝いするようになりました。

現代、端午の節句といえば青空に泳ぐこいのぼりや武者人形が風物詩ですが、
これらが登場するのは江戸時代に入ってからになります。こいのぼりの原型
は、武家が一族の発展を願って家紋や鍾馗(しょうき=中国の疱瘡除けや学
問の神)を描いた立てた幟(のぼり)で、のちに庶民が登竜門(中国の竜門
という濁流を上ったコイは龍になるという伝説。立身出世を願ったもの)に
ちなんでマゴイを泳がせるようになりました。

端午の節句は、今から2400年も前、中国の楚の国で始まった行事で、当日は
野で薬草を摘んだり、ヨモギで作った人形やショウブを飾ったりして邪気を
祓いました。日本でヨモギやショウブを軒先につるしたり、菖蒲湯につかっ
たりするのはここから来ているのですね。

日本で端午の節句の記録が見られるのは日本書紀で、611年5月5日に「薬猟
りす」の記述があるそうです。ここでの「薬」とはシカの角だったそうで、
これを狩るのはおそらく男性、女性は野に出て薬草を摘みました。有名な冒
頭の相聞歌はまさにこのシーンを切り取ったものだったのですね。

平安時代には、『枕草子』に「節は、五月にしく月はなし。菖蒲、蓬などの
かをりあひたる、いみじうをかし(節句は5月が一番。ショウブやヨモギが
香りあっているのがとても素敵)。」と当時の貴族社会での端午の節句の様
子が記されています。また、『源氏物語』で光源氏が花散里に贈ったような
薬玉(ジャコウや沈香などの香料を入れた袋を、ショウブなどの造花と五色
の糸で飾ったもの)を柱にかけて邪気を祓いました。

古来農村では、田植えに入る女性たちが身を清めるためにショウブやヨモギ
で屋根を葺いた小屋にこもって物忌みをしました。かつて田植えの主役は子
を生む(=豊穣の意)女性たちで、「さ=田の神」に仕える大切な「さおと
め」たちが、じめじめした「さつき(五月)」に病気にならないようにとい
う願いが込められていたとも考えられます。

時代が下って武士の世の中になると、ショウブ(菖蒲)が、尚武(武道・武
勇を大切なものと考えること)に通じ、またショウブの葉の形が刀に似てい
ることから、端午の節句は次第に男の子の節句として定着していったと考え
られています。

かつては五月晴れではなく梅雨空の下で祝った端午の節句。時代とともに意
味は変われど、健康や幸せを願う気持ちは同じです。あなたの家族に男の子
がいてもいなくても、そんな思いをこの節句にかけてみるのもいいかもしれ
ませんね。


○o 旬 の 味  ━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

初夏は香りのよい新物を:『ゴボウ』

食材としては割合地味な存在ですが、炒め物や煮物、揚げ物と和食には欠か
せない食材、ゴボウ。6月から7月にかけては、香りのよい新ものゴボウが出
回る季節です。

ゴボウは西アジアが原産と言われるキク科の植物で、中国から伝えられた食
材ですが、食用とされているのは日本と韓国くらいなもので、中国や西洋で
は薬用として利用されてきました。日本では縄文時代の貝塚からゴボウの種
子が見つかったという話もあります。10世紀ごろに「牛蒡(蒡というゴボウ
に似た草の名、牛は大きいの意)」という名前で中国から再輸入されたよう
で、1146年の『類聚雑要抄』という書物にゴボウが朝廷の献立として供され
た記録があることから、この時代までには日本に食用として定着したと考え
られています。日本では、古くは「キタキス」「ウマフフキ」と呼ばれてい
ました。

ゴボウの栄養素は何と言ってもセルロース、ヘミセルロース、リグニンなど
の食物繊維で、腸の働きを促進させ、有害物質の排泄させるので、大腸ガン
の発生を抑えると考えられています。また、腸内の良質な細菌を育てる糖質
の一種であるイヌリンや、リン、カリウム、マグネシウム、亜鉛、銅などの
ミネラルも含みます。

ゴボウは長く日本人の食生活で親しまれてきましたが、品種は多くはなく、
流通しているものの多くは滝野川といわれる細く長いゴボウです。初夏に
出回る若取りのゴボウは、温暖な宮崎や熊本が原産地です。ゴボウはあまり
味がなくおいしくないと思っている方でも、香りの良い新鮮な新ゴボウでイ
メージが変わるかも?!

▼牛肉とゴボウの柳川風(福岡県)
牛肉とゴボウを甘辛く煮て卵でとじた一品。夏のスタミナメニューにはウナ
ギやアナゴで!
http://www.piconet.co.jp/magazine/recipe/257.html


○o 季 節 の 花 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

邪気払いに:『ショウブ(菖蒲)』

「ほととぎす 待てど来鳴かず あやめぐさ(菖蒲草) 玉に貫く日を
いまだ遠みか」(大伴家持『万葉集』1490)

(訳:ホトトギスの声がまだ聞こえてこない。あやめぐさ(ショウブ)で薬
玉を作る日が、まだ遠いからだろうか。)

新暦の5月5日にはまばらだったショウブも、旧暦の端午の節句の頃にはよく
生い茂るようになります。中国や日本でショウブが邪気を追い払うものとし
て生活の中に取り入れられたのは、刀のようなその形と、爽やかな芳香を持
つためです。

ショウブは日本を含む東アジアに広く分布し、水辺の湿地に自生します。厄
除けとしての利用だけではなく、古くから漢方薬として知られており、根茎
は鎮静、鎮痛、胃腸病の改善に、また薬湯として神経の緊張をほぐし、血行
をよくする働きがあります。このような効能から、心や体の毒を放つという
イメージが作られたのかもしれません。

ショウブが魔除けになるという考えは日本の民話にも表れていて、「食わず
女房」というお話には、鬼と化した女房から逃げた男がショウブの間に身を
潜めていると、女は「ショウブは鬼には毒で、体が溶ける」と言って逃げて
しまったという結末になっています。

冒頭の歌は、初夏になると渡ってくるホトトギスの声を待ちわびたものです
が、ホトトギスが日本に渡ってくるのが5月中旬ごろということですから、
ちょうどショウブで厄除けの薬玉を作る時期には、その啼く声がよく聞かれ
たのでしょう。近くの水辺にショウブが生い茂っているのを見つけたら、こ
れからの季節を健康に乗り切れるよう、お風呂に浮かべてその香りを楽しん
でみたいものです。


○o 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第22号(2011年芒種号)を最後までお読みくださった
みなさま、誠にありがとうございました。

去年、4月の終わりに大分出身の友人の結婚式に出席するため初めて九州に
行きました。そのとき、こいのぼりと一緒に大きな家紋入りの幟がはためい
ているのを初めて見ました。九州ではおそらく、このスタイルが一般的なの
だと思いますが、中部・関東ではあまり見ないものだったので新鮮でした。
おそらく、江戸時代からの伝統を色濃く残しているのでしょうね。

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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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