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JTCOメルマガ『風物使』

2011年04月25日 配信
「躑躅色が道彩る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』穀雨号

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 「躑躅色が道彩る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』穀雨号
   vol.21 2011年04月25日発行(旧暦 3月23日・弥生)

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拝啓
穀雨と呼ぶにふさわしい、雨がちな日々も多い今日この頃、皆さまいか
がお過ごしでしょうか。関東地方では街路樹が早くも青々とした葉をた
くわえ、初夏の準備です。自然から力を分けてもらいましょう。


+‥‥+ 2011年穀雨号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・季節の祭り…………… リレーで広まった?:『お鍬祭り』
 ・旬の味………………… 麻疹も治す?:『タケノコ(筍)』
 ・季節の花……………… 道を彩る繁栄のシンボル:『ツツジ(躑躅)』
 ・JTCOからのお知らせ… 姫革細工商品ラインナップ近日追加!
 ・編集後記


○o 季 節 の 祭 り ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

リレーで広まった?:『お鍬祭り』

田植え時期を知らせるサクラの季節も終わり、今年も米の作付けが始まる頃
になりました。このころに行われるちょっと不思議なお祭りに、「お鍬
(くわ)祭り」というものがあります。

このお祭りは、三重県から愛知県、富山県や長野県などの中部地方一帯の農
村で行われます。時期は地域によって早いところで3月始めから5月下旬にわ
たり、内容も「お鍬さま」と呼ばれるクワの形をしたご神体を御輿に載せて
送り迎えする行事を中心に、バラエティに富んでいます。もともとは、豊受
大神宮(伊勢神宮外宮)に祀られている豊受大神(トヨウケビメ)の信仰普
及のために始まったと言われています。

豊受大神は、伊勢神宮の祭神である天照大神に供する食物(「御饌(ミケ)
」)を調達する役割を果たす女神で、ここから五穀をつかさどる神となりま
した。

このお祭りのはっきりとした由来はわからないのですが、ある言い伝えでは、
60年に一度、伊勢神宮の榊(さかき・神事に用いられる木)の枝がクワの形
に生えるので、伊勢神宮のお札を配る役目の神職が、これを村々に配って歩
いた。これを受けた村々は、総出で賑やかな祭りを行ったということです。

また、江戸時代の上中関(長野県)の春日社の神官がこの祭りの伝来につい
て興味深い記述を残しています。それによると、お鍬さま(クワ型のご神
体)は伊勢を出発し、三河の国(愛知県)を通って村から村へ引き継がれて
きた。村ごとに一晩ずつお祀りをして、新しく木鍬や飾り物、「大一五穀成
就」「大一天下泰平」などと書かれた旗をこしらえ、村人たちがそれらを担
いでわいわい言いながら街道を練り歩く。行き先は決まっていないが、次の
村が迎えに参り、関所の役人が騒ぎを聞きつけて解散を命じるまで、次第に
担ぎ物や旗が増えて行列は膨らむ一方だった、とのことです。

誰に命じられるでもなく、村から村へ伝わったこのお祭りは、当時の人々の
信心深さと、村々の間の連帯感を示しているようですね。

現在では、このお祭りは地域によって60年に一度だけ行われるところと、数
年ごと、もしくは毎年行われるところなどさまざまです。60年という昔の人
の一生よりも長い間隔にも関わらず、人々は時期が来るとそろそろ神職が榊
の枝を配りに来る頃だと担ぎ物を用意して待っていたそうですから、神事を
伝える人々の信心の強さには驚くべきものがあります。

今年の豊かな実りと天下泰平を願って、あなたも「お鍬さま」をお迎えに行
ってみてはいかがでしょうか。

▼日吉の御鍬祭り(長野県阿南町)4/29
昔、お鍬さまが関所を通れず、ここに安置されたと伝えられています。
http://www.piconet.co.jp/nippon-net/nippon.cgi/see/15012



○o 旬 の 味  ━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

麻疹も治す?:『タケノコ(筍)』

やわらかな食感が炊き込みご飯や煮物などにうれしい春のタケノコ。今では
水煮が年中入手できますが、本来の旬は3月~6月で、今はまさにタケノコ
シーズン真っ只中です。

タケノコの記述は『古事記』にも見られ、古くから日本人の食卓を彩ってい
たことがわかります。タケノコの種類は70種にも及びますが、現在多く食さ
れているのは中国原産のモウソウチク(孟宗竹)で、肉質が厚くやわらかく、
甘味があるのが特徴です。この種は1736年、薩摩藩主島津吉貴によって琉球
経由で導入されたのが最初で、全国に広まりました。

タケノコは、食物繊維が豊富で大腸がんの発生やコレステロールの吸収を抑
え、カリウムの働きで高血圧を防ぐ効果があります。利尿作用があるので、
老廃物の排出を促し血液をきれいにしてくれます。また、若さを保つといわ
れるビタミンEや、亜鉛や銅などのミネラルも含んでいます。カロリーも低
いので、ダイエット食品としても優秀ですね。

民間療法では、麻疹(はしか)が内攻して熱やせきが続くときに、タケノコ
の煮汁を1~2回飲ませると、麻疹が出て順調に良くなるとされています。

「孟宗竹」という名前は、昔、中国の呉の国の大臣であった孟宗が、病気の
母に頼まれたタケノコを雪の中を歩き回って探し出し、母に食べさせて病を
治したという故事に基づいています。もしかすると、孟宗のお母さんは麻疹
だったのかもしれませんね。

幅広い料理で楽しめ、体の調子も整えてくれるタケノコ。ちょっと手間ひま
はかかりますが、新物のタケノコで春の味覚を楽しんでみたいものです。


○o 季 節 の 花 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

道を彩る繁栄のシンボル:『ツツジ(躑躅)』

「水伝う磯の浦みの岩つつじ 茂(も)く咲く道をまたも見むかも」
(日並皇子宮舎人(ひなしみのみこのみやのとねり)『万葉集』巻2-185)

(訳:岩を伝い落ちる水のほとりに、ツツジが咲き誇る道がある。この道を
また見ることがあるのだろうか。)

サクラが終わると、歩道を縁取るツツジがいっせいに咲き始め、赤やピンク、
白の花がびっしりと葉が見えなくなるくらいに木を埋め尽くします。今年も
気の早いツツジがそんな姿を見せてくれる頃になりました。

ツツジは漢字で「躑躅」と書き、音読みでは「てきちょく」と読みます。
躑躅(てきちょく)とは、「あがく、後ずさりする」または「行っては止ま
る」という意味があり、前者は毒性のあるレンゲツツジを食べた羊が後ずさ
りして倒れてしまったから、後者はツツジの美しさについ足を止めて見とれ
てしまうから、という解釈です。どちらにも説得力がありますね。

ツツジはツバキなどとともに、繁栄や豊穣を表すとされる花です。葉も多い
尽くすほどの花の勢いを見ると、豊かさを表現するにはぴったりですね。

冒頭の歌は、早世した天武天皇と持統天皇の皇子、草壁皇子(くさかべのみ
こ)の一周忌に、仕えていた舎人たちが彼を偲んで詠んだ歌の一つです。明
日香村にあったと伝えられる皇子の屋敷には素晴らしい庭園があり、四季
折々の花々を前に賑やかな宴が開かれていたそうです。力強く咲き誇るツツ
ジの花たちを前に、若くして世を去った皇子の命がよりはかなく思われたこ
とでしょう。

散ったサクラを惜しむ間もなく、世の中はすでにツツジやフジの花で彩られ
ています。ものごとの終わりは無ではなく、始まりを迎えるためにあるのだ
と、花々が教えてくれているように感じます。


○o JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

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チや便利なキーケースが追加されます。お楽しみに!

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○o 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第21号(2011年穀雨号)を最後までお読みくださった
みなさま、誠にありがとうございました。

ツツジが咲く頃になると、子どもの頃、近所のお姉さんに教えられて団地の
植え込みのツツジの花を取り蜜を吸っていたのを思い出します。今回のメル
マガを書いていて、毒のある種もあるのだと知りぞっとしましたが、それは
それときちんと知りつつ、こんなおおらかな楽しみをいつまでも子どもたち
に味わって欲しいと思いました。

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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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