JTCOメルマガ『風物使』
2011年04月04日 配信「桜色が咲き競う」~ 季節の使い・JTCO『風物使』春分・清明号
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「桜色が咲き競う」~ 季節の使い・JTCO『風物使』春分・清明号
vol.19&20合併号 2011年04月04日発行(旧暦 3月2日・弥生)
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このメルマガは、NPO法人日本伝統文化振興機構(JTCO)のメールマガ
ジンにお申し込みくださった方、もしくは当機構活動にご協力いただ
いている個人/団体/法人様にお送りしています。
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【東日本大震災被災者支援につきまして】
3月11日の震災発生より3週間が経過いたしましたが、被災地および原発周辺
地域の住民の皆さまには引き続き厳しい生活が続いております。
3月分のオンラインショップ『和遊苑』の全利益は、日本赤十字社を通じて
被災者支援に供させていただきます。お客さまにおかれましては、ご理解と
ご支援を賜り誠にありがとうございました。
4月以降も引き続き支援策を検討してまいりますので、なにとぞご理解のほ
どお願い申し上げます。
+‥‥+ 2011年春分・清明号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
・季節の祭り…………… 山の神の化身です:『サクラ(桜)』
・旬の味………………… 塩漬けで香りを楽しむ:『サクラ(桜)』
・季節の花……………… 限られた時間を美しく:『サクラ(桜)』
・JTCOからのお知らせ… 『和遊苑』で姫革細工のお財布2種を追加!
・編集後記
○o 季 節 の 祭 り ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
山の神の化身です:『サクラ(桜)』
「梅の花咲きて散りなば桜花(さくらばな) 継(つ)ぎて咲くべくなりにてあ
らずや」(藥師張氏福子『万葉集』巻5-829)
(訳:梅の花が咲いて散れば、そのあとを埋めるかのように桜が咲いている
ではありませんか。)
昨年からは少し遅れて、関東地方では今年もサクラの花が咲きそろう頃にな
りました。見上げるサクラも例年とは違って見える方も多いと思います。で
も、サクラは今年も忘れることなく季節の移ろいを告げに来てくれました。
サクラという言葉には、「咲く」という動詞に、複数を表す「ら」がついて
生まれたとする説と、「早苗」「早乙女」などのように、「田」を意味する
「さ」と、神が宿る場所という意味の「坐(くら)」が結びついてできたと
する説があります。後者ななかなか興味深い解釈ですが、これには農村での
慣習がもとになっていると考えられます。
『古事記』に登場する「木花之佐久夜毘売(このはなのさくやひめ)」は、
山の神である「大山津見神(おおやまつみのかみ)」の娘で、サクラを象徴
する田の神とされています。秋に山に戻った山神が、春に里に下りてきて田
の神になると信じていたかつての人々は、サクラの花が咲くことを、この姫
神が父の命でイネの穀霊として降りてきたしるしと考えたのです。人々は、
サクラの開花を田植え開始の合図とし、イネの収穫を桜の花で占いました。
皆で酒肴を持って桜の木に集い、できるだけ花が長く美しく咲くことを願っ
て祈ったのです。これが花見の原型とされています。
雪が多く寒かった今年の冬が落ち着くと、姫神さまは私たちのことを忘れず
に降りてきてくださいました。日本の国を、新しく作りましょうと言うかの
ように。
○o 旬 の 味 ━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
塩漬けで香りを楽しむ:『サクラ(桜)』
和菓子やあんパンに利用すると、ほんのりとした春の香りを楽しめるサクラ
の塩漬け。花も葉も塩漬けにして利用されますが、通常よく利用されている
ものは、花と葉で種類が違うようです。
花で多いのは、ソメイヨシノのあとに咲くヤエザクラで、色が濃く発色がよ
いのと、香りが強いためよく利用されます。七部咲きのヤエザクラを軸ごと
摘んで乾かし、塩と酢で漬け込みます。
葉で多いのは伊豆半島や伊豆大島のオオシマザクラで、葉質が柔らかく、香
りがよいのが特徴です。毎年葉を取ったあとに枝や幹を切るので背は低いの
ですが、作業がしやすくなり、切っても数年後にはまた同じように収穫でき
るようになるそうです。
いつ頃から桜の塩漬けが利用されるようになったのかは定かではありません
が、桜餅には面白いいわれがあります。江戸時代、向島の長命寺というお寺
の門番が、サクラの木から降ってくる葉があまりにも多く掃除が大変だった
ので、何かに利用できないかと考えました。試行錯誤の末、名物になったの
が塩漬けにした桜葉でくるんだ桜餅だったということです。
もしこれから咲くサクラの花や葉を利用できる環境にあれば、ちょっぴりい
ただいて自宅で漬けてみるのもよいですね。
▼長命寺・道明寺(桜餅レシピ)
関東の桜餅を長命寺、関西の桜餅を道明寺といいます。
http://www.piconet.co.jp/magazine/recipe/7.html
○o 季 節 の 花 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
限られた時間を美しく:『サクラ(桜)』
「散りぬべき時知りてこそ世の中の 花も花なれ人も人なれ」
(細川ガラシャ)
(訳:世に咲く桜も人も、限られた時間を生きるからこそ美しいのです。)
万葉の時代には花といえばウメだったのが、いつしか日本の象徴となるまで
に愛されるようになったサクラ。短い間に美しく咲き、美しく散るはかなさ
と潔さ、華やかでありながら可憐で繊細な色形など、日本人の美学や感性に
寄り添い、それを表現するのに十分な花です。
奈良時代の人々が愛でたサクラは野生のヤマザクラだといわれており、平安
時代になってから、貴族の邸宅など都市部に移植されて鑑賞されるようにな
りました。サクラは突然変異しやすい特徴があるため、品種改良された園芸
種もたくさん作り出されています。今では日本中に植えられているソメイヨ
シノは、江戸時代末期から明治の初期にかけて江戸の染井村(現在の東京都
豊島区駒込)の植木職人によって作られたもので、元をたどればすべてその
一本のサクラの木になります。
平安末期以降、世の中の主役が貴族から武士に代わると、サクラは武士の
生き方を象徴する花になっていきました。広島県の厳島神社には、源為朝
が奉納したと伝えられる大鎧がありますが、この威(おどし、鎧の部品を
つなぐ紐)には、青い桜の花がちりばめられています。「花(華)と散る」
とは、戦場での死や、殉職を表すことばになりました。
今回の震災で救援・復旧活動に当たられている自衛官や消防士、警察官の階
級章には、階級を表す星の代わりに桜の花があしらわれています。これは、
国民の生命と財産を守るために自分の命を投げ打つという宣誓の象徴です。
迫り来る津波の中で、市民を守るためにこの宣誓を果たした方々もいらっし
ゃいます。
与えられた時間を精一杯生きる。美しく咲き、私たちの願いに反して必ず散
り行くサクラの花は、はかなさだけではない、生きることの意味を伝えよう
としているのかも知れません。
○o JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
オンラインショップ『和遊苑』に、姫革細工のお財布2種を追加!
しなやかな手触りと華やかな模様が好評の姫革細工に、新しい商品を追加し
ました。今回ご紹介するのは、長財布と二つ折り財布の2種類のお財布です。
ポケットがたくさんついて収納力は抜群なのに、軽くてかさばらない姫革の
お財布は、手放せなくなること請け合いです。ぜひ手にとってお試しくださ
い。
▼オンラインショップ『和遊苑』
http://www.piconet.co.jp/jtco/
▼職人さんインタビューはこちら
http://www.jtco.or.jp/tradition_craft/
○o 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
『風物使』第19&20号(2011年春分・啓蟄号)を最後までお読みくださった
みなさま、誠にありがとうございました。
今年もサクラが咲き始める季節になりました。災害を起こすのも、地の恵み
を与えるのも、花を咲かせるのも同じ母なる自然だと思うと、かつての日本
人がそうしてきたように、自然とは対峙するものではなく、人もその一部と
して生きる道を探す必要があるのだろうかと思いました。
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
【季節の使い・JTCO『風物使』】
発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日
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特定非営利活動法人 日本伝統文化振興機構(JTCO)
〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
Webサイト: http://www.jtco.or.jp/
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All rights reserved.
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地域の住民の皆さまには引き続き厳しい生活が続いております。
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被災者支援に供させていただきます。お客さまにおかれましては、ご理解と
ご支援を賜り誠にありがとうございました。
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・季節の祭り…………… 山の神の化身です:『サクラ(桜)』
・旬の味………………… 塩漬けで香りを楽しむ:『サクラ(桜)』
・季節の花……………… 限られた時間を美しく:『サクラ(桜)』
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・編集後記
○o 季 節 の 祭 り ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
山の神の化身です:『サクラ(桜)』
「梅の花咲きて散りなば桜花(さくらばな) 継(つ)ぎて咲くべくなりにてあ
らずや」(藥師張氏福子『万葉集』巻5-829)
(訳:梅の花が咲いて散れば、そのあとを埋めるかのように桜が咲いている
ではありませんか。)
昨年からは少し遅れて、関東地方では今年もサクラの花が咲きそろう頃にな
りました。見上げるサクラも例年とは違って見える方も多いと思います。で
も、サクラは今年も忘れることなく季節の移ろいを告げに来てくれました。
サクラという言葉には、「咲く」という動詞に、複数を表す「ら」がついて
生まれたとする説と、「早苗」「早乙女」などのように、「田」を意味する
「さ」と、神が宿る場所という意味の「坐(くら)」が結びついてできたと
する説があります。後者ななかなか興味深い解釈ですが、これには農村での
慣習がもとになっていると考えられます。
『古事記』に登場する「木花之佐久夜毘売(このはなのさくやひめ)」は、
山の神である「大山津見神(おおやまつみのかみ)」の娘で、サクラを象徴
する田の神とされています。秋に山に戻った山神が、春に里に下りてきて田
の神になると信じていたかつての人々は、サクラの花が咲くことを、この姫
神が父の命でイネの穀霊として降りてきたしるしと考えたのです。人々は、
サクラの開花を田植え開始の合図とし、イネの収穫を桜の花で占いました。
皆で酒肴を持って桜の木に集い、できるだけ花が長く美しく咲くことを願っ
て祈ったのです。これが花見の原型とされています。
雪が多く寒かった今年の冬が落ち着くと、姫神さまは私たちのことを忘れず
に降りてきてくださいました。日本の国を、新しく作りましょうと言うかの
ように。
○o 旬 の 味 ━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
塩漬けで香りを楽しむ:『サクラ(桜)』
和菓子やあんパンに利用すると、ほんのりとした春の香りを楽しめるサクラ
の塩漬け。花も葉も塩漬けにして利用されますが、通常よく利用されている
ものは、花と葉で種類が違うようです。
花で多いのは、ソメイヨシノのあとに咲くヤエザクラで、色が濃く発色がよ
いのと、香りが強いためよく利用されます。七部咲きのヤエザクラを軸ごと
摘んで乾かし、塩と酢で漬け込みます。
葉で多いのは伊豆半島や伊豆大島のオオシマザクラで、葉質が柔らかく、香
りがよいのが特徴です。毎年葉を取ったあとに枝や幹を切るので背は低いの
ですが、作業がしやすくなり、切っても数年後にはまた同じように収穫でき
るようになるそうです。
いつ頃から桜の塩漬けが利用されるようになったのかは定かではありません
が、桜餅には面白いいわれがあります。江戸時代、向島の長命寺というお寺
の門番が、サクラの木から降ってくる葉があまりにも多く掃除が大変だった
ので、何かに利用できないかと考えました。試行錯誤の末、名物になったの
が塩漬けにした桜葉でくるんだ桜餅だったということです。
もしこれから咲くサクラの花や葉を利用できる環境にあれば、ちょっぴりい
ただいて自宅で漬けてみるのもよいですね。
▼長命寺・道明寺(桜餅レシピ)
関東の桜餅を長命寺、関西の桜餅を道明寺といいます。
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限られた時間を美しく:『サクラ(桜)』
「散りぬべき時知りてこそ世の中の 花も花なれ人も人なれ」
(細川ガラシャ)
(訳:世に咲く桜も人も、限られた時間を生きるからこそ美しいのです。)
万葉の時代には花といえばウメだったのが、いつしか日本の象徴となるまで
に愛されるようになったサクラ。短い間に美しく咲き、美しく散るはかなさ
と潔さ、華やかでありながら可憐で繊細な色形など、日本人の美学や感性に
寄り添い、それを表現するのに十分な花です。
奈良時代の人々が愛でたサクラは野生のヤマザクラだといわれており、平安
時代になってから、貴族の邸宅など都市部に移植されて鑑賞されるようにな
りました。サクラは突然変異しやすい特徴があるため、品種改良された園芸
種もたくさん作り出されています。今では日本中に植えられているソメイヨ
シノは、江戸時代末期から明治の初期にかけて江戸の染井村(現在の東京都
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一本のサクラの木になります。
平安末期以降、世の中の主役が貴族から武士に代わると、サクラは武士の
生き方を象徴する花になっていきました。広島県の厳島神社には、源為朝
が奉納したと伝えられる大鎧がありますが、この威(おどし、鎧の部品を
つなぐ紐)には、青い桜の花がちりばめられています。「花(華)と散る」
とは、戦場での死や、殉職を表すことばになりました。
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国民の生命と財産を守るために自分の命を投げ打つという宣誓の象徴です。
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○o 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
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みなさま、誠にありがとうございました。
今年もサクラが咲き始める季節になりました。災害を起こすのも、地の恵み
を与えるのも、花を咲かせるのも同じ母なる自然だと思うと、かつての日本
人がそうしてきたように、自然とは対峙するものではなく、人もその一部と
して生きる道を探す必要があるのだろうかと思いました。
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