JTCOメルマガ『風物使』
2010年11月09日 配信「藤の袴に秋香る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』立冬号
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「藤の袴に秋香る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』立冬号
vol.10 2010年11月09日発行(旧暦 10月4日・神無月)
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このメルマガは、NPO法人日本伝統文化振興機構(JTCO)のメールマガ
ジンにお申し込みくださった方、もしくは当機構活動にご協力いただ
いている個人/団体/法人様にお送りしています。
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拝啓
そろそろ本格的な冬支度が必要と感じる今日この頃、みなさまいかがお過
ごしでしょうか。家では暖房器具がそろそろ出番です。夜は冷え込む日も
多くなりますので、暖かい夜具も忘れずに。
+‥‥+ 2010年立冬号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
・季節の祭り…………… なぜ熊手が縁起物に?:『酉(とり)の市』
・旬の味………………… 縄文時代は一番人気?:『カキ(牡蠣)』
・季節の花……………… 古代の香水:『フジバカマ(藤袴)』
・JTCOからのお知らせ… 女性活弁士を迎え、一周年記念交流会を開催!
・編集後記
○o 季 節 の 祭 り ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
なぜ熊手が縁起物に?:『酉(とり)の市』
今年も、酉の市のニュースが流れる季節になりました。今年は最初の「一の酉」
が11月7日でしたから、すでに出かけて熊手をお求めになった方、またはニュー
スで賑やかな市の様子をご覧になった方もいらっしゃると思います。
酉の市は、11月の酉の日にあたる日に開催され、年によって2回、または3回
行われます。今年は2回で、次の「二の酉」が11月19日になります。「三の
酉」まである年は火事が多いという言い伝えがあり、売り出される熊手には
「火の用心」のシールが貼られます。
酉の市が開かれるのは、関東地方を中心とした鷲神社(おおとりじんじゃ)
です。これは、鷲神社の祀神が11月の酉の日に亡くなり、死後白鳥となって
飛び立ったと言われるヤマトタケルノミコトで、東征の勝利祈願を鷲宮神社
(埼玉県久喜市)、祝勝を大鷲神社(東京都足立区花畑)で行ったことにち
なんでいます。
現代では、酉の市は商売繁盛を願って熊手を買い求めるものになりましたが、
もともとは大鷲神社の近隣の農民による収穫祭がその始まりといわれていま
す。農民たちは秋の収穫や農具を並べ、生きた鶏を奉納して祝い、祭りのあ
と鶏は浅草の浅草寺まで運ばれ、観音堂の前で放たれたといわれます。現代
も酉の市で有名な浅草の鷲神社・長国寺の東側には、江戸時代には新吉原と
いう遊郭が控えており、酉の祭りの日には遊郭内が開放されたとあって、そ
のころからもっとも賑わっていたとのことです。
農村の祭礼であった酉の市が都市部に移っていくにつれ、実用の農具の一つ
である熊手が、福を掻きこむものとして縁起物になっていったと考えられま
すが、この熊手、江戸時代はもっぱら遊女屋や料理屋が買い求めるもので、
正業の商家では敬遠されていたのだそうです。もともと熊手はゴミをかき集
めるための不浄の道具ですが、馬糞を踏むと足が速くなる、蛇の抜け殻はお
金が入るなどの謂われと同じように、醜悪で穢れたものが逆に縁起物と転じ
る民俗の一つとして、興味深いものです。
神社によっては12月の初酉に大酉祭が開かれるところもありますので、今年
も招福の熊手を手に入れるチャンスはまだまだあります。歳収めの福を掴み
に、出かけてみてはいかがでしょうか。
▼浅草・酉の市
酉の市に関する雑学が豊富です。
http://www.torinoichi.jp/
○o 旬 の 味 ━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
縄文時代は一番人気?:『カキ(牡蠣)』
カキは古くから世界中で愛食されてきた貝類の一つで、日本では縄文時代の
貝塚からもっとも多く見つかる貝殻は、アサリでもシジミでもなく、カキな
のだそうです。「古事記」や「延喜式」のような古文書にもたびたびその名
が登場することから、古代からもっとも日本人に食されてきた魚介の一つだ
ったことが伺えます。
「カキ」という呼称は、「掻き落として取る」「殻を欠き砕いて取る」など、
殻を取り除く動作が語源であるという説が妥当と考えられています。漢字の
では「牡蠣」と書きますが、「蠣」一文字でもカキの意となり「牡(オ
ス)」の字が付け加えられたのは、古代中国ではカキは全てオスだと考えら
れていたためです。カキは雌雄同体で、普段はオスばかりなのが繁殖の時期
だけメスが現れて産卵するのです。
カキは美味であるとともに、「海のミルク」と呼ばれるように、鉄、銅、亜
鉛、マンガンなどのミネラルや、グリコーゲン、アミノ酸、カルシウム、タ
ウリンなどを豊富に含む栄養豊かな食品です。カキが含む糖質のほとんどは
効率よくエネルギー消費されるグリコーゲンで、肝機能をよくする働きがあ
り、タウリンは肝臓を守りコレステロールの減少や血圧上昇を防ぐとされて
います。
現代の私たちが食しているもののほとんどは養殖もののカキですが、驚くこ
とに、縄文時代の貝塚の近くから等間隔に打ち込まれたクリの木の杭が発見
され、ここに大量のカキが付着していたそうで、もしかすると縄文人たちも
意図的に、もしくは知らずにカキの養殖を行っていたのかも知れません。本
格的なカキ養殖が始まったのは江戸時代以降で、その後数々の改良が重ねら
れた結果、生産量も飛躍的に増えました。
揚げ物やソテー、鍋物と食材としても万能なカキ。先人の努力に感謝して、
気軽に楽しめるようになったカキを今年の冬もじっくり味わいましょう。
▼牡蠣の土手鍋(広島県)
味噌を土手のように盛ることからこの名がつきました。
http://www.piconet.co.jp/magazine/recipe/91.html
○o 季 節 の 花 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
古代の香水:『フジバカマ(藤袴)』
「なに人か きてぬぎかけし藤袴 くる秋ごと に野べをにほはす」
(藤原敏行『古今集』239)
(訳:いったいどのような人が来て脱ぎ掛けて行ったのでしょうか。藤袴の
花と香りが、来る秋ごとに野を彩っています。)
フジバカマは、秋の七草にも数えられている花で、秋に小さな薄桃~藤色の
花をたくさん咲かせます。花弁が袴(はかま)のような形をしているので、
こう呼ばれます。日本には、もともと自生していたとも、奈良時代に唐から
香料として伝えられたとも言われています。
生花のままでは香りがしませんが、中国語では「香草」と呼ばれるように、
乾燥させると桜餅の葉に似た芳香を放ちます。そのため平安時代の女性は、
乾燥させたフジバカマを香袋に入れて十二単にしのばせたり、葉や茎を水に
浸して髪を洗ったりしたそうです。
お茶としての楽しみ方もありますが、つぼみをつけた花を摘んで乾燥させた
ものは、薬草としても利尿などの効能があり、ほかの薬草と組み合わせて糖
尿病の予防や治療に利用されます。入浴剤として利用すれば、肩こりや神経
痛、皮膚のかゆみなどに効果があります。
かつては日本全国に自生していたフジバカマも、いまは絶滅危惧種に指定さ
れるほど数が少なくなりました。栽培は意外と簡単だそうですので、お庭や
プランターで育てて、その香りや薬効をぜひ利用したいものです。
○o JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
11月27日(土)女性活弁士を迎え、一周年記念交流会を開催!
2009年に東京都の認証を受け設立しました当NPOは、数多くの個人・団体さ
まからのサポートを受け、無事一周年を迎えることができました。
今月一周年を記念しまして、女性活弁士として活躍する麻生子八咫(あそう
・こやた)さんを迎え、伝統文化講演会・交流会を開催いたします。
どなたでも歓迎ですので、ふるってご参加ください!
詳細はこちら:
http://www.jtco.or.jp/news/?act=detail&id=25
○o 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
『風物使』第10号(2010年立冬号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。
先日フランスの友人が来日して、一緒に日本橋の小津和紙さんで手漉き和紙
に挑戦してみました。和紙は冷水で漉くものだそうで、冷たい水に手を浸し
ながらチャプチャプと木枠をゆすって職人気分。職人さんが丁寧に教えてく
ださり、あっという間に漉き上がりました。その後、小津史料館で和紙製品
の説明などもしていただいて、充実した1時間半でした。友人ももちろん大
喜び。これで1人1,000円は絶対お得!おススメです!
小津和紙
http://www.ozuwashi.net/index.php
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【季節の使い・JTCO『風物使』】
発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日
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【発行元】
特定非営利活動法人 日本伝統文化振興機構(JTCO)
〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
Webサイト: http://www.jtco.or.jp/
※本メールは「MSゴシック」などの等幅フォントで最適に表示されます。
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・季節の祭り…………… なぜ熊手が縁起物に?:『酉(とり)の市』
・旬の味………………… 縄文時代は一番人気?:『カキ(牡蠣)』
・季節の花……………… 古代の香水:『フジバカマ(藤袴)』
・JTCOからのお知らせ… 女性活弁士を迎え、一周年記念交流会を開催!
・編集後記
○o 季 節 の 祭 り ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
なぜ熊手が縁起物に?:『酉(とり)の市』
今年も、酉の市のニュースが流れる季節になりました。今年は最初の「一の酉」
が11月7日でしたから、すでに出かけて熊手をお求めになった方、またはニュー
スで賑やかな市の様子をご覧になった方もいらっしゃると思います。
酉の市は、11月の酉の日にあたる日に開催され、年によって2回、または3回
行われます。今年は2回で、次の「二の酉」が11月19日になります。「三の
酉」まである年は火事が多いという言い伝えがあり、売り出される熊手には
「火の用心」のシールが貼られます。
酉の市が開かれるのは、関東地方を中心とした鷲神社(おおとりじんじゃ)
です。これは、鷲神社の祀神が11月の酉の日に亡くなり、死後白鳥となって
飛び立ったと言われるヤマトタケルノミコトで、東征の勝利祈願を鷲宮神社
(埼玉県久喜市)、祝勝を大鷲神社(東京都足立区花畑)で行ったことにち
なんでいます。
現代では、酉の市は商売繁盛を願って熊手を買い求めるものになりましたが、
もともとは大鷲神社の近隣の農民による収穫祭がその始まりといわれていま
す。農民たちは秋の収穫や農具を並べ、生きた鶏を奉納して祝い、祭りのあ
と鶏は浅草の浅草寺まで運ばれ、観音堂の前で放たれたといわれます。現代
も酉の市で有名な浅草の鷲神社・長国寺の東側には、江戸時代には新吉原と
いう遊郭が控えており、酉の祭りの日には遊郭内が開放されたとあって、そ
のころからもっとも賑わっていたとのことです。
農村の祭礼であった酉の市が都市部に移っていくにつれ、実用の農具の一つ
である熊手が、福を掻きこむものとして縁起物になっていったと考えられま
すが、この熊手、江戸時代はもっぱら遊女屋や料理屋が買い求めるもので、
正業の商家では敬遠されていたのだそうです。もともと熊手はゴミをかき集
めるための不浄の道具ですが、馬糞を踏むと足が速くなる、蛇の抜け殻はお
金が入るなどの謂われと同じように、醜悪で穢れたものが逆に縁起物と転じ
る民俗の一つとして、興味深いものです。
神社によっては12月の初酉に大酉祭が開かれるところもありますので、今年
も招福の熊手を手に入れるチャンスはまだまだあります。歳収めの福を掴み
に、出かけてみてはいかがでしょうか。
▼浅草・酉の市
酉の市に関する雑学が豊富です。
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縄文時代は一番人気?:『カキ(牡蠣)』
カキは古くから世界中で愛食されてきた貝類の一つで、日本では縄文時代の
貝塚からもっとも多く見つかる貝殻は、アサリでもシジミでもなく、カキな
のだそうです。「古事記」や「延喜式」のような古文書にもたびたびその名
が登場することから、古代からもっとも日本人に食されてきた魚介の一つだ
ったことが伺えます。
「カキ」という呼称は、「掻き落として取る」「殻を欠き砕いて取る」など、
殻を取り除く動作が語源であるという説が妥当と考えられています。漢字の
では「牡蠣」と書きますが、「蠣」一文字でもカキの意となり「牡(オ
ス)」の字が付け加えられたのは、古代中国ではカキは全てオスだと考えら
れていたためです。カキは雌雄同体で、普段はオスばかりなのが繁殖の時期
だけメスが現れて産卵するのです。
カキは美味であるとともに、「海のミルク」と呼ばれるように、鉄、銅、亜
鉛、マンガンなどのミネラルや、グリコーゲン、アミノ酸、カルシウム、タ
ウリンなどを豊富に含む栄養豊かな食品です。カキが含む糖質のほとんどは
効率よくエネルギー消費されるグリコーゲンで、肝機能をよくする働きがあ
り、タウリンは肝臓を守りコレステロールの減少や血圧上昇を防ぐとされて
います。
現代の私たちが食しているもののほとんどは養殖もののカキですが、驚くこ
とに、縄文時代の貝塚の近くから等間隔に打ち込まれたクリの木の杭が発見
され、ここに大量のカキが付着していたそうで、もしかすると縄文人たちも
意図的に、もしくは知らずにカキの養殖を行っていたのかも知れません。本
格的なカキ養殖が始まったのは江戸時代以降で、その後数々の改良が重ねら
れた結果、生産量も飛躍的に増えました。
揚げ物やソテー、鍋物と食材としても万能なカキ。先人の努力に感謝して、
気軽に楽しめるようになったカキを今年の冬もじっくり味わいましょう。
▼牡蠣の土手鍋(広島県)
味噌を土手のように盛ることからこの名がつきました。
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○o 季 節 の 花 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
古代の香水:『フジバカマ(藤袴)』
「なに人か きてぬぎかけし藤袴 くる秋ごと に野べをにほはす」
(藤原敏行『古今集』239)
(訳:いったいどのような人が来て脱ぎ掛けて行ったのでしょうか。藤袴の
花と香りが、来る秋ごとに野を彩っています。)
フジバカマは、秋の七草にも数えられている花で、秋に小さな薄桃~藤色の
花をたくさん咲かせます。花弁が袴(はかま)のような形をしているので、
こう呼ばれます。日本には、もともと自生していたとも、奈良時代に唐から
香料として伝えられたとも言われています。
生花のままでは香りがしませんが、中国語では「香草」と呼ばれるように、
乾燥させると桜餅の葉に似た芳香を放ちます。そのため平安時代の女性は、
乾燥させたフジバカマを香袋に入れて十二単にしのばせたり、葉や茎を水に
浸して髪を洗ったりしたそうです。
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ものは、薬草としても利尿などの効能があり、ほかの薬草と組み合わせて糖
尿病の予防や治療に利用されます。入浴剤として利用すれば、肩こりや神経
痛、皮膚のかゆみなどに効果があります。
かつては日本全国に自生していたフジバカマも、いまは絶滅危惧種に指定さ
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『風物使』第10号(2010年立冬号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。
先日フランスの友人が来日して、一緒に日本橋の小津和紙さんで手漉き和紙
に挑戦してみました。和紙は冷水で漉くものだそうで、冷たい水に手を浸し
ながらチャプチャプと木枠をゆすって職人気分。職人さんが丁寧に教えてく
ださり、あっという間に漉き上がりました。その後、小津史料館で和紙製品
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小津和紙
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