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JTCOメルマガ『風物使』

2019年07月02日 配信
「秘めた想いをユリが運ぶ」~ 季節の使い・JTCO『風物使』小暑号

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 「秘めた想いをユリが運ぶ」~ 季節の使い・JTCO『風物使』小暑号
    vol.117 2019年7月2日発行(旧暦 5月30日・皐月)

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拝啓
晴れが続いて、もうすぐ夏が来そうな地域もあれば、大雨で水害が起きている
地域もあり、毎年この時期は天候に翻弄されているように思います。

次の日曜日は7月7日。新暦の七夕ですが、予報をみると全国的に雨が降ると
のこと。天の星である織姫と彦星でも、天候はままならないもののようです。

天候によって気温も変化しますから、体調や健康により気をつけて過ごしたい
ものですね。


+‥‥+ 2019年小暑号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ………    【草花】秘めた想いを託して:ユリ
 ・季節の行事 ………・    【博多祇園山笠】[福岡市]
 ・和遊苑 おすすめの一品 【特注・おまとめ】あなただけの一品を!
 ・JTCOからのお知らせ    *イタリアの人気アジア文化ベントに協力!*
 ・編集後記



,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥

【草花】秘めた想いを託して:ユリ

「筑波嶺(つくばね)の さ百合(さゆる)の花の 夜床(ゆとこ)にも
愛(かな)しけ妹(いも)ぞ 昼も愛(かな)しけ」
(大舎人部千文(おおとねりべのちふみ)『万葉集』巻20-4369)

(訳:筑波山に咲く小百合のような、夜床の妻が恋しい。昼も恋しい。)

初夏から夏にかけては、古くから日本に自生するユリが咲く季節です。清楚さ
と華やかさを併せ持つその姿は、日本では「立てば芍薬座れば牡丹 歩く姿は
百合の花」と、美人の歩く姿に例えられ、西洋でも古くから純潔と母性の象徴
とされてきました。

日本語の「ユリ」という呼び名は、「揺り」、つまり百合の花が風にゆらゆら
と揺れる姿から、また「百合」という漢字は、たくさんの燐片が重なるユリ根
の形状から来ていると言われています。

日本で自生するユリの種類は地方によって異なり、冒頭の歌のユリは「筑波山
」とあることから、関東地方の山に多い、背が高く大輪の白い花を咲かせるヤ
マユリではないかと考えられています。同じく万葉集に、ヤマユリを詠ったの
ではないかとも言われるこんな歌が収められています。

「道の辺の草深百合(くさふかゆり)の花笑みに
 笑みしがからに妻と言ふべしや」
(作者不詳『万葉集』巻7-1257)

(訳:道端の草深い茂みに咲くユリのように、私があなたに微笑みかけたから
と言って、妻になるとは思わないでください。)

夏の草いきれの中に、すらりと佇む芳しい大輪のユリが咲いていたら、確かに
涼やかに微笑む美人に見つめられているような気分になるのかもしれません。
読み手が男性であれば、「微笑んでくれたあなたが、私の妻になってくれると
思ってよいのだろうか」という意味になります。女性の歌だったとしたら、男
性には酷な内容ですが、いずれでもユリの気高さをよく表している歌ですね。

京都など関西地方で多く見られるユリは、背丈が低く花も小ぶりで可憐な雰囲
気の、ピンク色のササユリや緋色のヒメユリです。毎年6月中旬に、奈良の率
川(いさがわ)神社で行われる「三枝祭(さいくさのまつり)」では、ピンク
の装束に身を包んだ巫女たちが、ササユリを手に舞を奉納します。この祭祀は、
御祭神である媛蹈鞴五十鈴媛命(ひめたたらいすずひめのみこと、初代神武天
皇の皇后)が、ササユリの咲き誇る三輪山の麓、狭井川のほとりにお住まいに
なっていたという伝承にちなむものです。神代から、ユリは女性の象徴と考え
られてきたことがわかります。

またユリは、秘めた想いを託して、多くの恋歌に詠われてきました。

「燈火(ともしび)の光に見ゆるさ百合花(ゆりばな) ゆりも逢はむと
 思ひそめてき」
(内蔵伊美吉繩麻呂(くらのいみきつなまろ)『万葉集』巻18-4087)

(訳:灯のようなユリの花を見て、いつの日かまたあなたにお会いしたいと、
そう思い初めてしまいました。)
※「ゆりも逢はむと」の「ゆり」は、古語で「後ほど」という意味。

この歌のユリは、緋色のヒメユリを詠ったものでしょうか。ユリの花をゆらゆ
らと燃える灯になぞらえ、秘かに相手を想い染める気持ちが込められた、静寂
の中にも情熱を感じる歌です。

冒頭の妻を想う歌の次には、同じ作者の、こんな歌が収められています。

「霰(あられ)降り鹿島(かしま)の神を祈りつつ
 皇(すめら)御軍(みくさ)に我われは来きにしを」
(大舎人部千文(おおとねりべのちふみ)『万葉集』巻20-4370)

(訳:あられ降る中、鹿島神宮の神に祈りつつ、私は皇軍の列にやってきたの
だ)

千文の二首は、はるばる東国から九州の防人として、難波の港に集められたと
きに詠われたと伝えられています。冒頭の歌は、単なる恋歌ではなく、鹿島の
軍神に武運を祈りながらも、生きて戻れるかもわからぬ故郷に残した妻を想う
歌でした。千文の生没年は不詳ですが、果たして彼は愛する妻のもとに戻るこ
とができたのでしょうか。

都会では、お花屋さんの店先で華やかな姿を見ることの多いユリですが、山野
にひっそりと咲くユリの美しさにはまったく異なる魅力があると思います。こ
の夏、草陰にそんなユリを見つけに山に出かけてみませんか。


【参考サイト】(2019年6月23日参照)

清川 妙(1993)『花笑みのことば』佼成出版社.「和歌歳時記」
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/saijiki/yuri.html

率川神社「三枝祭」
http://isagawa-jinja.jp/omatsuri/saikusa/

ほか


,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………

【博多祇園山笠】[福岡市](7月1日~7月15日)

7月1日から15日まで行われる博多を代表する祭です。
町には飾り山笠がたち、15日早朝に櫛田神社をスタートする追い山でクライ
マックスを迎えます。

700年以上の歴史があり、地域の住人のかたがたが大切に守ってきた伝統的
な町内行事で、国の重要無形民俗文化財に指定されています。


※ぴこねっと日本ねっ島より引用
http://www.piconet.co.jp/nippon-net/nippon.cgi/see/11899
※PCサイトのみ


,:* 和遊苑 おすすめの一品 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥……

【特注・おまとめ】あなただけの一品を!
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,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………

*イタリアの人気アジア文化ベントに協力!*

”フェスティバル・デル・オリエンテ”

この度JTCOにイタリアから参加協力依頼があり、お手伝いをさせていただ
くこととなりました!
まずは9月にナポリで行われるイベントに向け、活動中です。

主に日本の伝統工芸品に関する部分でサポートさせていただく予定ですが、工
芸品の美しさや工芸士の方の技術の素晴らしさだけではなく、その背景にある
文化や思いも積極的にPRし、多くの方に興味を持っていただけるよう、今後
の発展に繋がる活動にしていければと思います。

【参考サイト】
フェスティバル・デル・オリエンテ 公式サイト(イタリア語)
http://festivaldelloriente.it/



,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………


諸事情により、風物使の配信をしばらくお休みしておりましたが、今月より再
開したく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

現在、JTCOはイタリアでのイベント参加に向け準備中ですが、常々思うのは、
海外の方の日本への関心に対し、日本人が十分に応えられていないということ
です。

2016年の米国企業の調査で、日本と東京は世界で最もクリエイティブな国とい
う結果が出ています。「クリエイティブ」という言葉には、「創造性」だけで
なく、「独創性」「先進性」などさまざまな意味が含まれていると思います。

社会が高齢化し、人々が保守化していくなか、日本がこれからどれだけその位
置に留まることができるのか心配ではありますが、過去の資産を惜しみなく未
来に投資し、積極的に世界の人々を楽しませることのできる日本人でありたい
とそう願っています。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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【発行元】

特定非営利活動法人 日本伝統文化振興機構(JTCO)
〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
Webサイト: http://www.jtco.or.jp/

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