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JTCOメルマガ『風物使』

2010年09月21日 配信
「空高く秋花咲く」~ 季節の使い・JTCO『風物使』秋分号

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  「空高く秋花咲く」~ 季節の使い・JTCO『風物使』秋分号
      vol.7 2010年9月21日発行(旧暦 8月14日・葉月)

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拝啓
雨のあとの湿気や陽射しにまだ夏の名残は感じるものの、爽やかで過ごしや
すい日が多くなった今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
一度涼しくなり始めると、秋の深まりは案外早いかもしれません。遅ればせ
ながら秋服の準備をして、気温の変化に対応できるようにしておきましょう。


+‥‥+ 2010年秋分号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・季節の祭り…………… 季節の変わり目:『お彼岸』
 ・旬の味………………… 日本の味には欠かせない:『カツオ(鰹)』
 ・季節の花……………… 猛毒!でも食用に:『ヒガンバナ(彼岸花)』
 ・編集後記


○o 季 節 の 祭 り ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……


季節の変わり目:『お彼岸』

長かった猛暑が和らいだ今日この頃、「暑さ寒さも彼岸まで」とは、本当に
よく言ったものだと思いますね。

「彼岸(=向こうの岸)」とは、サンスクリット語の「悟りの世界」=「波
羅蜜多(パーラミター)」の漢語訳である「到彼岸(とうひがん)」の略で、
「煩悩に満ちた世界」=「此岸(しがん)(=こちらの岸)」に対比する語
です。

彼岸の習慣は日本独特のもので、一説には「日願」が彼岸の語源であるとも
言われています。春分と秋分は昼夜の長さが同じになり、太陽が真西に沈む、
日本古来の太陽信仰上重要な節目です。仏教では、極楽浄土は西方にあると
されているため、春分と秋分の日に沈む太陽が示す道(=「白道(びゃくど
う)」)に沿って進めば、必ず極楽浄土にたどり着けるという信仰が、彼岸
の起こりであるという説もあります。

近年まで、地方によってはお彼岸に日の出と日の入りを拝み、お天道さんを
祀ったり、「コンニチサンムカエ」といって、彼岸の日の朝、弁当を持って
日の出る東に歩いて行き、夕方日の入る西から帰ってくるという風習があっ
たそうです。

また、春分が種苗の植え付け、秋分の時期が作物の収穫の時期にあたること
から、彼岸には農耕の観点から祖先に豊作を祈り、収穫を感謝するという意
味も含まれているようです。

春分と秋分の日に法会が行われるようになったのは平安時代からですが、現
代のように、先祖の墓参りをし、春分にはぼたもち(=牡丹)、秋分にはお
はぎ(=萩)を食べる習慣が始まったのは江戸時代のようです。あずきの赤
色には、邪気を祓う力があると考えられており、これを先祖へのお供え物と
しました。

深まり始める秋の1日、家族でのんびりとお墓参りをしたり、沈む夕日を眺
めたりしてみるのもいいですね。



○o 旬 の 味  ━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……


日本の味には欠かせない:『カツオ(鰹)』

香りのよい、5~6月の「初ガツオ」に対し、9~10月の「戻りガツオ」は脂
肪が初ガツオの10倍と、まさに脂が乗って美味です。

日本人の食生活の中でカツオの歴史は古く、縄文時代の遺跡からもカツオの
骨が見つかっています。カツオの名の由来は、干すと硬くなることから、
「堅魚(かたうお)」と呼ばれていたのが転じて「カツオ」となったと言わ
れています。もっとも古い記述では、712年の『古事記』に、「堅魚」の表
記が見られます。

8世紀の大宝律令、賦役令により、「堅魚」、「煮堅魚(にかたうお=カツ
オを煮てから干し固めたもの)」、「堅魚煎汁(かたうおいろり=煮汁を煮
詰めた調味料)」といったカツオ製品が、重要貢納品として定められました。
平安時代の『延喜式』には、これらの品を収める国々が指定されます。その
中には、いまでも鰹料理で有名な土佐や、伊豆、駿河などが含まれています。
鎌倉時代の料理書『廚事類記』には干しカツオや、堅魚煎汁を利用した調理
法が記載されています。これらの時代にはすでに、カツオは調味料としても
日本の食生活になくてはならないものとなっていたのです。

カツオを燻乾してカツオブシが作られるようになったのは室町時代に入って
からのことで、1500年ごろの料理書『四条流包丁書』には、削り節と思われ
る「花鰹」の記述が見られるとのことです。魚の燻乾は、東南アジアで古く
から行われているため、これが交易船で伝えられたとも考えられます。

初期のカツオブシは日持ちがしませんでしたが、江戸時代になると燻乾の方
法が改良されたり、水分を吸いだすためのカビ付けが行われるようになり、
現代も続く「本枯節」の製法が確立していきます。

古代から日本の味のベースを形作ってきたカツオ。秋の戻りガツオの旬には、
たたきにして素材そのものの味を楽しんでみましょう。


▼鰹の土佐造り(高知県)
高知名物「かつおのたたき」です。
http://www.piconet.co.jp/magazine/recipe/11.html



○o 季 節 の 花 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……


猛毒!でも食用に:『ヒガンバナ(彼岸花)』

「路の辺(へ)の壱師(いちし)の花のいちしろく 人皆知りぬ我が恋妻
を」(柿本人麻呂『万葉集』巻11-2480)

(人の目にも鮮やかな、道端に咲く壱師の花(=ヒガンバナ)のように、私
の恋しい妻のことも、皆に知られてしまいました。)

真っ赤に沈む夕日をバックに咲く、真紅のヒガンバナ。秋分を象徴する日本
の原風景ですね。

ヒガンバナは中国原産の花で、別名の「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」は、
「天上界に咲く赤い花」という意味で、おめでたいことが起こる兆しに、天
上界から赤い花が降ってくるという法華経中の記述に基づいています。その
他にも地方名が数百もあると言われていますが、「地獄花」「死人花」「幽
霊花」など、非常に縁起の悪い名前が多いのです。これは、球根の部分に猛
毒のリコリンという物質を含み、よく墓地に植えられることや、先祖の霊を
弔うちょうど秋のお彼岸のころに咲くことなどがその理由では考えられてい
ます。

また田んぼの土手でもヒガンバナをよく見るのは、強い根茎で土手やあぜ道
を補強したり、球根の毒性を利用して、ノネズミやモグラなどの害獣避けに
するためと考えられています。恐ろしい毒も使いようですね。

球根は、長時間水にさらせば毒を抜くことができ、でんぷん質を多く含むの
で、かつては飢饉のときの代用食として利用されたことがありました。昔、
植物の研究家であった殿様が、誰も手を出さないヒガンバナの球根をしきり
と蔵にため込んでいたが、日照りや冷害が続いて作物が獲れなくなったある
年に、この殿様の領地の人々はヒガンバナの球根で飢え死にを免れた、とい
う説話が中国地方に残っているそうです。

日本では不吉な呼び名ばかりつけられてしまったかわいそうなヒガンバナで
すが、葉の時期には花がなく、花の時期には葉がないことから、お隣の韓国
では、「葉は花を想い、花は葉を想う」という意味で、「相思華(サンチ
ョ)」と素敵な呼び名がつけられています。

今年は猛暑で秋の花の開花が遅れており、ヒガンバナがお彼岸には間に合わ
ないところもあるようですが、爽やかな風の中に華やかな赤い花を見つけて、
秋の風情を楽しんでみてください。


▼日高市・曼珠沙華の里「巾着田」公式ホームページ(埼玉県)
9月23日以降に見ごろを迎えるそうです。
http://www.kinchakuda.com/



○o 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……


『風物使』第7号(2010年秋分号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。

先日、コスモスの名所で猛暑のため開花が遅れていて、観光に影響が出るた
め「まだ咲いていないのか」という問い合わせが相次いでいる、という記事
を読みました。

筆者は今春これ以上ない見事な京都の桜を堪能したので、それが見られなか
ったときの落胆は容易に想像できますが、こればかりは自然の摂理。つぼみ
や散り始めた花々を楽しむ心の余裕も持てるとよいなと思いました。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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