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JTCOメルマガ『風物使』

2016年11月21日 配信
「晩秋に柊の雪降る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』小雪号

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  「晩秋に柊の雪降る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』小雪号
    vol.102 2016年11月21日発行(旧暦 10月22日・神無月)

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拝啓
ますます寒さが増して、暖かい家の中で過ごす時間が増えたのではないでしょ
うか。先日のスーパームーンは悪天候のため日本列島では観測が難しかったよ
うですが、暖かい服装で時にはゆっくりと秋の夜空を眺めてみるのもいいかも
しれませんね。


+‥‥+ 2016年小雪号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ………   【植物】常緑の守り神:「ヒイラギ」
 ・季節の行事…………   新野の霜月祭り [長野県阿南町]
 ・和遊苑 おすすめの一品 【姫革・白なめし革】ストラップポーチ<イギ
リス・パープル>
 ・JTCOからのお知らせ   【歌舞伎座】12月は、墨流し染&和布小物
 ・編集後記


,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…

【植物】常緑の守り神:「ヒイラギ」

「ふれみぞれ 柊の花の七日市」
(宝井 其角 『其角発句集』)

(解釈: 白い小さなヒイラギの花が、みぞれのように道に降り注ぐ七日市で
あることよ。)

寒気の中に冬の匂いを感じ始めると、街では赤と緑のクリスマスの告知や飾り
付けが目につくようになります。今では、ヒイラギと言えば赤い実をつけたク
リスマス飾りのセイヨウヒイラギのイメージになりますが、日本でも今頃から
師走にかけてたくさんの白い花をつけるヒイラギが、古来より風物詩として暮
らしとともにありました。

日本のヒイラギの葉にもギザギザの棘がついていることから、「刺さるとヒリ
ヒリと痛む」という意の「疼(ひひら)く」から「疼(ひいら)ぎ」という名
がつけられました。今が花期の白い小さな花は、冒頭の俳句のように零(こ
ぼ)れ落ちて、一足早い雪のように道路を白く覆っている光景をしばしば見か
けます。

ヒイラギは、古くから敵を打ち負かし、邪気を払う呪力のある木とされてきま
した。ヒイラギの名の初出は『古事記』で、ヤマトタケルに東征を命じた景行
天皇が、出陣の際に「比比羅木之八尋矛(ヒイラギでできた、八尋(約12~15
メートル※)の矛」を授けたとあります。ヒイラギの幹は硬く、かつしなやか
であることから衝撃にも強く、玄翁(げんのう)と呼ばれる大金槌の柄にも利
用されます。かつては、武具の柄にも使われていたのかもしれません。※1),
3)

※「尋(ひろ)」=長さの単位で、大人が手を広げた間の長さ。5~6尺、150
~180cmほど。

その後、ヤマトタケルが東北への進軍の途上で立ち寄った土地にも、ヒイラギ
にまつわる伝説が残っています。埼玉県の清瀬市には、「清戸」と呼ばれる地
名がありますが、この地域の総鎮主である日枝神社には、かつて大きなヒイラ
ギの木がありました。命はこの木の下でお休みになり、何気なく足元の土を取
って、「清き土なり」と言いました。この言葉が「清土」という地名になり、
のちに「清戸」と書かれるようになったということです。※4)

お正月に家の入口に門松や注連縄を飾るのは今でも続く習慣ですが、松が飾ら
れるようになったのは平安時代後期あたりからのようで、それ以前は、大晦日
の晩に門口の注連縄にヒイラギの枝を挿す習慣がありました。紀貫之の『土佐
日記』には、土佐の大湊で迎えた935年の元旦について下記のくだりがありま
す。

「『けふは都のみぞ思ひやらるる。小家(こへ)の門の端出之縄(しりくべな
は)の鰡(なよし)の頭、ひひらぎらいかにぞ』とぞいひあえなる。」

(訳: 「今日は都の事ばかりが思いやられる。家の門の注連縄に挿したボラ
の頭や、ヒイラギはどのようであろう。」と言い合った。)

節分にヒイラギにイワシの頭を挿して魔除けとする地方は今でもありますね。
これは平安時代の大晦日の行事である鬼やらいが節分に引き継がれたもので、
貫之が生きた時代のお正月の魔除けには、ヒイラギとボラの頭が使われていた
のです。ヒイラギは、マツと同じ賢木(さかき)と呼ばれる常緑樹であるため
縁起がよいとされ、民家の門口や、神社仏閣の参道にも植えられました。※3),
5), 6)

また、ヒイラギが植栽されたのは、縁起がよいからだけではなく、棘のある葉
が民家の泥棒除けや山城での敵の撃退という実用性を持っていたからでした。
一年中艶のある緑の葉を生い茂らせ、泥棒や敵の撃退に役立つヒイラギが、邪
気払いの呪力を持つと考えられた理由も頷けますね。鎌倉時代以降には、武運
を願って多くの武家の家紋にもヒイラギがあしらわれるようになりました。※
3)

ところで、クリスマス飾りのセイヨウヒイラギはモチノキ科でモクセイ科の日
本のヒイラギとは全く別の植物なのですが、真冬でも青々とした葉と真っ赤な
実をつけることから、古代のケルト人やローマ人の間でも魔力を持つ神聖な木
とされていました。のちにキリスト教徒の間でもその考えが採り入れられ、イ
エスを象徴する木としてクリスマス飾りにあしらわれるようになりました。文
化が異なれど、人が似た植物に同じような意味を見出すのは興味深いですね。
※2)

「世の中は数ならずともひいら木の 色にいでゝはいはじとぞ思ふ」
(民部卿(藤原)為家 『夫木和歌抄』 29 ひいら木)

(解釈: 取るに足らない身であっても、どこからか噂は伝え漏れてしまうの
は世の常だが、ヒイラギのようにそれとわかるように言うことはしないでおこ
う。)

モクセイ科である日本のヒイラギの花は、同じ科のキンモクセイほど強くはな
い、芳しい香りを放ちます。普段はわき目も振らずに歩いているあなたも、ど
こからか漂ってくるヒイラギの花の香りに、ふと足を止める晩秋のひと時があ
るとよいですね。


1) Wikipedia, 「 ヒイラギ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AE
2) Wikipedia, 「セイヨウ ヒイラギ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%A4%E3%83%A8%E3%82%A6%E3%
83%92%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AE
3) 八幡町界隈 花の歳時記62, ヒイラギ(柊)
http://miyakanken.co.jp/modules/p04/index.php?content_id=34
4) 清瀬市 ひいらぎ伝説
http://www.city.kiyose.lg.jp/s004/050/020/030/030/hpg000001092.html
5) 門松の歴史
http://kadomatsu-japan.com/history/
6) 紀貫之,『土佐日記』
http://www.manabu-oshieru.com/daigakujuken/kobun/tosa.html



,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

新野の霜月祭り
[長野県阿南町](12月13~14日)

新野地区の守り神、伊豆神社で13日、諏訪神社で14日に、湯たて神楽が古式豊
かに行われます。万物の生命力が衰えるとされる旧暦の11月、全国の神々を招
き神前の大釜に湯を沸かし、神官が笹を束ねた「湯たぶさ」で、社の四方・参
拝者に湯を降り授けます。

神官と舞人が、剣・湯たぶさ・鈴を持ち、笛や太鼓に合わせて釜の回りで「金
山の舞」や「湯たぶさの舞」などを一心不乱に廻舞して舞を奉納します。最後
には参加者全員が釜の湯をいただき、身を清め、無病息災・地域の平安・祈願
成就・万物の再生を祈ります。


※ぴこねっと日本ねっ島より引用
http://www.piconet.co.jp/nippon-net/nippon.cgi/see/15068



,:* 和遊苑 おすすめの一品 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥

【姫革・白なめし革】ストラップポーチ<イギリス・パープル>

長く使うほど愛着がわいてくる物は何年経っても長く使いたい、他の物も同じ
デザインでそろえたいと思うことはありませんか。

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ンと絶妙な色の配分で、長年お使いいただける飽きが来ないデザインです。秋
の静けさにお似合いのパープルの他に、色違いのピンクも大変人気がございま
す。【姫革・白なめし革】でも特に好評のストラップポーチをはじめ、名刺入
れやペンケース等、様々な商品をご用意しております。

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http://wayouen.jp/?pid=70018637


,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

12月の歌舞伎座は、洗練の墨流し染めと、愛すべき和布小物が出店!

本年最後の歌舞伎座の出店は、東京から洗練された都会的な墨流し染めのファ
ッションアイテムと、ほっこりとした雰囲気が愛らしい、和布小物のお店が出
店いたします。

いずれも世界に一つだけ、あなただけのアイテムになります。今年一年頑張っ
たあなたへのご褒美にも、心のこもったクリスマスギフトにもぴったりです。
ぜひ、銀座歌舞伎座地下二階、木挽町広場にお越しくださいませ。

詳しくは、JTCOホームページで↓↓
http://www.jtco.or.jp/news/?act=detail&id=132


,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第102号(2016年小雪号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。

気がつけば、来月は師走。すでに年賀状やお歳暮の準備をされている方もいら
っしゃるでしょう。

かつては、お正月の準備として煤払いを12月13日から始める習慣があり、お歳
暮もこの日から20日くらいまでに届くようにしたものでした。

年末が押し迫ってバタバタしなくて済むように、そろそろ「やることリスト」
を作っておきたいものですね。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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【発行元】

特定非営利活動法人 日本伝統文化振興機構(JTCO)
〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
Webサイト: http://www.jtco.or.jp/

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