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JTCOメルマガ『風物使』

2016年06月13日 配信
「夏の山野に蛇神宿る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』芒種号

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  「夏の山野に蛇神宿る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』芒種号
    vol.93 2016年6月13日発行(旧暦 5月9日・皐月)

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拝啓
関東地方も梅雨入りし、雨の日が続く今日この頃、皆さまいかがお過ごしでし
ょうか。水不足のニュースも聞かれていたので、これでほっと一安心。天の恵
みに感謝して、湿気の多い日も爽やかに過ごす工夫をしたいですね。


+‥‥+ 2016年芒種号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ………   【生物】虫の中の虫?:「マムシ」
 ・季節の行事…………   愛染祭り [大阪府大阪市]
 ・和遊苑 おすすめの一品 【姫革・白なめし革】扇子ケース
 ・JTCOからのお知らせ  
 ・編集後記


,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…

【生物】虫の中の虫?:「マムシ」

「めなもみといふ草あり。くちばみに螫(さ)されたる人、かの草を揉みて付
けぬれば、即ち癒ゆとなん。見知りて置くべし。」
(吉田兼好『徒然草』第96段)

(訳:めなもみという草がある。マムシに咬まれた人は、その草を揉んで擦り
付ければすぐに癒えるという。どんな草なのか、見知っておくべきだ。)

先日、筆者が高尾近くの八王子城址に行った際、防御のための数々の工夫もさ
ることながら、「マムシに注意!」の看板が目に留まりました。ガイドさんの
お話によれば、暖かくなってくると、普段石垣の隙間に身を潜めているマムシ
が日光浴のために外に出てくるのだそうです。

マムシといえば、「蝮の○○」などと、「謀略に長け、目的を果たすためには
血も涙もない人物」の渾名として、歴史小説などにしばしば登場します。一介
の油売りから戦国大名まで上り詰めた、織田信長の正室である濃姫の父、斉藤
道三(さいとう・どうさん)や、「遠山の金さん」のモデルとなった江戸北町
奉行・遠山景元と対立した南町奉行・鳥居耀蔵(とりい・ようぞう)などが有
名ですね。マムシがそんな狡猾な生き物かどうかはさておき、昔から日本人に
とってどのような存在だったのでしょうか。

ヘビは脱皮を繰り返して成長するその生態から、再生と復活の象徴として、世
界中の古代文明で信仰の対象となっています。日本でも、ヘビは同様の思想と
ともに、湿地を好んで棲む生態から水神として、また穀物を荒らすネズミを捕
食することから、穀物神や田の神として、さまざまに崇められてきました※1)。

ヘビに対する信仰は縄文時代からすでに存在しており、神社の注連縄が交尾す
る雌雄のヘビを意味するように、縄文土器の表面に擦り付けられた縄模様自体
も、ヘビを象徴していると考える研究者もいます。縄文中期(紀元前3500年頃
~紀元前2500年頃)の土器には、ヘビの装飾をあしらったものが多く見られま
す。同時代の女性を象った土偶には、頭部にとぐろを巻くヘビを戴いたものが
出土しています。これら縄文土器にあしらわれたヘビの頭部は、マムシの特徴
である三角形のものが多いことから、ヘビの中でもとりわけマムシが神として
崇められていた可能性が指摘されています※2)。

マムシはかつて「はみ」「くちばみ」とも呼ばれていました。「真虫(まむ
し)」という呼称の由来については、昔ヘビが虫の一種と考えられていたこと
から、「はみ」+「虫」=「はみむし」が転じたという説と、日本では近年
までマムシだけが毒蛇であると考えられてきたこともあってか、「虫の中の
虫」という意味で「真虫」になったという説があります。後者については、人
を喰う獰猛なオオカミが「真神(まかみ)」、もしくは「大口真神(おおくち
のまかみ)」と呼ばれて神格化されたことと通じるものがあり、マムシが最初
は畏怖の対象として神とされたという考え方は、大いにあり得ることだと思い
ます。※ 3), 4)

日本には、マムシにまつわる民話が各地に残っていますが、その内容は解毒に
関するものだったり、マムシに咬むのをやめてもらう話だったりと、藪や山に
棲むマムシたちと隣り合わせで生活していた当時の人々の切実な願いが込めら
れています。

例えば、長野市の昌禅寺には、こんなお話が伝わっています。お寺の周りにあ
る池をつぶしてお堂を建てようと考えていた和尚さんの夢に、池に棲む白マム
シが出てきて、奥さんの出産が終わるまで、どうかそれを待って欲しいと懇願
します。マムシの願いを聞き入れた和尚さんには、池の泥とお経でマムシの毒
を消す不思議な力が与えられ、以来マムシに咬まれた人は和尚さんの元を訪ね
るようになったということです※5)。

これからの季節、山野を歩けばマムシに遭遇することもあるかもしれません。
八王子城址のガイドさんによれば、マムシは元来臆病な生き物なので、出会っ
てしまったら刺激をしないようにそっとその場を離れればよいそうです。また、
夏だからといって肌を露出する服装は控えるようにとのことでした。マムシに
してみれば、山野を歩く人間は自分の棲家に踏み込んでくる余所者です。神様
の安息を妨げないよう、御居所にお邪魔させていただくような気持ちで山歩き
を楽しむようにしましょう。


【参考サイト】(2016年6月11日参照)
1) 大平山神社, 蛇と水神のはなし
http://www.ohirasanjinja.rpr.jp/info/detail.php?n=0031
2)邪馬台国大研究, 大阪 縄文の世界像ー八ヶ岳山麓の恵みー展
http://inoues.net/study/8gatake_yayoi.html
3) 語源由来辞典, マムシ
http://gogen-allguide.com/ma/mamushi.html
4) Wikipedia, 真神
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E7%A5%9E
5) 湯谷小学校ホームページ, 昌禅寺の白マムシ
http://www.nagano-ngn.ed.jp/yuyajs/tiiki_minwa.html



,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

愛染祭り
[大阪府大阪市](6月30~7月2日)

聖徳太子が施薬院として開いたと伝えられる勝鬘院。大阪の三大夏まつりのひ
とつでもある、愛敬・人気・縁結びの神さま、愛染さん(勝鬘院)のお祭りが
開催されます。

お祭りの一大イベントである宝恵かごパレードは、江戸時代の年号、宝永に由
来し、その宝永年間に芸妓(芸者さん)が駕籠(カゴ)に乗って愛染祭にお参
りに来ていたところを再現しています。「愛染さんじゃ~!ホ・エ・カッ・ゴ
~(GO!)」の掛け声とともに愛染堂までの谷町筋を練り歩きます。

通常は年末年始にしか見られないご本尊の愛染明王がお祭り期間中に見られ、
また6月30日には、全国の神社でも行われる夏越しの祓えも開催され、多くの
方々にご参拝いただけます。

※愛染堂勝鬘院 公式サイトより引用
http://aizendo.com/festival.htm



,:* 和遊苑 おすすめの一品 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥

【姫革・白なめし革】扇子ケース

http://wayouen.jp/?mode=cate&cbid=1488756&csid=0

ついに今年も暑い季節がやってまいりました。本格的な真夏に備え、外出時に
扇子をお持ちになる方も見られるようになりました。これから出番が多くなる
扇子をしっかり守る扇子ケースはいかがでしょうか。

華やかなデザインとしなやかな手触りで大人気の【姫革・白なめし革】。
扇子ケースは革製品ならではの丈夫なつくりで、大切な扇子を汚れや傷みから
しっかりと守ります。

また、厚めの高級扇子にぴったりの、大きめのサイズの扇子ケースもございま
す。こちらは差し込み式の蓋付きで、携帯時もさらに安心。

今年の夏は、お気に入りの扇子とご一緒に暑い毎日を乗り越えてみませんか。
きっと暑い夏の日をさわやかな気分にさせてくれることでしょう。


詳しくはオンラインショップで↓↓
http://wayouen.jp/



,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

銀座歌舞伎座・6月後半は熊野筆が出店します!

6月1日よりオープンした、紀州塗りの出店も残すところあと2日。安心の日本
製ガラスに漆や金箔、サンドブラスト技術で美しい柄をあしらった新感覚の塗
り物は、おかげさまでご好評をいただいております。

梅雨の時期でも雨に濡れることなくお越しいただける、地下鉄東銀座駅から直
結の木挽町広場でお待ちしております。

6月16日からは、広島県の熊野筆が出店します。世界的によく知られた品質の
化粧筆など、選りすぐりのお品を手に取ってお選びいただけます。ぜひご期待
ください!


,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第93号(2016年芒種号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。

今回のテーマ、マムシは、現代でも咬まれた際に処置が遅ければ命に関わる毒
蛇であるだけに、昔の人のマムシに対する恐怖はいかばかりだったかと思いま
す。兼好法師の『徒然草』には、マムシに咬まれたら「メナモミ」という植物
を擦り付ければ良いとありますが、効果のほどはいかばかりなのでしょう。

最近ではタケノコ掘りでクマに襲われる事件が発生していますが、山野は人間
だけのものではないということを心に留め、入る際には十分な注意と覚悟をす
る必要があると思う次第です。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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【発行元】

特定非営利活動法人 日本伝統文化振興機構(JTCO)
〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
Webサイト: http://www.jtco.or.jp/

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