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JTCOメルマガ『風物使』

2010年08月18日 配信
「通り雨が涼運ぶ」~ 季節の使い・JTCO『風物使』処暑号

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  「夕立に涼さがす」~ 季節の使い・JTCO『風物使』処暑号
    vol.5 2010年8月18日発行 (旧暦 7月9日・文月)

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拝啓
台風到来シーズンとなり、そろそろ晩夏の訪れも感じ始める今日この頃、
皆さまいかがお過ごしでしょうか。
JTCO事務所のある東京地方では、今年は少しセミの鳴き始めが遅く、数も
少ないような気がしています。暑くなるのが遅かったので、力を温存して
いるセミもいるのかもしれませんね。秋虫の音が聞こえるころまで、存分
にがんばってもらいたいものです。


+‥‥+ 2010年処暑号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・季節の祭り…………… 満月だけがお月見じゃない:『二十六夜待ち』
 ・旬の味………………… 熨斗(のし)に隠れてます:『アワビ(鮑)』
 ・季節の花……………… 強い風味とはうらはらに:『ニラ(韮)』
 ・JTCOからのお知らせ… 『伝統工芸館』新規登録増えています!
 ・編集後記


○o 季 節 の 祭 り ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………


満月だけがお月見じゃない:『二十六夜待ち』

9月の声が聞こえてくると、なんとなくススキとお月さまの絵が浮かんでくる
のは、十五夜のお月見がよく知られているからですね。現代ではお月見と言
えば旧暦8月15日の「中秋の名月」だけになっていますが、かつての日本人は、
日々形を変える月にさまざまな名前をつけて観月を愉しんでいたのです。

十五夜の満月のあと、月の出はだんだん遅くなり、これを鑑賞することを「月
待ち」といいます。十六夜は「いざよい」と読み、「ためらう」の意で、月の
出が遅くためらうように出てくることを表します。以後、十七夜~二十夜を、
それぞれ「立待月(=立って待つ月)」「居待月(=座して待つ月)」「寝待
月(=寝て待つ月)」「更待(=更に夜が更けるのを待って出る月)」と呼び
ます。昔の人が、毎日夜空を見上げて月の出を待ちわびている様子が目に浮か
びますね。

花のお江戸の観月といえば、「中秋の名月」と「後の月(旧暦9月13日)」、
そして「二十六夜待ち(旧暦7月26日)」でした。あとの2つが満月に近い明る
い月であるのに対し、「二十六夜待ち」の月は、夜半過ぎに昇る細くかすかな
逆三日月です。十五夜お月さまに映るウサギの餅つきの代わりに、この夜は阿
弥陀・観音・勢至の三尊の姿が月の出直後にぽっと浮かび上がるといわれ、江
戸っ子たちは仏さまを拝むことを口実に、高台や海岸の料理屋で夜更けまで飲
めや歌えの大騒ぎだったそうです。

「二十六夜待ち」の月を拝むと願いが叶うとされ、この日には江戸だけではな
く全国の集落で見晴らしのよい東側の堤防などに人が集まり、にぎやかに月待
ちが行われていたようです。

2010年の「二十六夜待ち」は、9月4日です。土曜日の夜なので、晴れていれば
家族や仲間とにぎやかに夜更かしして、仏さまのご光臨を拝むことができたら、
今年の残りの願いも叶うかも知れませんよ。


▼江戸食文化紀行―江戸の美味探訪―
二十六夜待(にじゅうろくやまち)の料理
(歌舞伎座メールマガジン バックナンバーより)

にぎやかなお江戸の二十六夜待ちの様子が垣間見れます。
http://www.kabuki-za.com/syoku/2/no89.html



○o 旬 の 味  ━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………


熨斗(のし)に隠れてます:『アワビ(鮑)』

我が家(へん)は 帷帳(とばりちやう)も 垂れたるを
大王(おほぎみ)来ませ 婿にせむ 御肴に 何よけむ
鮑栄螺(あわびさだえ)か 石陰子(かせ)よけむ
鮑栄螺か 石陰子よけむ
(『催馬楽(さいばら)』「我家」)

(我が家では、寝室の帳(とばり)も下ろしております。若君さま、どうぞ
婿にいらしてください。祝宴の肴は何にいたしましょう。アワビ・サザエに
しましょうか。それともウニにしましょうか。)

美味な上に、栄養価にも優れたアワビは、古代から大切な客人をもてなす饗
宴の肴として珍重されてきました。秦の始皇帝は、アワビを不老不死の仙薬
として徐福という男を日本に遣わせたという伝説があり、中国には長寿を願
って「鮑(バオ)」という姓があるとのことです。

アワビはグルタミン酸やアデニル酸などの旨み成分を含み、タウリン、グリ
シンなどの甘味成分も含みます。タウリンは甘味だけでなく、コレステロー
ル値を下げ、肝機能を強化する働きがあります。そのほかにも、アワビには
疲労回復に効果のあるビタミンB1、老化予防や美肌効果のあるビタミンE、
エネルギー源となるグリコーゲンなどの栄養成分が含まれています。独特の
コリコリした食感は豊富なコラーゲンによるもので、女性には見逃せない食
材ということになりますね。

アワビを薄くそいで干し、叩き伸ばして乾燥させた「伸(の)しアワビ」は、
古くから神饌として供えられました。鎌倉時代以降には、出陣や帰還の際の
祝儀に贈られ、栄養豊富で保存が利くことから、陣中食としても重宝されま
した。以来武家では、大名や将軍家などへの大切な場面で贈り物をするとき
に必ず紙と水引で包んだ「伸しアワビ=熨斗鮑」を添えるのが慣わしとなり、
今でも格式ある結納品として熨斗鮑が贈られることがあります。これが「熨
斗」の由来です。

熨斗鮑は非常に高価なものでしたので、庶民は小さな紙を切って折りたたん
だもので代用しました。今では印刷の場合もありますが、熨斗の包みをよく
見ると、中に黄色く細長い紙があるのに気づきます。これは熨斗鮑が簡略化
されたものなのです。

その美味と栄養価、また不老長寿の縁起物として珍重され、大切な贈り物の
シンボルにまで昇華されたアワビ。アワビの旬は、種類にもよりますが関東
地方では8月~10月です。最近は捕れたての新鮮なアワビが通販で購入できま
すから、自宅で気軽に味わってみてはいかがでしょうか。



○o 季 節 の 花 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………


強い風味とはうらはらに:『ニラ(韮)』

「伎波都久(きはつく)の岡の茎韮(くくみら)我れ摘めど 籠(こ)にも満たな
ふ、背(せ)なと摘まさね」(『万葉集』巻14-3444)

(伎波都久の岡で:「ニラを一生懸命摘んでいるんだけど、私ではなかなかか
ごにいっぱいにならないわ」「じゃあ、あなたの旦那さまと一緒に摘みなさい
な」)
※「伎波都久の岡」=現在の島根県益田市、もしくは茨城県桜川市の二説あり。

中華料理や韓国料理には欠かせない食材、ニラ。強い風味とはうらはらに、8
月末~10月末頃、真っ白い小さな六弁の花びらが茎の先に群がり咲き、可憐な
姿を見せます。

ニラは非常に生命力が強く、一度刈り取っても同じ株から新芽が出てきて、一
株から4~5回は収穫が可能です。食物繊維が多く整腸作用があり、ビタミンや
ミネラルが豊富で疲労回復、滋養強壮、動脈硬化やガン予防に役立つまさに万
能野菜です。

ニラの古名は「咬辣(かみら)」(もしくは接頭語「か」+「美辣」)といい、
文字通り咬んだときに口の中がヒリヒリすることからこのように呼ばれるよう
になったと言われています。原産地は中国西部で、日本でも古くから宮中で御
料(皇室で用いられる産物)として内苑で栽培されていたほか、冒頭の歌のよ
うに一般の人々も野生もしくは栽培したニラを摘んで食していたのでしょう。
薬効もさることながら、可憐な白い花は古代の人の目を楽しませていたのかも
知れません。

種まきもしくは株分けで簡単に育ち、病虫害にも強いので家庭でも手軽に育て
られるニラ。健康増進と鑑賞のため、来年の春が来たらお庭やプランターで栽
培にチャレンジするのもよいですね。


○o JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………

『伝統工芸館』新規登録増えています!

JTCOウェブサイトで一番の人気コンテンツ、「伝統工芸品館」。全国の多くの
組合様、団体様、法人様にご協力いただき、日々登録工芸品が増えております
ので、ぜひチェックしてみてください。いままでご存じなかった、隠れた名品
が見つかるかもしれません。

JTCO伝統工芸品館
http://www.jtco.or.jp/kougeihinkan/


○o 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………

『風物使』第5号(2010年処暑号)を最後までお読みくださったみなさま、誠
にありがとうございました。

「旬の味」の連載をしながら思うのは、旬を迎える食物が、たとえば夏なら
疲労回復や体力増進に効果のある栄養素を含んでいるなど、必要なときに実
にタイミングよく摂れるようになっているということです。

ビニールハウスや養殖などで、さまざまな食品が安定的に供給されていること
はありがたく思いますが、すべての食物は自然からの贈り物であるとを忘れる
ことなく、感謝して旬の味覚を楽しみたいものですね。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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