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JTCOメルマガ『風物使』

2016年05月11日 配信
「蕗の香味に初夏薫る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』立夏号

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  「蕗の香味に初夏薫る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』立夏号
    vol.91 2016年5月11日発行(旧暦 4月5日・卯月)

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拝啓
すでに関東地方でも真夏日が記録される今日この頃、皆さまいかがお過ごしで
しょうか。うだるような夏がやってくる前の爽やかな陽気を、できるだけ楽し
むようにしましょう。


+‥‥+ 2016年立夏号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ………   【植物】傘にもなる珍味:「フキ」
 ・季節の行事…………    黒船祭 [静岡県下田市]
 ・和遊苑 おすすめの一品 【箱根寄木細工】手帳/ブックカバー
 ・JTCOからのお知らせ   「父の日特集」開催中!
 ・編集後記



,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…

【植物】傘にもなる珍味:「フキ」

「卯の花のこぼるる蕗の廣葉哉」
(與謝蕪村)

(解釈: 青々としたフキの広い葉に、真っ白なウツギの花がこぼれるように
咲いているよ。)

街や山野の樹木も青々とした葉を生い茂らせ、今年も夏を迎えるばかりとなり
ました。そんな季節にぴったりの、爽やかな香味とほろ苦さが楽しめる山菜、
「蕗(フキ)」が食卓に上るご家庭も多いのではないでしょうか。

フキは日本原産のキク科の植物で、山野に自生しており古代から山菜として親
しまれてきました。古くは「布々岐(フフキ)」と呼ばれましたが、これはフ
キが冬に黄色い花を咲かせること、またはフキの花蕾であるフキノトウが浅葱
色をしているため、「冬黄(または冬葱、フユキ)」が転訛したものと考えら
れています。
また「フキ」は「拭く」が転じたものという説もあります。冒頭の俳句にある
ように、フキは大きな広い葉をつけますから、かつてはこれを紙や布の代用品
として、ふきんやトイレットペーパーとして使われていたからなのだそうです
※3。なるほど、さもありなんですね。

80年代、奈良県のデパート建設用地から、3万5千点にも及ぶ木簡が発掘されま
した。記録されていた内容から、ここはかつて天智・天武両天皇の血を引く長
屋王(ながやのおおきみ、7-8世紀の大臣)の邸宅跡だったことがわかりまし
た。木簡の多くは、「伝票木簡」と呼ばれるもので、皇族や使用人への米など
の食料の支給記録や、御料地から邸宅への食料の送り状などでした。その中に、
「山背薗進 蕗六束(=山背薗(やましろその、今の大阪府河南町)から進上
されたフキ六束)」など、フキの納入に関する記述も見られ、この時代にも一
般的な食材であったことがわかります※1,2。

平安時代の律令施行細則を定めた『延喜式』(927年)には、フキの栽培方法や
食用・薬用としての利用方法が記述され、この時代には栽培方法も確立してい
たようです。江戸時代に宮崎安貞が著した『農業全書』(1697年)には、様々
な作物の効率的な栽培方法や利用方法が詳しく記されており、フキについては
「市場で高い利潤が上がる功利的な作物」という説明が添えられています※4。
案外高級食材だったのかもしれませんね。

現在青果として流通しているフキの多くは、江戸時代から栽培されている「愛
知早生ふき」です。この品種は肉質がやわらかくて苦味が少なく、長さは1mほ
どになります※1。秋田県の県花はフキノトウですが、これは「秋田ふき」と
いう大型のフキで、「おらの国にでは雨が降っても傘など要らぬ、手頃の蕗の
葉そろりとさしかけ、さっさと出て行くわぇ」と秋田民謡に唄われているよう
に、太さは5-6cm、長さは2mにもなります。食用としては砂糖漬けや佃煮とし
て利用され、工芸品としては葉脈や茎の繊維をそのまま布や紙に刷り込んだ
「秋田蕗摺」が作られています※5。

江戸時代、秋田の五代目藩主佐竹義峰侯が江戸城に登城した際、この秋田ふき
を「その太さ竹のごとく、葉は傘のごとし」と諸国大名に自慢したところ、
「そんな巨大なフキがあるわけがない」と一笑に付されてしまいます。これに
憤慨した義峰が、後日宴席で秋田から取り寄せた太さ24~36cm、長さが3.6mも
ある大蕗を披露すると、諸大名は過日の非礼を詫びたということです※6。

秋田だけではなく、北海道・東北地方にはこのような大型のフキが自生してい
ます。アニメにも登場するアイヌ伝説の「コロボックル」という小人は、「フ
キの葉の下の人」という意味の通り、フキで葺いた竪穴住居に住み、雨が降る
とフキの葉の下に10人が肩を寄せ合って雨宿りをしたと言われています※7。
北海道足寄町の螺湾(らわん)川沿いには2~3mにもなる巨大な「らわんぶ
き」の生育地があり、7月中旬が見ごろ。この下をくぐってコロボックル気分
を楽しんだり、フキ刈り体験をしたり、フキ料理を味わったりすることができ
ます※8,9。

青果として流通するフキは、5~6月ごろまでが旬です。煮物や佃煮で爽やかな
香味を楽しむもよし、北国に出かけて巨大なフキと戯れるもよし。初夏ならで
はのフキの楽しみ方を見つけてみてください。

【参考サイト,2016年5月8日参照】
※1 野菜情報サイト 野菜ナビ 「フキ」
http://www.yasainavi.com/zukan/fuki.htm
※2 奈良文化財研究所平城宮跡資料館 特別企画展 「地下の正倉院展 長
屋王家木簡の世界」
http://hiroba.nabunken.go.jp/files/File/chikanosyosointen/2008/2008_2k
i_kaisetu.pdf#search=%27%E5%B1%B1%E8%83%8C%E8%96%97%E9%80%B2%27
※3 都立薬用植物園 「フキノトウ」
http://www5f.biglobe.ne.jp/~homepagehide3/torituyakuyou/hagyou/fukinot
ou.html
※4 農学全書 「蕗」
http://www.kkjin.co.jp/yebi_jin/nozen_001.htm#fuki
※5 切手で語る秋田 「フキノトウ」
http://homepage2.nifty.com/beevalley/akita/fukinoto.html
※6 秋田天然記念物の里 「秋田蕗」
http://www.kyoeipalace.com/fuki.html
※7 野菜図鑑 「ふき」
https://vegetable.alic.go.jp/panfu/fuki/fuki.htm
※8 北海道遺産 「螺湾(らわん)ブキ」(足寄町)
http://www.hokkaidoisan.org/heritage/034.html
※9 北海道ファンマガジン 「ラワンブキ、日本一の巨大フキ」
http://pucchi.net/hokkaido/foods/fuki.php
ほか



,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

黒船祭
[静岡県下田市](5月20~22日)

昭和9年、下田開港につくした内外の先賢の偉業を顕彰し、その偉大なる功績
を永遠に記念するため、併せて世界平和と国際親善に寄与するため、黒船祭が
開催されるようになりました。今年で77回目を迎えます。新緑の季節、なまこ
壁や海兵隊の白と黒のコントラストが美しい、下田市最大のイベントになって
います。

厳かに行われる記念式典や米海軍主催墓前祭、華やかな記念公式パレードでは
国際色あふれる雰囲気を、幕末衣装を着た人々が行き交い、大道芸も披露され
る開国市で幕末の雰囲気を、味わい楽しめることができます。

「下田のまちが3日間だけの幕末タイムスリップ」ゆっくりじっくり先人たち
の時代にひたってみるのはいかがでしょうか。


※ホームページより引用
伊豆下田観光ガイド
http://www.shimoda-city.info/kurofune.html



,:* 和遊苑 おすすめの一品 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥

【箱根寄木細工】 手帳/ブックカバー


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木細工を使ってみませんか。

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を帯び、本格的なしっかりとした牛革でライニングが施されています。A6(文
庫サイズ)のノートやスケジュール帳を組み合わせたり、ブックカバーとした
り、自分好みに使うことができます。便利なカード挿しとペン挿しがつき、差
し込みベルトでしっかりまとまります。男性にも女性にも合うオシャレなデザ
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,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

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いつも家族のために一生懸命働いているお父さん、お礼の言葉もつい言いそび
れがち。今年の父の日は6月19日(日)です。年に一度のこの機会に、いつも
は胸にしまっている感謝の言葉を、本物のギフトを添えて伝えてみませんか。

どんなタイプのお父さんにもぴったりの、洗練されたテイストの工芸品が揃っ
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粋を感じる父の日ギフト
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,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第91号(2016年立夏号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。

最近、事務所近くの愛宕山に西郷隆盛と勝海舟、そして曲垣平九郎(まがき・
へいくろう)の「顔ハメ看板」が設置されているのに気づきました。

調べてみると、ここから西郷と勝が江戸の町を見渡し、無血開城を決めたこと、
平九郎が愛宕神社の境内にある梅の枝を家光公に献上するために、急な石段を
果敢に馬で上り下りしたことがわかりました。

近くのみなと図書館には、こんな話がたくさん詰まったさまざまな郷土資料が
あり、パラパラとめくって見るだけでもとても楽しいものです。
皆さんも、休日に近所の図書館の郷土資料コーナーに立ち寄ってみてください。
見慣れた土地も、歴史を知ることで全く違う場所に見えてくること請け合いで
す。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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【発行元】

特定非営利活動法人 日本伝統文化振興機構(JTCO)
〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
Webサイト: http://www.jtco.or.jp/

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