JTCOメルマガ『風物使』
2016年03月03日 配信「萌える蓬に心燃ゆ」~ 季節の使い・JTCO『風物使』啓蟄号
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「萌える蓬に心燃ゆ」~ 季節の使い・JTCO『風物使』啓蟄号
vol.89 2016年3月3日発行(旧暦 1月25日・睦月)
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このメルマガは、NPO法人日本伝統文化振興機構(JTCO)のメールマガ
ジンにお申し込みくださった方、もしくは当機構活動にご協力いただ
いている個人/団体/法人様にお送りしています。
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拝啓
少しずつ春の陽ざしを感じ始める今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょう
か。
今日はひな祭り。桃の開花にはまだ早いものの、一足先に春の訪れを祝ってみ
ませんか。
+‥‥+ 2016年啓蟄号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
・今号のテーマ……… 【植物】心に火をつける?:「蓬(よもぎ)」
・季節の行事………… 帆手まつり [宮城県塩釜市]
・和遊苑 おすすめの一品 【箱根寄木細工】パスケース
・JTCOからのお知らせ 銀座歌舞伎座で、江戸木版画販売中!
・編集後記
,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…
【植物】心に火をつける?:「蓬(よもぎ)」
けふも又 かくやいぶきの さしも草 さしも我のみ 燃えや渡らむ
(和泉式部 『新古今和歌集』)
(訳: 今日もまた、伊吹山の蓬(ヨモギ)のように、私だけがこんな風にあ
なたを想って燃え盛るのでしょうか。)
各地で春の兆しを感じ始める新暦のひな祭り、今年は女の子のいらっしゃるご
家庭ではどのようにお祝いされますでしょうか。新暦では少々早いものの、ひ
な祭りにいただく菱餅に使われる「ヨモギ」もそろそろ新芽が芽吹くころ。独
特の爽やかな香味を持つヨモギは、和菓子、おひたし、てんぷらの材料など、
和食の食材としてはなくてはならないものですね。
ヨモギは北アジア原産のキク科の多年草で、大変繁殖力が強く、各国で帰化植
物として至る所に見られます。たんぱく質、ビタミンA・B1・B2・C、ミネラル
などの豊富な栄養素や、香味のもとであるシオネールなどの精油を含むため、
世界中で食用や薬用に広く利用されています。日本では、その芳香と生命力か
ら、邪気を払い、長寿を約束するものとされてきました。
草餅には、古くは「母子草(ハハコグサ、春の七草のひとつであるゴギョウの
こと)」が使われていましたが、江戸時代には邪気払いの思想と増血を促す実
利から、草餅といえば蓬餅となっていました。ひな祭りの菱餅が現在の形にな
ったのも江戸時代のことで、地方により3色ではなく、2色や5色、7色の場合も
あるのだそうです。
桃の花を表す桃色の餅には、解毒作用のあるクチナシの実で赤色をつけ健康を、
残雪を表す白色の餅には血圧を下げるヒシで清浄を、そして新芽を表す緑色の
餅には増血を促すヨモギで健康と長寿、厄除けの願いを込めました。色の重ね
方では、よく見られる下から緑→白→桃の順番には、「雪の下で新芽が芽吹き、
雪の上では花が咲く」という意味が添えられています。
恋多き歌人として知られた和泉式部は、募る恋心をヨモギに託して冒頭の歌を
詠みましたが、ヨモギの語源は「善燃義(=よく燃える木)」にあると言われ
る通り、葉がロウを含むため、火をつけるとゆっくりと時間をかけて燃えるの
だそうです。またヨモギは別名を艾(燃草=もぐさ)と言います。お灸に使う、
あのモグサです。モグサはヨモギの葉の裏側にある繊毛(密生した白い綿毛)
を集めて作られる大変高価なもので、高級品ほど点火しやすく、火力が穏やか
でじんわりと身体を温めてくれるのだそうです。
和泉式部の歌に出てくる「伊吹山」とは、現代の滋賀県にある伊吹山のことで
はなく、良質のモグサの産地として知られていた下野国(栃木県)にある山こ
とだと考えられています。同様に「さしも草(ヨモギの古名)」の枕詞である
「しめぢが原」または「しめつの原」も下野国にあった原野のこととされてい
ます。
下野や しめつの原の さしも草 おのが思ひに 身をや焼くらむ
(詠み人知らず 『古今和歌集』)
(訳: 下野のしめつの原のヨモギのように、自らの思いに身を焦がす私で
す。)
和泉式部と同僚の女房であった紫式部は、皇子と身分違いの熱愛さえ繰り広げ
た恋多き彼女を、「物書きとしては優れているが、素行はけしからぬ」と評し
ています。紫式部の「源氏物語」第15帖「蓬生(よもぎう)」は、これまでの
歌とは打って変わって「ヨモギが生い茂って荒れ果てたところ」という意味で
す。しかしながら、この帖は誰からも見捨てられた醜女(しこめ)である末摘
花が、彼女の心ざしの清らかさに打たれた源氏に引き取られるというハッピー
エンドになっていますから、ヨモギは燃えさかる恋でも、忍び待ち続ける恋で
も、見事に表現してくれる草なのかもしれません。
春の訪れを感じさせる空の下、道端に芽吹くヨモギの新芽を見つけたら、健康
と邪気払いを願ってヨモギのレシピを試してみてはいかがでしょうか。もしか
すると、あなたの心に何か新しいときめきが芽吹くかもしれませんよ。
【参考】
wikipedia 「ヨモギ」「菱餅」「和泉式部」「蓬生」
https://ja.wikipedia.org/
スパイス&ハーブ 「よもぎ」
http://japanese-mugwort.spice-file.info/
山っこ菜時記 4月卯月 「蓬(ヨモギ)」
http://www.s-kanematsu.jp/community/saijiki/saijikiapryomogi.htm
気になるあれこれ。。「ひな祭り菱餅の意味は!食べるべき理由には」
http://kininaruarekore.com/archives/1135.html
ほか
,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
帆手まつり
[宮城県塩釜市](3月10日)
この祭りは、天和2年(1682)塩竈が大火に見まわれ、地域が衰退した時に火
災の鎮圧と景気回復を鹽竈さまに祈って始められました。
享保18年(1733)には現在の神輿ができ、神輿の町内渡御に変わって明治5年
に「帆手祭」と改称し、祭日も3月10日に変更し戦時中も中止することなく受
け継がれています。
市民の間では春を呼ぶ祭とも言われこの祭を機に春を実感するのです。現在は
五百人にも及ぶお供の列が絢爛な祭としています。
※志和彦神社・塩釜神社ホームページより引用
http://www.shiogamajinja.jp/topics/179.shtml
,:* 和遊苑 おすすめの一品 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥
【箱根寄木細工】パスケース
http://wayouen.jp/?mode=cate&cbid=1488752&csid=2
別れもあれば出会いもあり、寂しさもあれば嬉しさもあり・・・2015年度も残
りわずかとなりましたね。
4月の新年度に向けて、3月に新しく何かを変える準備をしてみませんか。
毎日使うものは丈夫で使いやすく、そしてデザインにもこだわりたいところで
す。
【箱根寄木細工】パスケースで毎日の通勤・通学やお買い物に伝統工芸の箱根
寄木細工を取り入れてみてはいかがでしょうか?
敷居が高く感じる伝統工芸品ですが、お手頃な価格でお求めいただけます。
洗練された天然木のデザインとしっかりした本格的なつくりで、使うのが楽し
みになることと思います。
新鮮な気持ちで新年度を送れるよう普段からよく使うパスケースを新調して、
どうぞ新しいスタートをお迎えくださいませ。
素材価格の高騰により、3,000円以下のお得な価格でご紹介できるのは、今だ
けです!
詳しくはオンラインショップで↓↓
http://wayouen.jp/
,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
銀座歌舞伎座で、気軽に使える江戸木版画グッズをご紹介中!
恒例の歌舞伎座木挽町での「美しい日本のものづくり、歌舞伎座と伝統工芸」、
今月は「江戸木版画」が15日まで出店しております。
伝統工芸士による手刷りならではでの美しい色彩と、印象的な摺り目、ぜひ店
舗でご確認ください。
浮世絵の絵柄だけではなく、中原淳一のモダンなイラスト、四季折々の風物使
を木版画で表現しています。
商品も、壁掛け用の版画はもちろん、日々のお便りの気軽に使えるレターセッ
トやはがき、おしゃれな靴用インソールなど、日常的に使えるものを多数取り
揃えてお待ちしております。
イチョウの木を手彫りして一つ一つ絵付けした根付や、本物さながらの金魚の
マスコットも必見です。
ぜひ、銀座歌舞伎座地下二階の、木挽町広場にお越しください!
詳しくはこちら↓↓
http://www.jtco.or.jp/news/?act=detail&id=104
,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
『風物使』第89号(2016年啓蟄号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。
早いもので、2016年も早や3月に入りました。心を新たにした年始の思い、ま
だ持ち続けていらっしゃいますか?
学校や家庭では卒園・卒業など人生の区切りとなるイベントがありますが、働
いている方は多くの方が期末で大忙しで、何となく流れて行ってしまう毎日か
もしれません。
季節が移り変わる中、ここで今一度これまでの2か月を振り返り、4月から良い
スタートを切るために再度心を新たにしたいものですね。
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
【季節の使い・JTCO『風物使』】
発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日
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【発行元】
特定非営利活動法人 日本伝統文化振興機構(JTCO)
〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
Webサイト: http://www.jtco.or.jp/
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All rights reserved.
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vol.89 2016年3月3日発行(旧暦 1月25日・睦月)
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・季節の行事………… 帆手まつり [宮城県塩釜市]
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・JTCOからのお知らせ 銀座歌舞伎座で、江戸木版画販売中!
・編集後記
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【植物】心に火をつける?:「蓬(よもぎ)」
けふも又 かくやいぶきの さしも草 さしも我のみ 燃えや渡らむ
(和泉式部 『新古今和歌集』)
(訳: 今日もまた、伊吹山の蓬(ヨモギ)のように、私だけがこんな風にあ
なたを想って燃え盛るのでしょうか。)
各地で春の兆しを感じ始める新暦のひな祭り、今年は女の子のいらっしゃるご
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な祭りにいただく菱餅に使われる「ヨモギ」もそろそろ新芽が芽吹くころ。独
特の爽やかな香味を持つヨモギは、和菓子、おひたし、てんぷらの材料など、
和食の食材としてはなくてはならないものですね。
ヨモギは北アジア原産のキク科の多年草で、大変繁殖力が強く、各国で帰化植
物として至る所に見られます。たんぱく質、ビタミンA・B1・B2・C、ミネラル
などの豊富な栄養素や、香味のもとであるシオネールなどの精油を含むため、
世界中で食用や薬用に広く利用されています。日本では、その芳香と生命力か
ら、邪気を払い、長寿を約束するものとされてきました。
草餅には、古くは「母子草(ハハコグサ、春の七草のひとつであるゴギョウの
こと)」が使われていましたが、江戸時代には邪気払いの思想と増血を促す実
利から、草餅といえば蓬餅となっていました。ひな祭りの菱餅が現在の形にな
ったのも江戸時代のことで、地方により3色ではなく、2色や5色、7色の場合も
あるのだそうです。
桃の花を表す桃色の餅には、解毒作用のあるクチナシの実で赤色をつけ健康を、
残雪を表す白色の餅には血圧を下げるヒシで清浄を、そして新芽を表す緑色の
餅には増血を促すヨモギで健康と長寿、厄除けの願いを込めました。色の重ね
方では、よく見られる下から緑→白→桃の順番には、「雪の下で新芽が芽吹き、
雪の上では花が咲く」という意味が添えられています。
恋多き歌人として知られた和泉式部は、募る恋心をヨモギに託して冒頭の歌を
詠みましたが、ヨモギの語源は「善燃義(=よく燃える木)」にあると言われ
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だそうです。またヨモギは別名を艾(燃草=もぐさ)と言います。お灸に使う、
あのモグサです。モグサはヨモギの葉の裏側にある繊毛(密生した白い綿毛)
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和泉式部の歌に出てくる「伊吹山」とは、現代の滋賀県にある伊吹山のことで
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ます。
下野や しめつの原の さしも草 おのが思ひに 身をや焼くらむ
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(訳: 下野のしめつの原のヨモギのように、自らの思いに身を焦がす私で
す。)
和泉式部と同僚の女房であった紫式部は、皇子と身分違いの熱愛さえ繰り広げ
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も、見事に表現してくれる草なのかもしれません。
春の訪れを感じさせる空の下、道端に芽吹くヨモギの新芽を見つけたら、健康
と邪気払いを願ってヨモギのレシピを試してみてはいかがでしょうか。もしか
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【参考】
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http://japanese-mugwort.spice-file.info/
山っこ菜時記 4月卯月 「蓬(ヨモギ)」
http://www.s-kanematsu.jp/community/saijiki/saijikiapryomogi.htm
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ほか
,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
帆手まつり
[宮城県塩釜市](3月10日)
この祭りは、天和2年(1682)塩竈が大火に見まわれ、地域が衰退した時に火
災の鎮圧と景気回復を鹽竈さまに祈って始められました。
享保18年(1733)には現在の神輿ができ、神輿の町内渡御に変わって明治5年
に「帆手祭」と改称し、祭日も3月10日に変更し戦時中も中止することなく受
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『風物使』第89号(2016年啓蟄号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。
早いもので、2016年も早や3月に入りました。心を新たにした年始の思い、ま
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発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日
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