NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。

JTCO日本伝統文化振興機構
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JTCOメルマガ『風物使』

2015年12月28日 配信
「赤い炭火に頬和む」~ 季節の使い・JTCO『風物使』冬至号

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  「赤い炭火に頬和む」~ 季節の使い・JTCO『風物使』冬至号
    vol.87 2015年12月28日発行(旧暦 11月18日・霜月)

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 いている個人/団体/法人様にお送りしています。         
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拝啓
何かと気ぜわしい年末、皆さまいかがお過ごしでしょうか。大掃除で住まいや
職場を清め、歳神さまをお迎えする準備をいたしましょう。


+‥‥+ 2015年冬至号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ………   【暮らし】香りも愉しむ暖房器具:炭
 ・季節の行事…………   鎮火祭[広島県廿日市市宮島町、厳島神社]
 ・和遊苑 おすすめの一品 【印伝】長財布、二つ折り財布
 ・JTCOからのお知らせ   建具の小清水様(JTCO協力団体)が
  ウッドデザイン賞を受賞!
 ・編集後記


,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…

【暮らし】香りも愉しむ暖房器具:炭

「菊炭の香をたつかしみ冬籠(ごもり)」(青木月斗)

(解釈:家にこもる冬の日も、菊炭の香りが楽しませてくれることだよ。)

本年も早や年の瀬を迎え、暖冬とは言われながらも、朝起きたときや帰宅時に
は暖房器具のスイッチを真っ先につけに走る方も多いのではないでしょうか。
現代でこそ、暖房機器は住環境や用途に合わせてさまざまなものが選べますが、
長きにわたって日本人の冬の体を温めてくれたのは、炭の火でした。

日本で発見された最古の炭は、愛媛県の鹿の川遺跡の洞窟内のもので、なんと
30万年前の木炭なのだそうです。そのころの日本は氷河期で、人々は洞窟の中
で生活していました。おそらくは煙を逃がす設備もなかったでしょうから、そ
のような住まいで焚き火をしたのでは、煙に巻かれて暖を取るどころではなか
ったかもしれません。煙を出さず、火持ちのよい炭の発明は、厳しい冬の生活
環境を大幅に改善したことでしょう。

もっとも原始的な炭は、木を積み重ねた上に枯れ草や粘土をかぶせ、半日ほど
蒸し焼きにすることで、木に含まれるタールや水分を蒸発させて作られます。
これを和炭(にこずみ)といいます。この炭はやわらかく、あまり質のよいも
のではなかったため、後日優れた製法が大陸より輸入、もしくは考案されてよ
り硬い、上質の炭が生産されるようになりました。油分や水分が飛んだ炭は重
量も軽くなり、木のように腐ることもないため、持ち運びや長期の保存にも非
常に便利になります。長時間にわたり、高温の安定した火力を供給してくれる
炭は、暖房や炊事だけでなく、土器の焼成や金属の鋳造にも利用されるように
なりました。

金属の鋳造技術は、弥生時代初期(紀元前200年ごろ)に大陸からの渡来人に
より日本に伝えられたとされています。最初に青銅器が鋳造され、弥生時代中
期(紀元前後)には鉄器が急速に普及します。その生産に不可欠な火を熾す炭
の需要も飛躍的に高まっていったと考えられます。8世紀に作られた奈良・東
大寺の大仏には、約500トンの銅が使われ、その鋳造のために、体積にして300
万リットル(16,656石)の炭が使われたといわれています。またこの頃、中国
から白炭(高温で焼成した後、窯から出して急速に冷却して作られる炭で、表
面が白く、金属のように硬く火持ちがよい)の製造技術が伝わったと考えられ
ています。
同じく東大寺の正倉院御物には、現存する最古の火鉢「大理石製三脚付火舎」
(「火舎(ほや)」=脚のついた火鉢・香炉)が収められており、室内での炭
の使い方も次第に洗練されていったことがわかります。

平安時代には、貴族の邸宅の暖房や炊事用として炭が大量に必要になり、炭を
年貢として収める「納炭」が行われました。『枕草子』には、「炭櫃(すび
つ)」「火桶(ひおけ)」(今で言う火鉢)という語彙とともに、冬の段に暖
房用としての炭がしばしば登場します。壁もあまりなかった当時の邸宅の冬は、
隙間風が吹き込みさぞ厳しかったろうと思われますが、炭は電磁波の一種であ
る遠赤外線を発生させますから、空気の流れに左右されることなく電子レンジ
と同じ仕組みで皮膚の分子を振動させて体を温めてくれるため、近くにいれば
案外暖かかったのかもしれません。

鎌倉時代から室町時代にかけて、大名や貴族、僧侶や武家階級のあいだで茶の
たしなみが広まっていくと、それまで刀剣や甲冑などの武具を作るために焼か
れてきた炭が、茶の湯を沸かすための炭として改良され、製炭技術が大きく進
歩することになりました。茶道を大成させた千利休は、炭の改良にも大きく貢
献したと言われています。

黒炭の中で最高の品質を持つとされる茶道炭は、木質の硬いクヌギの若木が原
料となり、切り口が菊の花のように美しい形状に焼き上がることから、「菊
炭」とも呼ばれます。火力が強く、火持ちがよいため燃料として優れているだ
けでなく、冒頭の歌に詠まれているように、独特の芳香があり、火相(ひあ
い・火の熾り具合)も美しく、一種の芸術品とされています。関西では大阪の
池田炭、関東では千葉の佐倉炭が茶道炭として高く評価されてきましたが、現
代では池田炭の職人は数名のみ、佐倉炭はすでに名前が残るのみとなっていま
す。

奈良時代に中国から伝えられた白炭の技術は、元禄時代(1700年代)に現代で
も有名な「備長炭」として大成します。備長炭の名前は、この炭の製法を完成
した紀州の炭問屋、備中屋長左衛門によってつけられたもので、古くから紀州
の熊野地方の村々で焼かれていた「熊野炭(ゆうやたん)」を改良して作られ
ました。備長炭はウバメガシという木質の硬いカシの一種をの原料とし、窯入
れから焼き上がりまで実に10日を要します。製炭士はその間匂いや煙の具合だ
けで作業を進めるそうですから、まさに職人技です。備長炭は着火がよく、す
ぐに全体が燃焼して大量の遠赤外線を発するという特性があります。上述のよ
うに遠赤外線は電磁波ですから、表面だけではなく短時間でものの中心までを
温めることができます。このため、炭で食材を焼くと中はふっくら、外はこん
がりとした焼き上がりになるのです。さらに長時間安定した火力を供給するた
め、料理に向いているというのはうなずけますね。

石油ストーブやエアコン、ガスコンロの普及で、家庭で炭を利用して暖を取っ
たり料理をしたりすることはほとんどなくなりましたが、火鉢や七輪で赤々と
燃える炭の炎はそれだけで風情を感じさせるものです。単なる燃料を芸術の域
まで高めてくれた先人の叡智を、この冬あなたの生活に採り入れてみませんか。


参考文献:

木炭の歴史と文化について
http://homepage2.nifty.com/sumiyaki/rekishi.htm
Wikipedia,木炭
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E7%82%AD
遠赤外線のお話
http://www.fnw.gr.jp/7rinhonpo/restconer/ensekigaisen.htm
なら・観光ボランティアガイドの会,東大寺 大仏様の『お身拭い』
http://www.e-suzaku.net/?ai1ec_event=eve_08-001&instance_id=
能勢さとやま創造館,能勢菊炭
http://www.satoyama-co.jp/original2.html
紀州炭工房,紀州備長炭のおはなし
http://www.sumikobo.net/bincyoutan.html
ほか


,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……


鎮火祭
[広島県廿日市市宮島町、厳島神社](12月31日)

鎮火祭とは、毎年12月31日の大晦日午後6時から世界文化遺産にも指定された
嚴島神社の御笠浜で行われる「火難避け」のお祭りです。

神社祓殿で斎火(いみび)を灯した祭壇を設け、斎主が祝詞を済ませた後、松明
に火を移し御笠浜に設けた斎場の大束に火を移し、そこから大松明に火を点け
ます。宮島の町民は大松明から小松明まで様々な大きさの松明を作り、夕方御
笠浜に集合します。

御神火を点け消火した小松明は家に持ち帰り、神棚にお供えして1年間の火難
避けの護符にします。また御神火を点けた大松明は、「たいまつ、ヨイヨイ。
たいまつ、ヨイヨイ。」の掛け声をかけながら威勢良く御笠浜を練り歩きます。
御笠浜は、文字通り火の海と化します


※一般社団法人 宮島観光協会より引用
http://www.miyajima.or.jp/event/event_chinka.html



,:* 和遊苑 おすすめの一品 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥

【印伝】 長財布、二つ折り財布
http://wayouen.jp/?mode=grp&gid=578426

そろそろ2015年も終わりを迎え、新たな1年が始まろうとしております。
新年を迎えるにあたり、お財布を買い替えようとする方も多いのではないでし
ょうか。

そこでこの時期おすすめなのが【印伝】長財布、二つ折り財布です。
今年は新しい商品も増え、デザインが豊富になりました。
和装・洋装問わず広い場面でお使いいただけます。

初詣や成人式など、新年のお出かけのお供にぜひどうぞ。

詳しくはオンラインショップで↓↓
http://wayouen.jp/?mode=cate&cbid=1506315&csid=0



,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

建具の小清水様(JTCO協力団体)がウッドデザイン賞を受賞!

当機構が広報および販売活動で協力させていただいている建具の小清水様が、
今月ウッドデザイン賞運営事務局が主催、林野庁が後援のウッドデザイン賞を
受賞いたしました。

建具の小清水様は、これまであまり認知されていなかった伝統ある建具文化の
魅力をPRすることに重点を置き、小冊子作成や工房見学・体験などの啓発活動
を推進し、ソーシャルデザイン部門コミュニケーション分野せ実績が認められ
ました。

詳細はこちら:
http://www.jtco.or.jp/news/?act=detail&id=99



,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第87号(2015年冬至号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。

小さいころ、田舎の曽祖父の家にはまだ火鉢があり、炭をかき回して畳や座布
団を汚してしまい、叱られた思い出があります。子供心にも、火鉢にはとても
風情を感じたものです。暖房や調理の器具に風情というのは、やはり炭ならで
はだと思います。皆さんも、機会があればぜひお試しください。

本年もメルマガ『風物使』のご愛読誠にありがとうございました。どうぞよい
お年をお迎えくださいませ。

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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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【発行元】

特定非営利活動法人 日本伝統文化振興機構(JTCO)
〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
Webサイト: http://www.jtco.or.jp/

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