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JTCOメルマガ『風物使』

2014年05月27日 配信
「くれないに人想う」~ 季節の使い・JTCO『風物使』小満号

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 「くれないに人想う」~ 季節の使い・JTCO『風物使』小満号
    vol.66 2014年05月27日発行(旧暦 4月29日・卯月)

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拝啓
真夏日も観測されるようになった今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょう
か。地域によっては肌寒い日もあるとのこと、日暮れ後を考え一枚多く持って
お出かけください。

+‥‥+ 2014年小満号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ……… 【草花】あこがれの色:ベニバナ
 ・季節の行事………… 呼子大綱引[佐賀県唐津市]
 ・JTCOからのお知らせ 和遊苑が、日本パリ文化会館にデビューしました!
 ・編集後記


,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…


【草花】あこがれの色:ベニバナ

「紅(くれなゐ)の深(こ)染(そ)めの衣色深く 染(し)みにしかばか忘れかね
つる」(『万葉集』巻11-2624)

(訳:紅(くれない)で深く染めた衣のように心に染み込んだのか、あの人の
ことを忘れることができないのです。)

小満の次候は、「紅花栄(こうか さかう・ 紅花が盛んに咲く)」です。実際
にはベニバナの花期は6~7月で、このころにはアザミに似た花姿の、黄色から
赤になる花が咲きます。

種子からはコレステロールを取り除くリノール酸を含む良質の油が取れるため、
現在では食用油(ベニバナ油またはサフラワー油)としての用途でおなじみで
すが、推古天皇の時代から染料を採るために栽培されてきました。平安時代に
は関東から中国地方の広い範囲で栽培され、現代に続く山形県の「最上紅花」
は特に品質が高く、江戸期にはこの地域の重要な特産物として藩の財政を担い
ました。

ベニバナはエジプトやインドで古代から広く栽培されていました。日本にはシ
ルクロードを経て中国の工人によって裁縫や染色の技術とともに伝えられたと
も、飛鳥時代の6世紀ごろに高句麗の僧侶によって伝えられたともいわれてい
ます。

紅染めは藍染めと染色法が似ており、「中国から来た染料」という意味を含め
て古くは「呉藍(くれない)」と呼ばれました。また、『源氏物語』の第6帖
でおなじみの「末摘花」とはベニバナの雅称で、花を茎の末のほうから摘み取
っていくことに由来します。

明治期以降、中国からの輸入や人工染料の発明で日本での栽培は衰退しました
が、ベニバナは古代より近世まで衣類の染料や口紅として永く日本人の生活を
彩りました。ベニバナからは水溶性の黄色と、水に溶けない赤色の染料が取れ
ますが、赤色の染料を得るためには水にさらしては乾燥させる工程を何度も繰
り返して黄色と分離させる必要があります。こうしてできた「紅餅」から取れ
る染料は繊維に浸透しにくいため、濃く染めるには灰汁や烏梅(ウメの燻製)
でpHを調整しながら何度も染め直します。

ベニバナで染めた美しい濃い桃色は、奈良時代には朱華(はねず)、平安時代
では韓紅(からくれない・大陸渡来の紅)、または紅梅と呼ばれました。染料
の採取や染色に手間のかかるこの色の衣は高価であったため禁色とされ、身分
の低い者は聴色(ゆるしいろ・許色)として薄い桃色の「一斤染め」(紅花一
斤(600g)で絹一疋(絹布2反))を上限に、さらに薄い「退紅(たいこう、ま
たはあらぞめ)」(紅花400gで絹一疋)の衣を身に着けました。

口紅としては、抽出した赤色を陶磁器の猪口や貝殻の内側に塗布して乾燥させ
たものを、水を含んだ紅筆で溶かして使いました。良質な紅は乾燥すると赤色
ではなく玉虫色(深い笹色)となって光り輝きます。このような紅は江戸時代
には小野小町にあやかって「小町紅」と呼ばれ、非常に高価であったため購入
者は豪商の婦女子や遊女などに限られました。

また乾燥させたベニバナは血行促進作用があるため紅花(こうか)と呼ばれる
生薬や、灸としても使われます。昔の婦人が赤い腰巻をしたのは、紅花で染め
た布が身体を温めて婦人病や神経痛を緩和してくれるからでした。紅色や桃色
が女性の色とされるようになったのは、このような医学的な理由もあったのか
もしれませんね。

「紅(くれなゐ)の八塩(やしほ)の衣(ころも)朝(あさ)な朝(さ)な 
馴(な)れはすれども いやめづらしも」(『万葉集』巻11-2623)

(訳: 何度も染料に浸して染めた衣も、毎朝毎朝着ていればくたびれてくる
けれど、そうやって体になじんだ衣がますます大切に思えてくるのですよ。)

紅の歌には、心に深く刻んだ思いや表に出すことのできない想いが詠まれたも
のがよくあります。これは「やしほ(何度も染めるの意)」にもあるとおり、
深染めの難しさや希少さが、年月を経てなお募る思いやあこがれをうまく表現
してくれるからだったのでしょう。誰もが好きな色で思うように装うことが可
能になった今、得がたいものを表現したいときあなたならどんな喩えにするで
しょうか。


,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

呼子大綱引
[佐賀県唐津市](6月第一土曜日・日曜日)

豊臣秀吉が兵の士気を鼓舞するために始めたといわれる、400年の歴史のある
お祭りです。呼子の町を浜組・岡組に分け、直径15cm、長さ400mの大綱を引き
合います。一般参加も可能です。

唐津観光協会サイト
http://www.karatsu-kankou.jp/karatsunmon007.html


,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『和遊苑』取り扱い商品が、日本パリ文化会館にデビューしました!

4月下旬より、『和遊苑』で人気の姫革商品などが、エッフェル塔近くのパリ
日本文化会館にデビューしました。
パリで日本に触れたくなったときには、ぜひこちらにお立ち寄りください。

現地の写真はこちら
http://www.jtco.or.jp/news/?act=detail&id=68

『和遊苑』オンラインショップでも好評発売中!
http://wayouen.jp/



,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第66号(2014年小満号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。

4月のパリでの滞在中、友人が経営するイタリアレストランで、抹茶と柚子風
味の「クリームあんみつ」を供させていただきました。このレストランは郊外
にあり、市内に住んでいるお洒落で異文化に興味がある人が来るようなところ
ではないけど・・・とのことでしたが、とにかくトライ。

おっかなびっくりだったお客さんたちも、初めて食べる寒天やこしあんを絶賛
で、今日だけの提供とわかると、さっそくオーナーにほかで食べられるレスト
ランを聞いたりしていました(パリの「とらや」が案内されていました)。

「文化」「伝統」というとなかなか入りづらいですが、おいしいものやきれい
なものはどの国でも受け入れられるのですね。これをきっかけに、日本にも興
味を持ってもらえたらな、と思ったパリの夜でした。

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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
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