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JTCOメルマガ『風物使』

2013年04月15日 配信
「五色の虹が天かける」~ 季節の使い・JTCO『風物使』清明号

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 「五色の虹が天かける」~ 季節の使い・JTCO『風物使』清明号
    vol.55 2013年04月15日発行(旧暦 3月6日・弥生)

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拝啓
東北地方でもそろそろ桜が咲き始めるころ、関東では花冷えが続く毎日です
が皆さまいかがお過ごしでしょうか。着るものを選ぶのに悩む日々も多いと
思います。冬物を全部しまうのはもう少し先にして、朝晩の冷え込みに気を
つけましょう。


+‥‥+ 2013年清明号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ……… 水神の化身『虹』
 ・季節の行事………… 古川祭・起し太鼓 [岐阜県飛騨市]
 ・JTCOからのお知らせ 寄木細工グッズ好評発売中!
 ・編集後記


,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…


【天文】水神の化身『虹』

「伊香保ろの 八尺(やさか)の堰塞(ゐで)に立つ虹(のじ)の 顕 (あら)は
ろまでも さ寝(ね)をさ 寝(ね)ては 」 
(詠み人知らず『万葉集』巻14-3414)

(訳:伊香保の高い堰(せき)の上にくっきりと立つあの虹のように、周りの
人に目につくまでにあの子と一晩中寝て、朝を迎えられるならどんなにいい
だろう。)

今節気、清明の末候は「虹始見(にじ はじめて あらわる=雨の後に虹が出
始める)となっています。虹は朝や夕方の太陽が傾くころ、気中に漂う水の
粒に当たった光が屈折して現れます。気温が上がり、通り雨やにわか雨が過
ぎた後、気中の水分が多くなる季節に出始めるということなのでしょう。

現代では、「七色の虹=希望の象徴」というように考えられていますが、か
つての日本人は虹をどのように捉えていたのでしょうか。

「虹」という文字が意味するところは、「虫=蛟(みずち、雨を降らせる水
神とされている蛇、または龍)」が「工=貫く」というもので、古代の中国
人が虹を「天を貫く蛇(または龍)」に見立てたことに由来しています。虹
に雨はつきものですから、蛇や龍のように長く空にかかる虹を水神になぞら
えたのも自然ですね。

日本でもこの思想は受け継がれ、日本語の「ニジ(古くはヌジ)」という言
葉は、蛇の古語である「ナギ(ナジ)」から来ているという説もあります。
沖縄ではかつて虹のことを 「雨呑み者(アミヌミヤー)」と呼んだのだそ
うです。雨呑み者は赤まだらの蛇の姿をしており、天の泉の水を飲み干して
しまうので、下界に雨が降らなくする旱魃の凶兆とされていました。

蛇や龍が女性を妊娠させて高貴な人を生むという神話は世界中にありますが、
日本でも『古事記』の中に、沼のほとりで寝ていた女に虹のような日の光が
差して女が身ごもり、のちに阿加流比売神(あかるひめのかみ)となる赤い
メノウの玉(日の出の太陽の化身)を産むという話が見られます。

また『日本書紀』にはこんな話があります。伊勢の斎王であった栲幡皇女
(たくはたのひめみこ)が身ごもったいう流言を調査していたところ、皇女
は五十鈴川のほとりで神鏡を土に埋めて自決してしまいます。行方を追って
いた一行の前に大蛇のごとくかかった虹のふもとを掘り返すと神鏡が見つか
り、皇女の腹を割って調べると出てきたのは水と石ころだった-というもの
です。いずれにしても、虹と水(水神である蛟)との関わりを示すものと考
えられます。

「天の架け橋」としての虹は『古事記』の時代からあり、神々がこれを渡っ
て天と地とを自由に行き来すると考えられていました。福井県に残る「天橋
立」の伝説は、イザナギが天に上るために作った橋が横に倒れて天橋立にな
ったというものです。虹は神の国やあの世をつなぐ架け橋であるという思想
も世界各地で見られるようですが、あの掴みどころのない美しさからは、自
然なことといえそうですね。

虹を七色としたのは17世紀のイギリスのニュートンですが、日本で虹が七色
とされるようになったのは西洋科学を採り入れるようになった幕末以降なの
だそうです。奈良時代初期の『常陸国風土記』では赤・青の二色の旗が、平
安時代初期の『日本霊異記』では極楽に延びる五色の雲が虹に喩えられてい
ます。鎌倉時代の『吾妻鏡』では、6月の朝6時ごろに西の空にかかる虹が
「五色の虹(黄色、赤、青、紅梅、もう一度赤)」として描写されています。

かつて水神や神々の世界への架け橋として凶兆と吉兆のいずれの意味も持っ
ていた虹は、時代が下るにつれ次第に畏怖の対象ではなくなっていきました。
それにしても、やはり虹は冒頭の歌のように、古代から虹は明日への希望を
象徴するような心ときめく対象であったことには変わりはないのかもしれま
せんね。


,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

古川祭・起し太鼓
[岐阜県飛騨市](4月19・20日)

今から200年ほど前に始まった気多若宮神社の例祭で、日本三大裸祭りの一
つに数えられます。「神輿行列」と祭りの開始を告げるために打ち鳴らした
といわれる「起し太鼓」、絢爛豪華な9台の「屋台行列」からなり、国の重
要無形民俗文化財にも指定されています。

飛騨市公式観光サイト
http://www.hida-kankou.jp/event/15/article/


,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

寄木細工グッズ好評発売中!

寄木細工のスタイリッシュな手帳/ブックカバー、名刺入れ、パスケース、
発売時よりご好評いただいております。ぜひお店にお越しください!

オンラインショップ『和遊苑』
http://www.piconet.co.jp/jtco/

人気の姫革のグッズも多数取り揃えております。どうぞご利用ください。


,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第55号(2013年清明号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。

今号はかなり遅めの清明号となりましたが、末候の「虹」を取り上げてみま
した。現代の私たちには虹は美しいものとしか映りませんが、昔の人々は雨
やあの世と結びつけていろいろな想像をしたのだなと感心してしまいました。

昨今は国や企業の競争力維持強化のためにクリエイティビティ(創造性)の
重要性が強調されていますが、それは論理性から生まれるのではなく、日常
のふとした幻想の中から生まれるものなのかもしれないと思ったしだいです。
ぼんやり考える時間て結構大事だったりするものですよね。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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