JTCOメルマガ『風物使』
2013年03月26日 配信「桃花に理想郷想う」~ 季節の使い・JTCO『風物使』春分号
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「桃花に理想郷想う」~ 季節の使い・JTCO『風物使』春分号
vol.54 2013年03月26日発行(旧暦 2月15日・如月)
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いている個人/団体/法人様にお送りしています。
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拝啓
各地から例年より早い桜の便りが届く今日この頃、皆さまいかがお過ごしでし
ょうか。花に心浮き立つ中、花冷えの用心として、少し暖かな上着も持って出
かけましょう。
+‥‥+ 2013年春分号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
・今号のテーマ……… 百鬼も払う長寿の象徴『桃の花』
・季節の行事………… 静岡浅間神社・廿日会祭 [静岡県静岡市]
・JTCOからのお知らせ 寄木細工にカードケース・パスケースが登場!
・編集後記
,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…
【植物】百鬼も払う長寿の象徴『桃の花』
「あかざらば千代までかざせ桃の花 花も変わらじ春も絶えねば」
(清原元輔 『後拾遺集』春下128)
(訳:飽きることがないのならば、千年先まで桃の花を髪に飾りましょう。三
千年に一度しか桃が実をつけないように、花も変わらず、春が終わることもな
いのでしょうから。)
前号で取り上げたひな祭りが「桃の節句」と言われる中、新暦ではその時期に
桃の花が咲いていないこともあり、どうしても梅と桜の間に埋もれがちですが、
どうもそれは新暦のせいだけではなかったようです。万葉集では梅の歌は116
首、桜は41首あるのに対し、桃はわずか7首しかなく、同じバラ科で花姿が似
ているにも関わらず、あまり日本人の琴線に触れる花ではなかったのだと言わ
ざるを得ません。
しかしながら、モモの種は縄文時代後期の遺跡からも発掘されており、太古か
ら食用として利用されるとともに、斎串(いぐし)とともに出土するなど祭祀
にも用いられ、日本の歴史とともに歩んできた植物でした。祭祀に用いられた
のはおそらく、中国の思想を輸入したものと思われます。
古代中国では、モモには魔除けの力があると考えられており、その木は仙人の
杖に使われたり、お札(ふだ)に使われたりしていました。冒頭の歌は、仙境
の一つ、崑崙山(こんろんさん)で三千年に一度しか実を結ばないといわれて
いる蟠桃(はんとう=不老不死の霊薬)の故実にちなんだものです。16世紀の
明代に成立した『西遊記』では、孫悟空がこのモモを盗みに大暴れするくだり
があります。
また、日本でも理想郷のことを「桃源郷(武陵桃源)」といいますが、これは
4-5世紀、六朝時代に活躍した詩人、陶淵明の物語『桃花源記』に基づいてい
ます。武陵(湖南省)のある漁師の男が山奥の谷川で桃の花が一面に咲き乱れ
る林に迷い込み、平和な理想郷に辿りつきます。ここで湧き出す水に桃花を浮
かべて飲めば気力が充実し、300年の長寿を授かると考えられていました。
日本では、このような中国思想を引き継いでモモにちなんだ神話や説話が成
立します。『古事記』ではイザナギが黄泉の国から逃げ帰る際、雷神にモモ3個
を投げつけて退散させます。喜んだイザナギは感謝を込めてモモに「オホカム
ヅミノミコト」という名を授けます。また、室町時代以前に成立したとされる
『桃太郎』はあまりにも有名ですね。
祭祀に利用されるなど、モモが神聖視されたにも関わらず桃の花が桜や梅ほど
省みられなかったのは、神聖が故の忌諱だったのか、健康や長寿を託しながら
やはり日本人の感性には永遠より限りある命のほうがしっくり来たからなのか、
今年はそんなことを考えながら桃の花を楽しんでみたいものです。
,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
静岡浅間神社・廿日会祭(はつかえさい)例大祭
[静岡県静岡市](4月1~5日)
今川時代以前より駿河の大祭とされ、450年以上の歴史のあるお祭りです。稚
児行列・山車曳き揃え、稚児舞楽奉納など見どころがたくさんあります。
静岡浅間神社ホームページ
http://www.shizuokasengen.net/newpage14.htm
,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
寄木細工にカードケース・パスケースが登場!
スタイリッシュでご好評をいただいている寄木細工の商品に、カードケース・
パスケースが登場しました。ご進学・ご入社用のギフトにもぴったりです。ど
うぞご利用ください。
オンラインショップ『和遊苑』
http://www.piconet.co.jp/jtco/
近日、洗練された印伝小物のお取り扱いも開始いたします。どうぞお楽しみ
に!
,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
『風物使』第54号(2013年春分号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。
日本人が内向きになったと言われて久しいですが、同じ東アジアの中国や韓国
の友人たちと話していても、「なぜ日本人は海外に出ても日本に戻るのか」と
聞かれることがあります。逆になぜ彼らが世界を動き回るのかと聞くと、「わ
れわれはいつもほかにどこかよいところがある筈だと思っているからだ」との
答えでした。
今号の「桃源郷」は、西欧で言う「ユートピア」と異なり、「理想社会の実現
を諦める」という考えに基づくいわば現実逃避の思想なのだそうです。もし日
本人が世界の流れから逃避して日本に閉じこもっているのでなければ、少しで
も自国を理想社会に近づけるために、それぞれが努力をしたいものですね。
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【季節の使い・JTCO『風物使』】
発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日
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・今号のテーマ……… 百鬼も払う長寿の象徴『桃の花』
・季節の行事………… 静岡浅間神社・廿日会祭 [静岡県静岡市]
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・編集後記
,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…
【植物】百鬼も払う長寿の象徴『桃の花』
「あかざらば千代までかざせ桃の花 花も変わらじ春も絶えねば」
(清原元輔 『後拾遺集』春下128)
(訳:飽きることがないのならば、千年先まで桃の花を髪に飾りましょう。三
千年に一度しか桃が実をつけないように、花も変わらず、春が終わることもな
いのでしょうから。)
前号で取り上げたひな祭りが「桃の節句」と言われる中、新暦ではその時期に
桃の花が咲いていないこともあり、どうしても梅と桜の間に埋もれがちですが、
どうもそれは新暦のせいだけではなかったようです。万葉集では梅の歌は116
首、桜は41首あるのに対し、桃はわずか7首しかなく、同じバラ科で花姿が似
ているにも関わらず、あまり日本人の琴線に触れる花ではなかったのだと言わ
ざるを得ません。
しかしながら、モモの種は縄文時代後期の遺跡からも発掘されており、太古か
ら食用として利用されるとともに、斎串(いぐし)とともに出土するなど祭祀
にも用いられ、日本の歴史とともに歩んできた植物でした。祭祀に用いられた
のはおそらく、中国の思想を輸入したものと思われます。
古代中国では、モモには魔除けの力があると考えられており、その木は仙人の
杖に使われたり、お札(ふだ)に使われたりしていました。冒頭の歌は、仙境
の一つ、崑崙山(こんろんさん)で三千年に一度しか実を結ばないといわれて
いる蟠桃(はんとう=不老不死の霊薬)の故実にちなんだものです。16世紀の
明代に成立した『西遊記』では、孫悟空がこのモモを盗みに大暴れするくだり
があります。
また、日本でも理想郷のことを「桃源郷(武陵桃源)」といいますが、これは
4-5世紀、六朝時代に活躍した詩人、陶淵明の物語『桃花源記』に基づいてい
ます。武陵(湖南省)のある漁師の男が山奥の谷川で桃の花が一面に咲き乱れ
る林に迷い込み、平和な理想郷に辿りつきます。ここで湧き出す水に桃花を浮
かべて飲めば気力が充実し、300年の長寿を授かると考えられていました。
日本では、このような中国思想を引き継いでモモにちなんだ神話や説話が成
立します。『古事記』ではイザナギが黄泉の国から逃げ帰る際、雷神にモモ3個
を投げつけて退散させます。喜んだイザナギは感謝を込めてモモに「オホカム
ヅミノミコト」という名を授けます。また、室町時代以前に成立したとされる
『桃太郎』はあまりにも有名ですね。
祭祀に利用されるなど、モモが神聖視されたにも関わらず桃の花が桜や梅ほど
省みられなかったのは、神聖が故の忌諱だったのか、健康や長寿を託しながら
やはり日本人の感性には永遠より限りある命のほうがしっくり来たからなのか、
今年はそんなことを考えながら桃の花を楽しんでみたいものです。
,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
静岡浅間神社・廿日会祭(はつかえさい)例大祭
[静岡県静岡市](4月1~5日)
今川時代以前より駿河の大祭とされ、450年以上の歴史のあるお祭りです。稚
児行列・山車曳き揃え、稚児舞楽奉納など見どころがたくさんあります。
静岡浅間神社ホームページ
http://www.shizuokasengen.net/newpage14.htm
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スタイリッシュでご好評をいただいている寄木細工の商品に、カードケース・
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うぞご利用ください。
オンラインショップ『和遊苑』
http://www.piconet.co.jp/jtco/
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に!
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『風物使』第54号(2013年春分号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。
日本人が内向きになったと言われて久しいですが、同じ東アジアの中国や韓国
の友人たちと話していても、「なぜ日本人は海外に出ても日本に戻るのか」と
聞かれることがあります。逆になぜ彼らが世界を動き回るのかと聞くと、「わ
れわれはいつもほかにどこかよいところがある筈だと思っているからだ」との
答えでした。
今号の「桃源郷」は、西欧で言う「ユートピア」と異なり、「理想社会の実現
を諦める」という考えに基づくいわば現実逃避の思想なのだそうです。もし日
本人が世界の流れから逃避して日本に閉じこもっているのでなければ、少しで
も自国を理想社会に近づけるために、それぞれが努力をしたいものですね。
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【季節の使い・JTCO『風物使』】
発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日
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TEL/FAX: 03-3431-5030
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