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JTCOメルマガ『風物使』

2012年11月21日 配信
「幻に川の氷魚見る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』小雪号

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  「幻に川の氷魚見る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』小雪号
    vol.47 2012年11月21日発行(旧暦 10月08日・神無月)

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拝啓
北国から遅い初雪の便りが届き始めた今日この頃、皆さまいかがお過ごし
でしょうか。冬の衣類や暖房器具を用意して、そろそろ本格的な冬支度を
始めましょう。

+‥‥+ 2012年小雪号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ……… 「旬」の由来となった魚:『氷魚(ひお)』
 ・季節の行事………… 上戸の獅子舞 [茨城県潮来市]
 ・JTCOからのお知らせ 新規追加・全国の伝統文化・伝統工芸
 ・編集後記


,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…


【食物】「旬」の由来となった魚:『氷魚(ひお)』

「月清み 瀬々の網代に寄る氷魚は 玉藻にさゆる氷なりけり」
(源経信(つねのぶ)『金葉集』)

(訳:澄んだ冬の月が照らす川の網代にきらきらと寄りくる氷魚と思ったのは、
川藻に光る氷だったのですね。)

晩秋から冬に移り変わり本格的な冬支度がしたくなる季節、そろそろ琵琶湖
名物の氷魚の水揚げが始まります。氷魚とは、川を下らず一生を琵琶湖で終
える鮎の稚魚で、かつては増水した湖水とともに近隣の河川へ押し流され、
宇治川などでは網代(=あじろ、「網の代用」という意味で、竹や木などを
編んで作った魚を獲る装置)を使って氷魚を獲るのが冬の風物詩でした。

『枕草子』第23段で「春の網代(春になっても川に残っている網代)」が
「すさまじきもの(興ざめなもの)」の一つとして挙げられているように、
網代で氷魚を獲る風景は、京都の晩秋から冬を象徴するものとして欠かせな
いものであったようです。また、古典文学では季節柄物悲しく、寒々しい情
景を描写する場面にしばしば登場します。源氏物語の第45帖「橋姫」では、
都落ちした源氏の弟、八の宮が住まう鄙びた山荘の風景を「網代のけはひ近
く、耳かしがましき川のわたり(近くの網代に寄せるせせらぎが耳につく川
のほとり)」と描写しています。また、主人公の薫は川霧にけむる宇治川で
氷魚を獲る民衆の姿を見て、人は誰しもこのようなはかないなりわいで生き
る存在なのだと世の無常を感じ入ります。

このように、秋冬の風物詩として深く親しまれていた風景から揚がった氷魚
はまさに「旬」の魚として宴に供されたり、下賜物として珍重されました。
平安初期には嵯峨天皇が神泉苑で催した重陽の節会(せちえ)の歌会のあと、
菊酒と氷魚を振舞ったとあります。旧暦9月9日の重陽の節会は今で言う10月
下旬にあたりますから、今よりも気温が低かったであろうかつての京都では、
この時期はすでに氷魚の季節だったのですね。

ところで「旬」とはもともと「10日」を表すことばで、古くは1日・11日
・21日の毎旬の初めと、16日の月の後半の初めに宮中で天皇が臣下を集めて
催す政務会議と宴のことを「旬」と呼びました。平安中期以降、この儀式は
「孟夏の旬」と呼ばれる4月1日と「孟冬の旬」10月1日だけに催されるよう
になり(「二孟の旬」)、孟夏は扇、孟冬には氷魚が下賜されました。こ
のことから物事や食物の最盛期を「旬」と呼ぶようになったのです。普段何
気なく使っている「旬」という言葉が、このようなところに由来するのは意
外だったのではないでしょうか。

今では氷魚の水揚げは少なくなり、琵琶湖のみでの漁となっているようで、
冬の網代の風景は望むべくもなくなりました。貴重な「旬」の氷魚を楽し
むだけでなく、川霧の立ち込める川のほとりで、かつての網代木の風景を思
いながら、より深く冬の風景を味わってみませんか。


,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……


国神神社 上戸の獅子舞
[茨城県潮来市](11月23日)

茨城県内では数少ない貴重な獅子舞が潮来市に県指定無形民俗文化財として
保存されています。毎年、11月23日、国神神社の祭礼に奉納されるこの
獅子舞は、雄獅子、雌獅子、中獅子の3頭からなり、五穀豊穣や雨乞いを祈
ったのがはじまりとされています。

[茨城県潮来市公式ホームページ]
http://www.city.itako.lg.jp/index.php?code=1352


,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……


新規追加・全国の伝統文化・伝統工芸

前号から以下の伝統文化・伝統工芸が追加されました。相撲の原型と言われ
る「ねっていずもう」、暗闇で笛の音とともに「オホホ」と笑う酔笑人(え
ようど)神事など、珍しいお祭りをぜひチェックしてみてください。

お走り祭り
http://www.jtco.or.jp/japanese-culture/?act=detail&id=63&p=0&c=20

ねっていずもう
http://www.jtco.or.jp/japanese-culture/?act=detail&id=64&p=0&c=19

酔笑人(えようど)神事
http://www.jtco.or.jp/japanese-culture/?act=detail&id=62&p=0&c=22

清水焼
http://www.jtco.or.jp/japanese-crafts/?act=detail&id=194&p=26&c=2

秩父銘仙
http://www.jtco.or.jp/japanese-crafts/?act=detail&id=193&p=11&c=16


,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第47号(2012年小雪号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。

業務多忙によりしばらくメルマガの発行をお休みしておりまして誠に申し訳
ありませんでした。今号より再開いたします。

以前源氏物語を読んでいて、なぜかとても氷魚の出てくるくだりが心に残っ
ていました。時代とともに風景や風土、風物詩は移り変わるとはいえ、見た
ことはなくてもどこか郷愁や、そこに存在した空気を感じさせる描写という
ものはあるものだと思います。これは見たことのないものを想像できる人間
の能力なのか、それを感じさせる作家の手腕なのか。おそらくそのどちらも
なのでしょうね。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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