JTCOメルマガ『風物使』
2012年06月11日 配信「紫陽花に雨垂れ落つ」~ 季節の使い・JTCO『風物使』芒種号
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「紫陽花に雨垂れ落つ」~ 季節の使い・JTCO『風物使』芒種号
vol.39 2012年06月11日発行(旧暦 04月22日・卯月)
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拝啓
あじさいが色鮮やかに咲き誇る今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょう
か。蒸し暑く雨の多くなる時期、さわやかな色柄のものを生活に取り入れて
心も涼やかに過ごしましょう。
+‥‥+ 2012年芒種号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
・今号のテーマ……… 可笑しく舞い踊る勇者:『カマキリ』
・季節の行事………… 率川神社 三枝祭 [奈良県奈良市]
・JTCOからのお知らせ 「和遊苑」で夏特集開催中です
・編集後記
,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…
【生物】可笑しく舞い踊る勇者:『カマキリ』
「をかしく舞ふものは 巫(こうなぎ) 小楢葉(こならは)車の筒(ど
う)とかや 平等院なる水車(みずぐるま)囃せば舞ひ出づる蟷螂(いぼう
じり) 蝸牛(かたつむり)」
(『梁塵秘抄』巻2 331)
(訳:おもしろく舞うものは、巫女、小楢葉(コナラ=どんぐりの木の葉)、
車の筒(どう=車軸の中心部の円木)などではないでしょうか。平等院の水
車、囃せば舞い出てくるカマキリやカタツムリなども。)
今節気、芒種の初候(最初の5日間)には、「螳螂生(とうろうしょうず=
カマキリが生まれ出る」という名称があります。現代の私たちの感覚では、
肉食昆虫として獰猛なイメージがあるカマキリですが、昔の人にはどう捕ら
えられていたのでしょうか。
カマキリは捕食の際にカマを胸の前に揃えてそっと立つ姿が、洋の東西を問
わず祈りを連想させたようで、日本の方言では「拝み虫」と呼ぶ地方が多く、
英語でもカマキリは"Praying Mantis(拝み虫)"と呼びます。田畑の害虫を
捕食するため、農村では益虫であり、そのためかアフリカなど世界の民話や
伝説でも善玉として登場することが多いのだそうです。
冒頭の歌が収められている『梁塵秘抄』は、「今様」と呼ばれる当時流行し
た歌を好んだ後白河法皇が平安末期に編纂した歌謡集です。その中に登場す
るカマキリは、今度はお坊さんや尼さんではなく踊り手として愉快に舞い踊
っています。カマキリが舞い踊る姿は現代の私たちにはあまり想像ができな
いのですが、おそらくカマを振り上げたり下ろしたりする姿が踊っているよ
うに見えるということなのでしょう。なお、ここにあるとおり「蟷螂」は古
くは「いぼうじり(=いぼむしり)」と読みましたが、これはカマキリにイ
ボをかじらせるとイボが取れるという俗信があるからなのだそうです。効果
のほどはわかりませんが、古名として定着していたことを考えると実際にや
ってみた人がいたのでしょうか。
また、無駄な抵抗をすることを「カマキリの斧」ということがありますが、
これは中国の古典に基づいています。昔、斉という国の荘という王が狩りに
出たとき、自分の車に向かってカマを振り上げている虫に出くわします。御
者に「これは何と言う虫だ」と尋ねると、御者は言います。「これはカマキ
リといい、進むことは知っていますが退くことを知りません。自分の力量を
省みずに敵を軽く見る虫でございます。」すると荘公は言います。「この虫
が人間であったなら、必ずや天下の勇者になるに違いあるまい。」勇武に長
けた者は、この王のために死力を尽くそうと奮い立ったというお話です。
京都の祇園祭りで巡行する山鉾には「蟷螂山(とうろうやま)」というもの
があり、唯一天辺に据えられたカマキリの体と御所車の車輪が動くからくり
が施されていて古くから人気があります。この山鉾は応仁の乱から遡ること
約一世紀の永和2(1376)年、足利義詮軍と戦い戦死した四条隆資(たかす
け)の武勇を中国の故事にちなみ、四条家の御所車に蟷螂を乗せて巡行した
のが始まりだということです。
静かにお祈りを捧げたり愉快に踊ったり、はたまた勇敢に敵に立ち向かった
りと歴史の中で大活躍のカマキリですが、それだけ昔から日本人にとって身
近で興味を惹かれる存在だったのでしょう。この夏野外でカマキリに出会っ
たあなたは、彼らの立ち居振る舞いに何を感じるのでしょうか。
,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
率川(いさがわ)神社 三枝祭(さいくさのまつり)
[奈良県奈良市](6月17日)
大宝元年(701年)制定の「大宝令」には国家の祭祀として制定されていたと
いう由緒あるお祭りです。ヒメタタライスズヒメがササユリの咲き誇る狭井
川のほとりにお住まいになっていたという故事にちなみ、酒樽をササユリで
飾って神前にお供えします。ササユリを持って舞う巫女さんの舞や、装束で
身を飾った女性や稚児の巡行もあでやかです。
率川神社公式サイトの情報:
http://www.isagawa-jinja.jp/saitenn.html
,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
オンラインショップ『和遊苑』で夏特集開催しています
これからの暑い時期に必須の扇子を入れて携帯したい上品な扇子ケースや、
夏らしい色柄の商品を取り揃えております。
オンラインショップ『和遊苑』
http://www.piconet.co.jp/jtco/
,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
『風物使』第39号(2012年芒種号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。
今号のカマキリの話だけに限らず、昔の人は自然の風物から豊かな発想が
できたのだなといつも感心してしまいます。動植物が今よりも身近だったと
いうことだけでなく、おそらく感性もより豊かだったのだと思います。自然
の風物をより近くに引き寄せて暮らしたいものだと願う今日この頃です。
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【季節の使い・JTCO『風物使』】
発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日
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〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
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vol.39 2012年06月11日発行(旧暦 04月22日・卯月)
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・今号のテーマ……… 可笑しく舞い踊る勇者:『カマキリ』
・季節の行事………… 率川神社 三枝祭 [奈良県奈良市]
・JTCOからのお知らせ 「和遊苑」で夏特集開催中です
・編集後記
,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…
【生物】可笑しく舞い踊る勇者:『カマキリ』
「をかしく舞ふものは 巫(こうなぎ) 小楢葉(こならは)車の筒(ど
う)とかや 平等院なる水車(みずぐるま)囃せば舞ひ出づる蟷螂(いぼう
じり) 蝸牛(かたつむり)」
(『梁塵秘抄』巻2 331)
(訳:おもしろく舞うものは、巫女、小楢葉(コナラ=どんぐりの木の葉)、
車の筒(どう=車軸の中心部の円木)などではないでしょうか。平等院の水
車、囃せば舞い出てくるカマキリやカタツムリなども。)
今節気、芒種の初候(最初の5日間)には、「螳螂生(とうろうしょうず=
カマキリが生まれ出る」という名称があります。現代の私たちの感覚では、
肉食昆虫として獰猛なイメージがあるカマキリですが、昔の人にはどう捕ら
えられていたのでしょうか。
カマキリは捕食の際にカマを胸の前に揃えてそっと立つ姿が、洋の東西を問
わず祈りを連想させたようで、日本の方言では「拝み虫」と呼ぶ地方が多く、
英語でもカマキリは"Praying Mantis(拝み虫)"と呼びます。田畑の害虫を
捕食するため、農村では益虫であり、そのためかアフリカなど世界の民話や
伝説でも善玉として登場することが多いのだそうです。
冒頭の歌が収められている『梁塵秘抄』は、「今様」と呼ばれる当時流行し
た歌を好んだ後白河法皇が平安末期に編纂した歌謡集です。その中に登場す
るカマキリは、今度はお坊さんや尼さんではなく踊り手として愉快に舞い踊
っています。カマキリが舞い踊る姿は現代の私たちにはあまり想像ができな
いのですが、おそらくカマを振り上げたり下ろしたりする姿が踊っているよ
うに見えるということなのでしょう。なお、ここにあるとおり「蟷螂」は古
くは「いぼうじり(=いぼむしり)」と読みましたが、これはカマキリにイ
ボをかじらせるとイボが取れるという俗信があるからなのだそうです。効果
のほどはわかりませんが、古名として定着していたことを考えると実際にや
ってみた人がいたのでしょうか。
また、無駄な抵抗をすることを「カマキリの斧」ということがありますが、
これは中国の古典に基づいています。昔、斉という国の荘という王が狩りに
出たとき、自分の車に向かってカマを振り上げている虫に出くわします。御
者に「これは何と言う虫だ」と尋ねると、御者は言います。「これはカマキ
リといい、進むことは知っていますが退くことを知りません。自分の力量を
省みずに敵を軽く見る虫でございます。」すると荘公は言います。「この虫
が人間であったなら、必ずや天下の勇者になるに違いあるまい。」勇武に長
けた者は、この王のために死力を尽くそうと奮い立ったというお話です。
京都の祇園祭りで巡行する山鉾には「蟷螂山(とうろうやま)」というもの
があり、唯一天辺に据えられたカマキリの体と御所車の車輪が動くからくり
が施されていて古くから人気があります。この山鉾は応仁の乱から遡ること
約一世紀の永和2(1376)年、足利義詮軍と戦い戦死した四条隆資(たかす
け)の武勇を中国の故事にちなみ、四条家の御所車に蟷螂を乗せて巡行した
のが始まりだということです。
静かにお祈りを捧げたり愉快に踊ったり、はたまた勇敢に敵に立ち向かった
りと歴史の中で大活躍のカマキリですが、それだけ昔から日本人にとって身
近で興味を惹かれる存在だったのでしょう。この夏野外でカマキリに出会っ
たあなたは、彼らの立ち居振る舞いに何を感じるのでしょうか。
,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
率川(いさがわ)神社 三枝祭(さいくさのまつり)
[奈良県奈良市](6月17日)
大宝元年(701年)制定の「大宝令」には国家の祭祀として制定されていたと
いう由緒あるお祭りです。ヒメタタライスズヒメがササユリの咲き誇る狭井
川のほとりにお住まいになっていたという故事にちなみ、酒樽をササユリで
飾って神前にお供えします。ササユリを持って舞う巫女さんの舞や、装束で
身を飾った女性や稚児の巡行もあでやかです。
率川神社公式サイトの情報:
http://www.isagawa-jinja.jp/saitenn.html
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オンラインショップ『和遊苑』で夏特集開催しています
これからの暑い時期に必須の扇子を入れて携帯したい上品な扇子ケースや、
夏らしい色柄の商品を取り揃えております。
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『風物使』第39号(2012年芒種号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。
今号のカマキリの話だけに限らず、昔の人は自然の風物から豊かな発想が
できたのだなといつも感心してしまいます。動植物が今よりも身近だったと
いうことだけでなく、おそらく感性もより豊かだったのだと思います。自然
の風物をより近くに引き寄せて暮らしたいものだと願う今日この頃です。
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【季節の使い・JTCO『風物使』】
発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日
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【発行元】
特定非営利活動法人 日本伝統文化振興機構(JTCO)
〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
Webサイト: http://www.jtco.or.jp/
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