マグロの話 その1: マグロの兄弟
2018/04/11マグロの話 その1: マグロの兄弟

にっぽんおさかな文化あれこれ 第六回
好評をいただいてております「食」に関するコラムシリーズ、第二弾の「魚」!「にっぽんおさかな文化あれこれ 第五回」では江戸の魚河岸とその発展についてご紹介いたしました。第六回は、新たな話題、我々にも馴染み深い魚「マグロ」についてお話ししてまいります。
マグロの話 その1: マグロの兄弟
皆さん、「好きな魚は何ですか?」「よく食べる魚は何ですか?」「お寿司・お刺身で食べたい魚は何ですか?」
好きな魚・食べたい魚としては、マグロ・タイ・サーモン・エビ・アワビ・イクラなどが上位にあげられると思います。
この中で私は生で食べられる「マグロ」が魚の王様だと思います。そこで今回から数回マグロについて纏めてみようと思います。
マグロは スズキ目--サバ亜目--サバ科 の中で マグロ属 として分類されており、食用として6~8種あると言われています。
1) クロマグロ -- マグロの中のマグロ・最高級のマグロ
(別:本マグロ・シビ・タイヘイヨウクロマグロ)〈幼:メジ・ヨコワ・チュウボウ〉
マグロのなかのマグロ、日本では(ということは世界でも)最高級のマグロといわれており、正月の築地での初セリで最高値を付け話題になるのがこのマグロです。
北半球の温帯海域に生息し、他のマグロにあるような黄色味がなく真っ黒な魚体が特徴です。
最近形態的にもDNAでも大西洋のクロマグロは亜種、別種という説が多数になり「タイセイヨウクロマグロ」「タイヘイヨウクロマグロ」と分けることが多くなりました。
このクロマグロの絶滅の危惧から、中西部太平洋まぐろ類委員会が太平洋クロマグロについて漁獲制限をしています。
また、最高級のマグロの資源不足ということから近年養殖が盛んになり、ついに近畿大学が民間企業と共同開発に成功したのが完全養殖の「近大マグロ」です。
2) ミナミマグロ -- 脂が乗って・赤身が鮮やかな高級マグロ
(別:インドマグロ・ゴウシュウマグロ)
南半球だけに分布しており、アブラがあり赤身がきれいなことからクロマグロの次に評価されており、特に寿司屋さんで使用されています。また、高級マグロということで、クロマグロと同様ニュージーランド・オーストラリアで養殖が行われています。
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3) メバチマグロ -- 目がパッチリ・生で最も食べられているマグロ
(別:バチ・ダルマ)
世界の熱帯・温帯海域に生息しており、その資源量は豊富でマグロのなかでの漁獲量・消費量はキハダマグロと並んでトップです。 目が大きいことから目鉢=メバチと呼ばれ、赤身がきれいで色が長時間保つので、刺身や寿司で一番食されているマグロです。
4) キハダマグロ -- 赤身がピンク・関西以西で人気のマグロ
(別:キワダ・キメジ)
温帯・熱帯の表層を回遊するマグロでメバチと同様資源量が豊富なマグロです。背びれ・尾ひれが黄色になり、赤身は他のマグロに比べ薄く、寿司種としては不向きといわれています。江戸前寿司の本場東京をはじめ関東では特にその傾向が強いのですが、関西・西日本では脂肪がほとんどなく上品な味わいであることで人気があります。
5) ビンナガマグロ -- ビントロの名で回転すしで有名になったマグロ
(別:ビンチョウ・トンボ)
世界中の亜熱帯・温帯海域に分布するが日本海では見当たらないマグロです。胸鰭(むなびれ、鬢とも言う)が長いのが特徴で名前の由来でもあります。
赤身のないことから寿司・刺身など生食ではほとんど食されていませんでしたが、回転寿司マーケットで冷凍の薄っすらとアブラのある寿司を「ビントロ」という名前で提供したところ、人気が高まりスーパーの鮮魚売り場で刺身用柵として販売されるようになりました。
また、味わいが鶏肉のササミに似ているため欧米人には好まれることから、静岡の缶詰メーカーが「シーチキン」の商標で缶詰を製造しいろいろな料理にも使われています。
6) コシナガマグロ -- 知っている人がほとんどいないマグロ
インド洋、西太平洋に生息し夏場には日本まで回遊してくるが、ほとんど入荷されず、したがって入荷した地域以外にはでまわらないようで、全くといっていい程知られていません。
また、1m前後とマグロとしては小さいので、市場関係者もコシナガとわからずメジとかヨコワとして扱われているのではといった話もあります。
7) クロヒレマグロ -- タイセイヨウクロマグロとは別種の小型マグロ
(別:タイセイヨウマグロ)
西部大西洋に生息する小型のマグロで、尾部が黒いのが特徴です。タイセイヨウマグロの名前で表示されていましたが、1)で述べましたようにクロマグロを太平洋・大西洋に分けるようになり、「タイセイヨウクロマグロ」との表示多くなってきたので混同され易くなり、その特徴から「クロヒレマグロ」と表示するようになりました。
8) タイセイヨウクロマグロ -- クロマグロの中で大西洋に生息するマグロ
近年寿司・刺身という日本の伝統食が世界に広まる中で、最高の食材であるクロマグロの需 要が高まり、一方で資源が枯渇し絶滅の危機を防ごうと世界中で調査・対策を行っている中で、大西洋のクロマグロは太平洋のクロマグロの亜種あるいは別種でないかという考え方がでてきました。
そのため、現時点ではまだ1) のクロマグロにこの「タイセイヨウクロマグロ」を含めて表現・表示されていることがほとんどです。
大西洋での漁場は、アメリカ・カナダの東海岸、メキシコ湾、地中海のスペイン、マルタ、クロアチアといったところです。
また、「タイヘイヨウクロマグロ」と同様に減少傾向にあることから、大西洋マグロ類保存国際委員会が漁獲制限をしており、若干回復の傾向がみられるようです。
マグロと一口に言っても、食用マグロの種類は現時点では上述のように8種類となります。このコラムでは、タイヘイヨウとタイセイヨウのクロマグロを合わせて1種類とし、6) のコシナガマグロと7) のクロヒレマグロは日本での消費がないということから、これからは5種類のマグロで表現していきます。
次回はマグロの親戚となる「カツオ」「カジキ」類を整理してみようと思います。
【参考文献】
カラー完全版(2002)『さかなの目利き食通事典』講談社
厳選100種(2001)『[食材]魚 ハンドブック』池田書店
冨岡一成(2016)『江戸前魚食大全―日本人がとてつもなくうまい魚料理にたどりつくまで』草思社
【参考サイト】(2018年3月16日アクセス)
マグロの種類
マグロの種類って一体何種類あるの?
近大マグロ-Wikipedia
マグロ養殖の現状
まぐろの世界を知る
マグロ通 マグロ豆知識
さしみ惣菜としては最高級魚のひとつクロマグロの学名はThunnus thynnusです
執筆者: 食いしん坊親爺TAKE