NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。

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光り輝くものと伝統

2014/10/01
光り輝くものと伝統

皆様は、「工場」と聞いてどのような物事を連想しますか。
「物を作っているところ」「大きな機械や建物がある場所」など、十人十色、様々なイメージがあるでしょう。かく言う私は、「美しく輝く場所」というイメージです。工場は、美しいのです。そして、キラキラに輝いています。日が暮れて、辺りが暗くなった頃、その答えの意味が分かります。

皆様は、「工場夜景」をご存じでしょうか。「工場夜景」とは、文字通り、工場地帯の夜景のことです。今、この工場夜景が、巷でひそかなブームとなっているのです。フォトコンテストが開催されたり、工場地帯の周りをクルージングしたり、プロのカメラマンが撮影した写真集が発売されたりと、様々な方面の動きも活発なのです。
私自身、夜景やイルミネーションはもともと好きで、よく観に行っていましたが、それらは「観る」ということが目的で作られたものであります(夜景は、それを見るための公園や展望台などが「観る」目的で作られています)が、工場夜景は、「観る」ではなくそこに「在る」べくして輝く光なのです。工場とは、普段、そこで誰かが働き、なにかを作っている労働の場です。夜に光る輝きの下で、だれかが働いているのです。そんな、場所だからこそ、さらに光の美しさを引き立てているのだな、と思います。

日本には、「工場夜景」以外にも、輝く美しいものが存在します。
それが、「お祭り」です。夜に開催されるお祭りや、火祭りなどは、昔から多くの人々に愛され続けて感動を与えてきた、夜景を楽しむお祭りも、「在る」べくして輝く光なのではないでしょうか。

当サイト内の伝統文化館でご紹介させていただいている、「吉田の火祭」。国に重要無形民俗文化財として指定されている、山梨県富士吉田市のお祭りです。道に並べられた大きな松明に火を灯します。松明の周りには囲いもなく、すぐ隣を歩く事ができるので、火の粉を浴びることもできます。当日は、松明を立てるところも見学できますし、道なりにはたくさんの露店も出ていますので、とても楽しいお祭りです。
電気で光るものとはまた違った魅力を持つのが、火です。火というものは、時に全てを焼き尽くすほどの脅威にもなり得ますが、時にはその色と温度で私たちに寄り添うようにして温めてくれます。太古の昔から、火と人間は切っても切り離せないものとして共存してきました。食べ物や体を温めるために命をつなぎとめる役割を果たす一方で、なにもかもを焼き尽くし命を奪っていくこともあります。そんな、「安心」と「危険」という、正反対の物が表裏一体となった存在だからこそ、聖なるものとして祀られ、昔から引き継がれてきたのでしょう。

電気にしても火にしても、光というものは、写真やテレビで見るより、自分の目で見るのが一番美しく見えるものです。ぜひ、ご近所にお住まいの方、または旅行を計画中の方は、工場夜景や、光を使ったお祭りを堪能してみてください。


2014/10/01 kan