NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。

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時を超えて生きる自然

2014/09/01
時を超えて生きる自然


江戸時代に、出羽13大名の参勤交代や商人ら旅人の往来でにぎわった七ケ宿町の旧街道「山中七ケ宿街道」を舞台に24日、第29回「わらじで歩こう七ケ宿」(町、町観光協会主催)が行われた。
 県内外の5~85歳の約570人が参加し、参勤交代を再現した大学生のほか、お姫さま姿、股旅姿の人もいた。峠田地区のみやぎ蔵王七ケ宿スキー場を出発し、関地区の町役場広場までの約11キロの道のりを、自然を満喫しながらのんびりと歩いた。
 この日は暑かったものの、街道沿いではススキの穂がさわやかな風に揺れて、真っ白なソバの花が咲き、初秋の気配も。途中に設けられた茶屋では地元住民から麦茶や漬物のもてなしを受けるなど、旧街道の旅を楽しんだ。【豊田英夫】

引用 ― わらじで歩こう七ケ宿:旧街道をのんびりと自然満喫 県内外から570人参加 /宮城



自然豊かな道を散歩するイベントというのは、気候のいい春や秋に行うものとばかり思っていました。「山中七ケ宿街道」は、紅葉が有名な場所らしいのですが、夏の暑い日に自然の風と日差しを浴びて歩くのも、とても風情があって良いな、と思いました。真っ赤に染まった木々たちではなく、日差しをたくさん浴び生き生きとした植物や、真っ白な雲とまぶしい青空のコントラストは、夏にしか見れない自然の一面ですね。
また、江戸時代に多くの人々が行きかった道を、ジャージではなく当時の人たちと同じ服装をして、スニーカーではなくわらじで歩くことで、何気なく吹く風や照りつける太陽も、いつもと違う、新鮮なものに感じるのではないでしょうか。それに、地元の方のおもてなしも、疲れた体を癒し、心をあたためてくれます。地元の方たちが普段見ている当たり前の景色を、新しいものとして受け入れ感動するというのは、なんだか不思議です。

日本人は、昔から自然を楽しみ、そして癒され、大切にしてきました。
「お花見」「花火大会」「紅葉狩り」「雪まつり」など、四季折々のイベントも多数行われています。そんな、季節を楽しみ感じる物事の中でも、「俳句」は特に自然を大切にしているように感じます。
「俳句」には、「季語」という季節の単語を必ず一つ詠むのが作法となっています。「季語」には、特別なルールはさほどなく、自分の身の回りにあるもので、その単語を見て季節が分かるものなら大丈夫だそうです。例えば、「夏」であれば、暑い日を過ごすための必須アイテムである「うちわ」や、お盆の時期に渋滞情報などで毎年話題になる「帰省」などがそうです。昔からある道具や、漢字やひらがなではいけないというわけではなく、「サーフィン」や「クーラー」などのカタカナも季語になるそうです。

「俳句」というものは、様々な言い回しと表現が可能な日本語と、常に季節を肌で感じ、時期に合わせた食べ物やイベントを楽しんでいる日本人の精神がるからこそ、成り立つものではないでしょうか。
かの有名な俳人、松尾芭蕉の詠んだ「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」という句。「何という静けさだ。その中で岩に染み通っていくような蝉の声が、いよいよ静けさを強めている」という意味だそうです。うるさいはずの蝉の鳴き声を、静かだと表現するのは、凡人には到底思いつきませんが、ニュアンスは伝わってきますし、この句の意味も分かるような気がします。蝉の鳴き声しか聞こえない山奥で、大きな岩が佇み、その岩に自然の音がしみ込んでいる情景が浮かびます。

約300年に生きた人が感じたことが、現代に生きる人間にも伝わるということは、今も昔も、人々が自然を愛し、多く触れてきており、また、自然が長い年月、姿を変えずに生きてきているからではないでしょうか。
この、「わらじで歩こう七ケ宿」のような、自然を愛で、直接接する事のできるイベントはとても魅力的だと思いました。
もうすぐ紅葉の季節です。行楽地に出かけて、自然をめいいっぱい感じて、癒しの空間で一句詠んでみる、というのも良いのではないでしょうか。


2014/09/01 kan