NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。

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「快適」の向かう先

2013/08/26
「快適」の向かう先

最近読んだ吉田兼好著の「徒然草」、その第五十五段に面白いエッセイがありました。
「家の作りやうは、夏をむねとすべし。…」で始まる住居論です。
鎌倉・南北朝時代を京都に生きた兼好法師による快適な家づくり指南は、「家は夏に快適に過ごせるように建てるべし。」という内容でした。やはり盆地京都の強烈な暑さがこたえていたのでしょうか。

今や各住宅にエアコンが設置され、「高気密・高断熱」で、暑さ寒さ何のその!という快適な室内空間をボタン一つで実現できます。

エアコンのない時代に生きた先人たちは、町屋の坪庭による通風の確保、深い軒による直射の回避、夏用建具によるインテリアの最適化などなど、様々な工夫で夏の室内を涼しく快適に過ごしてきました。それらは外の自然を上手に室内に取り込み、生かすことを旨としています。
「縁側」という外でも内でもない曖昧な空間が誕生したのも、こうした外部の自然との関わり方が関係しているとも考えられます。

さて、先ほども述べましたように、現在の快適さは「高気密・高断熱」により質を増します。しかしそれは一方で外の自然との決別とも言えます。快適ですので文句は言えませんが、自然との共生が上手だった日本人としては少し寂しいですね。

そんな中、最近では「地中熱利用」という地下からの夏は涼しく冬は暖かい風をエアコン代わりに使用するエコなモデルも増えてきているようです。こうして新しいフェーズに突入した「快適さ」の追及は、今後さらに「自然を上手に取り込む」方向へ進んでいくことで、本当の意味で環境負荷の少ない「快適さ」を可能にするのではないでしょうか。

2013/8/26 安田晋也