NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。

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風神雷神はにんまり笑う

2013/06/29
風神雷神はにんまり笑う

 日本は梅雨真っ盛りです。こうしてコラムを執筆している今も、外は街灯に雨の線が絵のように浮かび上がっております。
 今年の梅雨はなかなかまとまった雨量にならず、夏に向けての水不足への懸念、農家では作物の発育不良に深刻なダメージが出ているところもあれば、はたまた道路が冠水するほど降り、住民の方の生活を脅かしたりと、ニュースが絶えません。

 そんな、私たちの生活に今も昔も変わらず密接に関わりあっている「雨」ですが、日本人にとって「雨」とはどういう存在なのでしょうか。また雨を通して見えてくる日本人の伝統的な価値観とはどのようなものでしょうか。
 
 そもそも、雨という現象は、今では科学的にメカニズムが解明されておりますが、かつては雨を含め、原因のわからない自然現象は「神」や「妖怪」、「龍」など、実在しないものにその役割を担わせてきました。

 日本語で「雨」を表す言葉は100語以上あるといわれております。春の長雨を「春霖(シュンリン)」、新緑の頃に降る雨を「緑雨(リョクウ)」、夕立ちのことも「驟雨」(シュウウ)」と言ったり…。もちろん「梅雨」もその一つですね。現在では決まった数語(時雨や秋雨など)しか普段は使いませんが、私たちの先人はその季節ごと、時間ごとに降る「雨」に対して細かく名前を付け分けておりました。
 名前を付けるということは「愛情・愛着」を与えるということです。
 八百万の神の国日本において森羅万象すべてに神が宿り、それぞれに魂が存在すると考えられてきました。そうした感性が、多様な美しい雨の名前を生み出した背景にあるのではないでしょうか。

 さて、「雨が降らず日照りが続けば飢饉になるから降ってくれるのは嬉しい。でも降りすぎても洪水などの水害があるから雨続きでは困る。」という日本人の雨に対する「親しみと畏れ」の二つの感情をよく表している日本画があります。

 題名にもあります、かの有名な俵屋宗達の「風神雷神図」です。
 そこには、時に災害をもたらす「風」や「雷」など荒天をもたらす畏れるべき神々が描かれておりますが、その表情は柔和で、「にんまり」と笑った顔で描かれております。
 その表情に、ただ畏れるだけでなく、「雨を降らせてくれるありがたい神様」への親しみが込められているということです。

 雨天の日が続き、うんざりされている方もいらっしゃるでしょう。
 そんなときふと、「今日の雨はなんて名前なんだろう。」とか「雷神様、今日もお元気そうで。」とか、そんな風に考えてみると、いつもと違った「親しみ」を感じるきっかけになるかもしれませんよ。

2013/6/26 yasuda