JTCOメルマガ『風物使』
2013年07月23日 配信「夕立に貸し傘さがす」~ 季節の使い・JTCO『風物使』大暑号
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「夕立に貸し傘さがす」~ 季節の使い・JTCO『風物使』大暑号
vol.59 2013年07月23日発行(旧暦 6月16日・水無月)
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ジンにお申し込みくださった方、もしくは当機構活動にご協力いただ
いている個人/団体/法人様にお送りしています。
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拝啓
梅雨明け後、暑い日々が続いている地域も多いと思いますが、皆様いかが
お過ごしでしょうか。暑いからと冷たいものばかりでなく、体を温める食べ
物でしっかり汗をかくようにしたいものですね。
+‥‥+ 2013年大暑号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
・今号のテーマ……… もとは魔除け・権威の象徴でした:『傘』
・季節の行事………… 石崎奉燈祭 [石川県七尾市]
・JTCOからのお知らせ 涼感を呼ぶ!夏におススメの商品特集
・編集後記
,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…
【生活】もとは魔除け・権威の象徴でした:『傘』
「上加茂の傘屋が紙屋に傘借りて 加茂の帰りに返す唐傘」(早口言葉)
雨の日はもちろん、晴れの日にも日傘として欠かせないアイテム、傘。現代で
は用途に合わせ(もしくは急の雨で購入したものが知らずに増えて)、一人で
何本も所有するのが普通になっていますが、かつてはそうではなかったようで
す。
東洋の傘の起源は、古代中国で魔除けの目的で従者が貴人に差し掛ける「天
蓋」で、開閉はできないものでした。日本には、古墳時代の6世紀に百済王よ
り仏具として伝えられ、「きぬがさ(絹笠、衣笠)」と呼ばれました。仏具と
しての天蓋は、古代インドの王侯貴族や高僧の間で日傘として使われていたも
のが権威の象徴となり、仏教に導入されたという経緯があります。古代ギリシ
ャやヨーロッパでも天蓋や傘は同様の使われ方をしたそうですから、洋の東西
を問わず人間というのは同じようなことに価値を見出すものなのですね。
さて、傘は日本に入ってしばらくは日傘として使われていましたが、平安時代
以降、日本独自に竹や紙を使用して開閉できるものに改良され、室町時代に油
を引いて防水加工をした和紙が傘布に利用されるようになると、次第に雨傘と
しての用途も広がって行きました。
団扇(うちわ)を扇子にしてしまうように、何でも小さくコンパクトにしてし
まうあたりは、まさに日本のお家芸と言えましょう。このように開閉ができる
ようになった傘は、「唐繰(からくり=絡繰と同義)傘」と呼ばれ、略して
「唐傘(からかさ)」と呼ばれるようになりました。
室町時代の1500年頃に成立した『七十一番職人歌合』には、すでに傘張り職人
が専門の職人として登場しており、傘作りが職業として成立していました。
「七重八重花は咲けども山吹の実の(蓑)ひとつだになきぞあやしき」
(兼明親王『後拾遺集』1154)
(訳:花は咲き誇るが実を結ばない山吹のように、お貸しする蓑さえないのを
心苦しく思います。)
それでも傘は高価なものであり、一般庶民はもっぱら合羽や蓑笠を使っていま
した。江戸近郊で狩の最中に雨に降られた太田道灌が、農家で蓑笠を借りよう
としたところ、娘に山吹の花を差し出され、意味がわからず訝ったが、後でこ
の歌を踏まえたものだったと家臣に知らされ、自身の教養のなさを恥じたとい
う逸話が残っています。
江戸中期を待って傘は一般に普及するようになり、商店の屋号を傘にあしらっ
て客に貸し、店の宣伝に使われることもありました。「番傘」とは、店で貸す
傘を管理するために、番号が振られていたことに由来します。
井原西鶴の『西鶴諸国ばなし』には、紀州の掛作の観音様に寄進された20本の
唐傘が毎年張り替えられ、風雪の際には皆が持っていくが、晴れの日には律儀
に返しにくるので1本も欠けたことがない、という話が見られます。この時代
の人々が傘を大切に扱い、貸し傘のシステムを支えていたことがわかりますね。
近年、商店街でも貸し傘を復活させたが、江戸時代のようにきちんと返しにく
る人が少ないため、運営が難しいという話を聞いたことがあります。傘が消耗
品であるという意識をそろそろやめて、昔のように傘直しや張替えを活用して、
1本の傘も大切に使って行きたいものです。
,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
石崎奉燈祭
[石川県七尾市](8月第1土曜日)
能登半島の一部に特徴的な、巨大な灯篭(キリコ)を、男たちが1基を100
人程で担いで練り歩くという勇壮なお祭りです。
七尾市観光協会公式サイト
http://nanaoh.net/p132.html
,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
涼感を呼ぶ!夏におススメの商品特集
先日出品したパリのジャパンエキスポでも大人気だった、真っ白な革に鮮や
かな手書き模様が美しい姫革商品。夏にぴったりなさわやかな色使いの商品
を集めました。この時期必携の扇子の持ち歩きに欠かせない、扇子ケースも
ぜひ!
オンラインショップ『和遊苑』「涼感を呼ぶ!夏におススメの商品特集」
http://wayouen.jp/?mode=grp&gid=660287
6/10に新規独立店舗を立ち上げております!お買い物がしやすくなった『和遊
苑』で、どうぞお買い物をお楽しみください。
,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
『風物使』第59号(2013年大暑号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。
6月・7月と業務多忙のため、しばらく発行をお休みして申し訳ありませんでし
た。7月に参加したジャパンエキスポのレポートも、近日アップしたいと思い
ますので、しばらくお待ちくださいませ。
JTCOでは新しいスタッフを迎え、コラムが続々とアップされております。『風
物使』でも、順次ご紹介していきたいと思いますので、どうぞお楽しみに!
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【季節の使い・JTCO『風物使』】
発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日
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【発行元】
特定非営利活動法人 日本伝統文化振興機構(JTCO)
〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
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All rights reserved.
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vol.59 2013年07月23日発行(旧暦 6月16日・水無月)
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梅雨明け後、暑い日々が続いている地域も多いと思いますが、皆様いかが
お過ごしでしょうか。暑いからと冷たいものばかりでなく、体を温める食べ
物でしっかり汗をかくようにしたいものですね。
+‥‥+ 2013年大暑号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
・今号のテーマ……… もとは魔除け・権威の象徴でした:『傘』
・季節の行事………… 石崎奉燈祭 [石川県七尾市]
・JTCOからのお知らせ 涼感を呼ぶ!夏におススメの商品特集
・編集後記
,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…
【生活】もとは魔除け・権威の象徴でした:『傘』
「上加茂の傘屋が紙屋に傘借りて 加茂の帰りに返す唐傘」(早口言葉)
雨の日はもちろん、晴れの日にも日傘として欠かせないアイテム、傘。現代で
は用途に合わせ(もしくは急の雨で購入したものが知らずに増えて)、一人で
何本も所有するのが普通になっていますが、かつてはそうではなかったようで
す。
東洋の傘の起源は、古代中国で魔除けの目的で従者が貴人に差し掛ける「天
蓋」で、開閉はできないものでした。日本には、古墳時代の6世紀に百済王よ
り仏具として伝えられ、「きぬがさ(絹笠、衣笠)」と呼ばれました。仏具と
しての天蓋は、古代インドの王侯貴族や高僧の間で日傘として使われていたも
のが権威の象徴となり、仏教に導入されたという経緯があります。古代ギリシ
ャやヨーロッパでも天蓋や傘は同様の使われ方をしたそうですから、洋の東西
を問わず人間というのは同じようなことに価値を見出すものなのですね。
さて、傘は日本に入ってしばらくは日傘として使われていましたが、平安時代
以降、日本独自に竹や紙を使用して開閉できるものに改良され、室町時代に油
を引いて防水加工をした和紙が傘布に利用されるようになると、次第に雨傘と
しての用途も広がって行きました。
団扇(うちわ)を扇子にしてしまうように、何でも小さくコンパクトにしてし
まうあたりは、まさに日本のお家芸と言えましょう。このように開閉ができる
ようになった傘は、「唐繰(からくり=絡繰と同義)傘」と呼ばれ、略して
「唐傘(からかさ)」と呼ばれるようになりました。
室町時代の1500年頃に成立した『七十一番職人歌合』には、すでに傘張り職人
が専門の職人として登場しており、傘作りが職業として成立していました。
「七重八重花は咲けども山吹の実の(蓑)ひとつだになきぞあやしき」
(兼明親王『後拾遺集』1154)
(訳:花は咲き誇るが実を結ばない山吹のように、お貸しする蓑さえないのを
心苦しく思います。)
それでも傘は高価なものであり、一般庶民はもっぱら合羽や蓑笠を使っていま
した。江戸近郊で狩の最中に雨に降られた太田道灌が、農家で蓑笠を借りよう
としたところ、娘に山吹の花を差し出され、意味がわからず訝ったが、後でこ
の歌を踏まえたものだったと家臣に知らされ、自身の教養のなさを恥じたとい
う逸話が残っています。
江戸中期を待って傘は一般に普及するようになり、商店の屋号を傘にあしらっ
て客に貸し、店の宣伝に使われることもありました。「番傘」とは、店で貸す
傘を管理するために、番号が振られていたことに由来します。
井原西鶴の『西鶴諸国ばなし』には、紀州の掛作の観音様に寄進された20本の
唐傘が毎年張り替えられ、風雪の際には皆が持っていくが、晴れの日には律儀
に返しにくるので1本も欠けたことがない、という話が見られます。この時代
の人々が傘を大切に扱い、貸し傘のシステムを支えていたことがわかりますね。
近年、商店街でも貸し傘を復活させたが、江戸時代のようにきちんと返しにく
る人が少ないため、運営が難しいという話を聞いたことがあります。傘が消耗
品であるという意識をそろそろやめて、昔のように傘直しや張替えを活用して、
1本の傘も大切に使って行きたいものです。
,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
石崎奉燈祭
[石川県七尾市](8月第1土曜日)
能登半島の一部に特徴的な、巨大な灯篭(キリコ)を、男たちが1基を100
人程で担いで練り歩くという勇壮なお祭りです。
七尾市観光協会公式サイト
http://nanaoh.net/p132.html
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涼感を呼ぶ!夏におススメの商品特集
先日出品したパリのジャパンエキスポでも大人気だった、真っ白な革に鮮や
かな手書き模様が美しい姫革商品。夏にぴったりなさわやかな色使いの商品
を集めました。この時期必携の扇子の持ち歩きに欠かせない、扇子ケースも
ぜひ!
オンラインショップ『和遊苑』「涼感を呼ぶ!夏におススメの商品特集」
http://wayouen.jp/?mode=grp&gid=660287
6/10に新規独立店舗を立ち上げております!お買い物がしやすくなった『和遊
苑』で、どうぞお買い物をお楽しみください。
,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……
『風物使』第59号(2013年大暑号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。
6月・7月と業務多忙のため、しばらく発行をお休みして申し訳ありませんでし
た。7月に参加したジャパンエキスポのレポートも、近日アップしたいと思い
ますので、しばらくお待ちくださいませ。
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物使』でも、順次ご紹介していきたいと思いますので、どうぞお楽しみに!
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【季節の使い・JTCO『風物使』】
発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日
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【発行元】
特定非営利活動法人 日本伝統文化振興機構(JTCO)
〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
Webサイト: http://www.jtco.or.jp/
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