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JTCOメルマガ『風物使』

2010年07月20日 配信
「夏の便りに人想う」~ 季節の使い・JTCO『風物使』大暑号

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 「夏の便りに人想う」~ 季節の使い・JTCO『風物使』大暑号
     vol.3 2010年7月20日発行 (旧暦 6月9日・水無月)

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拝啓
各地で梅雨明け宣言が出され、夏本番となってきました今日この頃、皆さま
いかがお過ごしでしょうか。
照りつける太陽と湿度の高さに、少し参っているのはあなただけではなく、
しばらく会っていないあの人も同じかも。大暑から8月上旬の立秋までは、
暑中見舞いの季節です。普段はメールで済ましてしまうごあいさつも、涼し
げなはがきに、ちょっとした気遣いをしたためて送ってみると、いつもとは
違うコミュニケーションになるのではないでしょうか。


+‥‥+ 2010年小暑号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・季節の祭り…………… 睡魔を祓う:『ねぶた・ねぷた』
 ・旬の味………………… 今年もおなじみ土用の丑(うし):『ウナギ』
 ・季節の花……………… かんぴょうの親:『ユウガオ(夕顔)』
 ・編集後記


○o 季 節 の 祭 り ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………


睡魔を祓う:『ねぶた・ねぷた』

『ねぶた・ねぷた』といえば、青森県各地の夏の夜空を幻想的に彩る、力強い
武者の人形燈籠がすぐに思い浮かびますね。青森市のお祭りは「ねぶた」、弘
前市のお祭りは「ねぷた」と呼ばれ、語源や祭りの起源については諸説ありま
すが、いずれも「眠り流し」という、日本各地に伝えられている禊祓え(みそ
ぎはらえ)の習慣であるというのが有力なようです。

この「眠り流し」という習慣は、地域によって時期や方法に違いはあるものの、
旧暦7月7日の未明から川や海に行って、水浴びをしたり泳いだりすると、1年
間早起きでいられるという言い伝えにもとづいているのだそうです。またこの
とき、川や海にいろいろなものを流す場合があるのですが、ある地域では合歓
(ねむ)の木と大豆の葉、ある地域では紙人形、またある地域では燈籠と、バ
リエーションに富んでいます。

興味深いのが、このときに唱えられる文句で、
「ネムは流れよ、豆の葉はとまれ」(埼玉県熊谷地方)
「ネブタなんがれろ、豆の葉とんまれ」(秋田県大曲地方)
「ネブタも流れろ、豆の葉もとどまれ」(青森県下北半島)
など、地域は異なれど、同じような内容になっているのです。

ここでの「ネム」「ネブタ」は眠気のことですが、「豆」=「まめまめしい」
の意です。「まめ」とは「真美(まみ)」が転じたとも、「真目(まめ)」の
意とも言われ、奈良時代からある言葉で、時代とともに意味の変遷はあります
が、浮ついたところがなく誠実である、勤勉である、もしくは実用的である、
という意味に使われてきました。

古来日本人は、御霊は海から上がってきて、初秋に送られてふたたび海に還る
ものだと考えており、彼らが睡魔となってとりつくのを祓うため、「眠り流
し」の行事が行われるようになったのではと考えられています。

農繁期でたくさん働かなければならない時期に、暑さと疲れでつい眠くなって
しまう。これを祓おうと、各地で同じようなおまじないが考えられたなんて、
日本人は昔からまじめだったのですね。

寛政年間(18世紀の終わり)にはまだ四角い燈籠だったという青森のねぶた。
人形燈籠が巨大になった今では難しいと思われますが、昔は祭り最後の旧暦7
月7日の朝に川や海で燈籠を洗ったり流したりしていたそうです。今年、「ね
ぶた祭り」「ねぷた祭り」に行ってみよう、と考えている皆さんはぜひ、「眠
り流し」の習慣にも思いを馳せてみてください。暑くても、まめまめしく働け
ますように、と願いながら。


▼弘前ねぷた祭り [青森県 弘前市]
8/1(日)~8/7(土)
http://www.piconet.co.jp/nippon-net/nippon.cgi/see/11389

弘前ねぷたまつり(公式サイト)
http://neputa.free-cm.com/


▼青森ねぶた祭り [青森県 青森市]
8/2(月)~8/7(土)
http://www.piconet.co.jp/nippon-net/nippon.cgi/see/11385

青森ねぶた祭オフィシャルサイト
http://www.nebuta.jp/index.htm


▼たちねぶた [青森県 五所川原市]
http://www.tachineputa.jp/index.php


○o 旬 の 味  ━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………


今年もおなじみ土用の丑(うし):『ウナギ』


「石麻呂に吾(あれ)もの申す夏やせによしといふ物そむなぎ取り食せ(め
せ)」大伴家持(『万葉集』巻16‐3853)

(石麻呂にはこう言ってあげた。「夏痩せによいといわれている、ウナギを捕
って食べなさい。」と。)

「痩す痩すも 生けらば在らむを はたやはた むなぎを捕ると川に流るな」
大伴家持(『万葉集』巻16‐3854)

(どんなに痩せていても生きてさえいればよいのだから、ウナギを捕ろうなど
と考えて川に流されないでくださいよ。)


土用とは、季節の移り変わりを的確に捉えるために設けられた雑節の一つで、
立夏・立秋・立冬・立春の前18~19日間のことを言います。丑とは日に十二支
を割り当てた丑にあたる日のことで、2010年の夏の土用は7月26日になります。

実は天然もののウナギの旬は、ウナギが産卵のために海に下る晩秋から初冬に
かけてなのですが、体力の落ちる夏に滋養強壮のためにウナギを食べるのは古
くから行われていたようで、上記は「痩人(やせひと)をあざける歌二首」と
して、万葉の時代に大伴家持がやせぎすだった吉田連老(字=あざなが石麻
呂)という人を思いやり半分、からかい半分に贈ったものです。

ウナギは非常に栄養のバランスがよく、ビタミンA、D、E、B1、B2、B6、B12、
葉酸、ナイアシン、パントテン酸などのビタミンや、カルシウム、亜鉛、鉄な
どのミネラルを豊富に含みます。ビタミンB群は炭水化物をエネルギーに変え
る手助けをしますが、水溶性のために発汗によって失われやすく、暑さで疲れ
やすくなった体を元気にするにはウナギはうってつけの食品ということになり
ます。栄養学がまだなかった万葉時代に、すでにこのことが知られていたとは、
昔の人の経験則には驚くべきものがありますね。

万葉の時代にウナギがどのように食べられていたかは定かではありませんが、
いまやウナギといえば「蒲焼き」ですね。文献上で「蒲焼き」が初出するのは、
室町時代の1399年に著された『鈴鹿家記』ということです。ただ、初期の蒲焼
きはウナギをぶつ切りにして串に刺して焼き、味噌などの調味料をつけて食べ
ていたようで、この串刺しの姿が「蒲(がま)の穂」に似ていたことから、
「蒲焼き」の名がついたと言われています。

土用の丑の日とウナギが結びつき、開いたウナギにしょうゆダレをつけて焼い
たものを食べるようになったのは江戸時代の18世紀ごろ。定番のうな丼ももち
ろんですが、さまざまなウナギレシピを試してみるのもいいですね。


▼うざく [三重県]
うなぎときゅうりを和えた酢の物です。
http://www.piconet.co.jp/magazine/recipe/225.html

▼ひつまぶし [愛知県]
ひつまぶしの簡単レシピ。
http://www.piconet.co.jp/magazine/recipe/20.html

▼鰻丼 [静岡県]
ウナギの蒲焼きを甘辛く煮詰めた一品。
http://www.piconet.co.jp/magazine/recipe/69.html


○o 季 節 の 花 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………


かんぴょうの親:『ユウガオ(夕顔)』

「心当てにそれかとぞ見る白露の 光添へたる夕顔の花」(『源氏物語』第4
帖「夕顔」)

(もしかしたら、あなた様でしょうか。夕顔の花がたたえた、きらきらと光る
白露のように美しい方でしたので。)

光源氏がつかの間の逢瀬に足繁く通うことになる、薄幸の女性、夕顔。この歌
は、民家の垣根に咲くユウガオの花に目を留めた源氏に、その家の女主人(夕
顔)が花に添えて贈った扇に詠んだものです。可憐で朗らかな彼女はその後ほ
どなく、源氏の恋人である六条の御息所の生霊にとりつかれて、ユウガオの花
のようにはかなくこの世を去ります。

ユウガオは北アフリカ原産のウリ科の植物で、日本には平安時代に中国から伝
わったといわれています。白く可憐な花は、文字通り夏の夕方に咲き、翌日の
午前中にはしぼんでしまうことから、薄幸の女性を描くにはふさわしい花だっ
たのでしょう。

同じ花を、清少納言はこのように述べています。

「夕顔は、花のかたちも朝顔に似て、言ひ続けたるに、いとをかしかりぬべき
花の姿に、実のありさまこそ、いとくちをしけれ。などて、さはた生ひ出でけ
ん。ぬかづきといふもののやうにだにあれかし。されど、なほ夕顔といふ名ば
かりは、をかし。」(『枕草子』65段)

(ユウガオの花は、形もアサガオに似て、アサガオ・ユウガオと並び称される
くらい素敵な姿なのに、その実といったらもうがっかりだ。なぜあんなに不恰
好なくらい大きくなってしまったのだろう。ホオズキくらいでとどまっていれ
ばよいのに。それでも、ユウガオという名前だけは素敵だ。)

ユウガオは、同じウリ科のヒョウタン(瓢箪)と同じような、7~8キロにもな
る大きな実をつけます。この実は、ふくべ(瓢)と呼ばれ、これを薄く削って
干したものが、巻き寿司でおなじみのかんぴょう(干瓢)なのです。

源氏物語の中では、ただただロマンチックなシーンの小道具として登場するユ
ウガオですが、その下にボテッと大きな実がなっていて、それがかんぴょうに
なるとは、清少納言でなくてもちょっとギャップを感じてしまいますね。

かんぴょう生産の盛んな栃木県では、古くからふくべを利用した工芸品がつく
られていたとのこと。花を観賞し、果実を食し、実と種を取ったあとの皮は工
芸品に利用する。昔の人のすることには、本当に無駄がないですね。


▼ふくべ細工(栃木県ホームページ)
戦国時代から、茶道用の炭入れとしても利用されていたとのことです。
http://www.pref.tochigi.lg.jp/intro/tochigiken/hakken/bunka3_05.html



★。編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………

『風物使』第3号を最後までお読みくださったみなさま、誠にありがとうござ
いました。

先週末に土佐和紙関連の取材に高知を訪れましたが、龍馬ブームで沸く当地は、
南国の太陽&土佐人パワーで、とてもアツかったです。特に、女性は龍馬の乙
女姉さんのようなタイプの方が多い?のかも。このような女性を「はちきん
(=金●八つ、男4人分。ただし俗説)」と呼ぶそうで・・・。

土佐和紙関連の記事は、準備ができましたらサイトにアップしたいと思います。
今しばらくお待ちくださいませ。

次号は暦の上ではすでに立秋です。暑い暑いと思っていても、意外と秋はすぐ
そこかもしれません。熱中症には気をつけながら、日本の夏を精一杯楽しみま
しょう。

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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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