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JTCOメルマガ『風物使』

2012年09月03日 配信
「梨の実に初秋見る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』白露号

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  「梨の実に初秋見る」~ 季節の使い・JTCO『風物使』白露号
    vol.44 2012年09月03日発行(旧暦 07月17日・文月)

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拝啓
日中残り少ない晩夏を謳歌する蝉の声を聞きながらも、夜には秋虫の声を聞
く今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。スイカもナシも楽しめる
今の時期、デザートはちょっと欲張ってみてもよいですね。


+‥‥+ 2012年白露号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ……… 花は不美人の象徴だった?:『ナシ』
 ・季節の行事………… 蛸島キリコ祭り [石川県珠洲市]
 ・JTCOからのお知らせ オンラインショップ秋のセールを実施中!
 ・編集後記


,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…


【植物】花は不美人の象徴だった?:『ナシ』

「黄葉(もみちば)のにほひは繁(しげ)ししかれども 妻梨(つまなし)の木
を 手(た)折(を)りかざさむ」
(『万葉集』巻10-2188)

(訳:木の葉は美しく秋に色づいているけれど、妻のいない私は梨の木
を折って頭に飾りましょう。)

今年も店頭にナシの実が並ぶ季節になりました。日本のナシはみずみずしさ
と爽やかな甘味が特徴で、秋には欠かせない味覚ですね。ナシはどのように
日本人の生活の中に取り入れられていったのでしょうか。

弥生時代後期の登呂遺跡からは炭化した多くのナシの種が見つかっており、
この時期にはすでにナシが食されていたことがわかっています。ナシの栽培
は日本最古の果樹栽培と考えられていますが、その理由はこの時代以前の遺
跡などから種は見つかっておらず、自生地も人里周辺であるためで、弥生時
代に大陸から栽培用に持ち込まれたと考えられています。

ナシが文献に初めて登場するのは飛鳥時代で、『日本書紀』の中に持統天皇
の693年の詔として、クリやカブなどとともにナシの栽培を推奨する記述が
見られます。平安時代の『延喜式』には、儀式用の供え物としてナシが挙げ
られており、現代でも産地として知られている甲斐国(山梨県)や因幡国
(鳥取県)からナシが献上されたとあります。

「ナシ」という名称の語源については、果肉が白いことから「なかしろ」が
省略されたとか、甘酸っぱいことから「なす(中酸)」が転じたとか諸説あ
りますがどれも定かではありません。平安時代には、「ナシ=無し」に通じ
ることから、「有りの実」と呼ばれることもあったということです。

平安時代の貴族たちにとって、気に入らなかったのは名前だけではなかった
ようで、『枕草子』では梨の花のことを「愛敬おくれたる人の顔などを見て
は、たとひに言ふも、げに」(魅力的ではない女性の顔などをみて喩えに使
われるのも仕方ないわね)」と言っており、「よにすさまじきものにして、
近うもてなさず、はかなき文つけなどだにせず(酷くつまらない花だと思わ
れているので身近に鑑賞することもないし、ちょっとした文を結びつけるの
に使ったりすることもない)」という文章からは、当時のナシの花に対する
人々の評価を垣間見ることができます。ただ、中国では『長恨歌』で楊貴妃
の泣く姿を梨の花に喩えたように、白く可憐なナシの花は純潔と美人の象徴
であるため、清少納言はこれを一顧して「花びらの端の色が心憎い」とちょ
っぴりフォローをしています。ナシの花の形や咲き方は、その前に咲くサク
ラの花にも似ているのに、平安貴族にはどこが気に入らなかったのでしょう
ね。

花の不人気さとはうらはらに、実のおいしさは人々の心を捉えたようで、鎌
倉時代の『明月記』や室町~江戸初期まで書き継がれた『多聞院日記』では
「お土産として持っていった」との記述が見られますし、江戸時代には今で
いうグルメ本の『本朝食艦』(1697年)など、さまざまな食関係の本に登場
しています。
江戸時代後期以降になると、生産技術も発達していき、他の果樹と同様ナシ
の栽培方法も文献に残されるようになりました。この頃の記録によれば、全
国で栽培されるナシの名称は100種類以上にもなったそうです。

明治時代には「二十世紀」「長十郎」など水分が多く甘い品種が発見されて
盛んに品種改良が行われ、戦後に登場する「幸水」「新水」「豊水」に引き
継がれていきます。

「春ふかみ深山がくれの花なしと いふにつけてもわきぞかねつる」
(藤原行成『大納言公任集』)

(訳:春に花が咲き秋に結実するナシのように花も実もあるあなたなのに、
いつまで引きこもっているおつもりですか?)

秋に美味しい実をつけるナシの木も、春の花の時期にはあまり評価されなか
ったように、人の人生もどこでよい時期を迎えるかわかりません。思い通り
に行かなくても、人生の秋に見事な実を結べるよう、くさらず自分の信じる
道を歩むことも大切なのではないでしょうか。


,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……


蛸島キリコ祭り
[石川県珠洲市](9月10~11日)

能登地方では、夏から秋にかけて「キリコ」(「切子灯篭」の略、神輿のお
供をする巨大な灯籠群) 祭りが各地で行われます。蛸島のキリコ祭りは、
昔天皇の勅使を地元の人々が出迎えたのが起源とされており、総漆塗りで金
箔や彫り物で飾られた豪華なキリコが特徴です。

金沢の総合情報「きまっし金沢」蛸島キリコ祭り:
http://kimassi.net/notomaturi/takojima.html

能登キリコ祭り:
http://www.notokiriko.jp/gallery.html



,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……


オンラインショップ秋のセールを実施中です!

ご好評をいただいた夏のセールに引き続き、晩夏~秋バージョンのレターセ
ットを特別価格(1480円→980円)でご提供中です。ご無沙汰しているあの方
へ、「お元気ですか」のメッセージをしたためてお便りしてみませんか。

オンラインショップ『和遊苑』
http://www.piconet.co.jp/jtco/



,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第44号(2012年白露号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。

最近、美意識というものの国や文化による違いを調べていて、本当に面白い
と思います。今回のテーマ「ナシ」も、その花の日中の文化での捕らえ方の
違いが顕著で、なぜこのような違いが生じたのかとても興味を惹かれます。
人は同じようで違うのです。常識や「普通」にとらわれず、人を理解する努
力を怠らないようにしたいものですね。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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