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JTCOメルマガ『風物使』

2012年08月25日 配信
「咲く萩に鹿恋す」~ 季節の使い・JTCO『風物使』処暑号

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  「咲く萩に鹿恋す」~ 季節の使い・JTCO『風物使』処暑号
    vol.43 2012年08月25日発行(旧暦 07月08日・文月)

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拝啓
残暑厳しい今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。時折空も高く
見え、秋の訪れも感じます。残り少ない夏を涼しく過ごす工夫をしてみま
しょう。


+‥‥+ 2012年処暑号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・今号のテーマ……… 占いにも使われた神聖な動物:『シカ』
 ・季節の行事………… ぐず焼まつり [石川県加賀市]
 ・JTCOからのお知らせ オンラインショップ秋のセールを実施!
 ・編集後記


,:* 今 号 の テ ー マ ━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥…


【生物】占いにも使われた神聖な動物:『シカ』

「我が岡にさ牡鹿(をしか)来鳴く初萩の 花妻とひに来鳴くさ牡鹿」
(大伴旅人『万葉集』巻8-1541)

(訳:萩の咲き始める頃、私の住む岡に牡鹿が来て鳴いている。萩の花を花
嫁に迎えようとやってきたのだな。)

晩夏となり、鹿の子模様の夏毛が灰色の冬毛に衣替えを始めると、そろそろ
シカたちの恋の季節が始まります。萩の咲き始める時期と、牡鹿が雌鹿を求
めてよく鳴くようになる季節がほぼ一致するため、万葉の人々はシカと萩の
花を夫婦に見立ててたくさんの歌を残しました。

奈良公園のシカは誰もが知る存在ですが、日本全国の神社の庭やその近くで、
時々シカを見かけることがありますね。シカは春日大社・鹿島神宮・厳島神
社などで神様のお使いとされているからです。シカたちはどのような経緯で
神聖な動物とされるようになったのでしょうか。

ニホンジカの学名はCervus Nipponといいますが、原産地は中国大陸と考え
られており、太古に船で大陸から渡ってきた人々が食料として持ち込んだこ
とで、東アジア・東南アジアの各地に生息地が広がったと推定されています。
日本には、体の大きな北方のエゾジカから最小のヤクシカまで、7亜種が生
息しています。

今から5000年前の縄文時代前期の貝塚からはシカの骨が出土しており、その
当時から食料として利用されていたことがわかります。この時代には様々な
動物を描いた土器や土偶が作られていましたが、その中にシカは見られませ
んでした。シカの土偶やシカの図柄の銅鐸が作られるようになったのは弥生
時代以降で、この頃にはシカをトーテム(ある部族が神聖視する生物)とす
る部族が中国大陸や朝鮮半島から渡来していたと考えられます。

古墳時代には、シカに対する信仰はさらに発展し、渡来系一族の物部氏が常
陸国(茨城県)で奉祀した氏神「香島天之大神」の社では、すでに神鹿(し
んろく=神の使いであるシカ)が飼われていたとのことです。おなじみの奈
良の春日大社のシカは、奈良・平安時代に権勢を誇った藤原氏が、一族の氏
神を祀る春日大社にこの鹿島神宮の神鹿を導入したのが始まりです。飛鳥時
代の藤原氏の始祖、中臣鎌足は鹿島神宮の神官を務める家系の出身であり、
シカの肩甲骨を焼いて吉凶を占う鹿卜(かぼく)をもって大和朝廷に仕えた
とされることから、藤原氏の隆盛に伴って、シカが神聖視される傾向がさら
に強まったと考えられます。

シカに対する信仰が人々の間に浸透していくと、シカにまつわる多くの伝説
が生まれ、シカが朝廷や神社に奉献されるようになります。ことに白鹿は想
像上の動物である「麒麟」と同類の聖獣とされ、篤く信仰の対象となりまし
た。中世になり、藤原氏が衰退すると、代わって興福寺が神鹿保護の協力な
後ろ盾となります。これには、神鹿保護を通じてその権力を民衆に誇示する
という、政治的な意図がありました。その後江戸時代まで神鹿殺しは死罪に
あたる重罪とされました。

その一方で、シカは長きに渡って日本人の重要な栄養源であり、各時代を通
じて食料として利用されてきた歴史があります。またその皮は非常にきめが
細かくなめらかなうえ、軽く丈夫であるため、古代から加工しやすい生活用
品として服飾や身の回りの小物、武具・馬具に活用されてきました。博物館
や宝物館で平安・鎌倉期の大鎧を見る機会があれば、兜の吹き返しや鎧の前
面に華やかな型染めの絵韋(えがわ)が張られているのに気づくでしょう。
「韋」というのはシカのなめし革のことで、そのきめの細かさゆえ、型染め
で精巧な文様を描き出すことができたのです。現代でも、染色した鹿革に型
紙を利用して漆で細かな文様を描き出した印伝の小物は、財布やバッグなど
に加工され、身近に利用され続けています。

暑さがやわらぎ、秋の風情に心なしか寂しさを感じ始める頃、神社の庭に行
けば涼やかな秋風に乗ってシカの鳴き声が聞こえてくるかもしれません。そ
んなとき、近くに萩の花が咲いていたら、花嫁はここにいますよ、と教えて
あげてくださいね。


,:* 季 節 の 行 事 ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……


ぐず焼まつり
[石川県加賀市](8月27~29日)

この地に伝わる伝説をもとに、厄災にみたてた大きなグズ(ゴリ)をかつい
だ白足袋姿の若衆たちが、”ワッショイ”と威勢のよいかけ声をかけ、細長
い宿場町をねり歩きます。

石川県観光連盟Webサイトより引用:
http://www.hot-ishikawa.jp/search-detail.php?id=0013-00000534



,:* JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……


9月より、オンラインショップ秋のセールを実施します。

ご好評をいただいた夏のセールに引き続き、晩夏~秋バージョンのレターセ
ットを特別価格(1480円→980円)でご提供いたします。ぜひご利用ください。

オンラインショップ『和遊苑』
http://www.piconet.co.jp/jtco/



,:* 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……

『風物使』第43号(2012年処暑号)を最後までお読みくださったみなさま、
誠にありがとうございました。

先日、ドイツの方に鎌倉名物「鳩サブレー」をお土産にお渡ししたところ、
「なんでハトなの?」とのご質問をいただきました。あまり深く考えたこと
はなかったのですが、調べてみると八幡宮の神使がハトなのですね。その他
にも神使になっている生物はネズミやウナギ、ハチに至るまでいろいろある
ことがわかりました。知らないところでさまざまな動物が神様のお使いにな
っていて、古来から日本人は人間にない力を持つ生き物たちを神聖なものと
して考えていたのだなと、ふとそんなことを思いました。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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