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日本のモダンホテル 十選

2012/09/06
日本のモダンホテル 十選

「東京ステーションホテル」

これまで、日本のさまざまなモダンホテルを紹介してきた。最終回は、今もなお現役で活躍しているホテルのなかでも、とびきりの名建築を紹介したい。東京ステーションホテル=東京駅である。
 大正3年(1914年)12月、東海道本線の起点として開業した東京の表玄関、東京駅。その翌年、客室数72室、宴会場を備えた東京ステーションホテルが駅舎内に開業した。建物を設計したのは、奈良ホテルも手がけた明治建築界の帝王・辰野金吾である。
 全長330メートルの長大なルネサンス様式の駅舎。退屈さを与えないよう、要所要所にゴシック様式的な垂直線が付与されている。壁面は、赤煉瓦(れんが)と白い石の色彩的対照がめざましい、いわゆる「辰野式」。皇后と正対する左右対称の雄渾(ゆうこん)な建築の完成は、建築家辰野金吾の人生を輝かしく締めくくった。
 東京駅は、関東大震災には耐えたが、第2次大戦の空襲で両翼ドームと3階部分が大破し、2階建て+寄棟屋根の姿となった。平成19年(2007年)、開業当初の姿への復元と保存及び耐震補強工事が着手され、ステーションホテルも営業を休止した。その工事が今年の10月3日、いよいよ完了し、ホテルも営業を再開する予定である。ホテルの2階廊下からは、丸の内南口の吹き抜け空間が見下ろせるはず。真っ先にその風景を目にする人は誰だろうか。

(出典・日経新聞2012/9/4 江戸東京博物館研究員 米山 勇)