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NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。
伝統工芸館 カテゴリ

総数:400件


都道府県

総数:400件

伝統工芸品北海道

北海道
工芸品の分類 木工品
工芸品名 二風谷イタ

主要製造地域:北海道




《特徴》
二風谷イタとは、沙流川流域に古くから伝わり、現在は主として平取町二風谷で伝統的技法が継承されています。木製の浅く平たい形状のお盆のことで、地域の特徴である、モレウノカ・アイウシノカ・シクノカなどのアイヌ文様が木彫りにより施されています。
日常生活で長く使用できる実用品でありながら、モレウノカ(うずまきの形)、アイウシノカ(刺のある形)、シクノカ(目の形)などのアイヌ文様、ラムラムノカ(ウロコの形)と呼ばれるウロコ彫りが施されている、美しさも兼ね備えた工芸品といえます。
デザインの組み合わせによって、作り手によりイタ全体のアイヌ文様が形成されています。
なかでもウロコ彫りは、二風谷イタには必ず見られるもので、その技術は現在も継承されています。地域に伝わる地模様の一種で、文様と文様の間のスペースをデザインとして埋めるラムラムノカを巧みに使用しているのもこの地域の特徴と言えます。
なお、現在、道内の他地域でウロコ彫りが入ったものもみられますが、二風谷ではウロコ彫りを必ず木目を縦方向にして彫っています。

[経済産業大臣指定伝統的工芸品]
提供:二風谷民芸組合 様

※シクノカの「ク」、ラムラムノカの二つの「ム」は、アイヌ語表記上、本来は 小文字にしますが、ウェブサイトのシステム上、小文字になっていないことをご了承 ください。

素材 クルミ、カツラなど
製法・工法 二風谷イタの製造工程は、型取り・文様彫り、ウロコ彫りなど多岐にわたっており、それぞれの工程において手作業となっています。

【1】底取り
 荒彫りした板の内側を皮裁ち包丁で同じ深さに削って、彫る面を整えていきます。内側の縁のラインも丸ノミで美しく仕上げます。

【2】裏面仕上げ
裏面の角を面取りしていきます。これで板の形取りが完成です。

【3】文様彫り
文様をデザインし、そのラインに沿って三角刀で線取りをしていきます。次に丸ノミで彫り下げ、立体感と陰影を出していきます。

【4】二重線彫り
文様のラインをさらに加え、彫りの表情を豊かにしていきます。

【5】ウロコ(ラムラムノカ)の線入れ
モレウノカ(渦巻き)やシクノカ(目の形)の間を埋めるように、木目を縦方向にして、印刀でウロコの文様となる枡目を引いていきます。
このウロコ彫りをひとつの作品に多用するのが、二風谷イタの特徴です。

【6】ウロコ(ラムラムノカ)の起こし
印刀の裏刀でウロコを一つひとつ起こしていきます。枡目の半分が彫られることになります。ウロコの面積の大きさと独特の表情が、二風谷イタならではの表情を作ります。

【7】仕上げ
細部の調整をして完成です。
歴史 100年以上前から沙流川地域に住むアイヌの人々(sar-un-kur)などによって受け継がれてきました。
江戸時代(安政年間)には、沙流場所(沙流川流域)からイタである半月盆や丸盆が献上品として記録されていることから、当時すでに、沙流川流域で作られたイタが他には類を見ない優れた土地の産品として重要視されていたことがうかがえます。
1904年には、フレデリック・スターによって収集されたアイヌ工芸品に、この地域のイタをはじめとする木彫り品が記録されています。
また、1890年代(明治20年代)には二風谷の貝澤ウトレントク、貝澤ウエサナシが、沙流川流域独自の文様を彫り込んだ盆や茶托等を製作・販売していたことが伝えられています。二人の作品は現存しており、100年以上の当時から現在まで変わらぬウロコ彫りなどのアイヌ文様入りのイタが作り続けられ、伝統的な技法が継承されていることは明らかです。
イタは地域では生活に欠かせないものとして使用されながら伝統的技術・技法が継承されてきたと共に、1960年代から70年代にかけての高度経済成長期には観光の隆盛と関わりながら、土産品としても地域の生活・文化・経済に大きな役割を果たしてきました。
現在は、地域の工芸家により構成される二風谷民芸組合が中心となって、工芸品の製造販売と技法の継承が行われています。
関連URL http://nibutani.jp/

◆展示場所
二風谷工芸館
〒055-0101 北海道沙流郡平取町字二風谷61-6
         平取町アイヌ文化情報センター内
TEL      :01457-2-3299
入館料     :無料
開館時間   :9:00~17:00
休館日  :12月31日~1月5日(年末年始)