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NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。
伝統工芸館 カテゴリ

総数:400件


都道府県

総数:400件

伝統工芸品愛知県

愛知県
工芸品の分類 仏壇・仏具
工芸品名 尾張仏具

主要製造地域:愛知県




《特徴》
尾張仏具の特徴は、製造におけるそれぞれの作業が独立した職人たちによって行われることにあります。1000種類以上ある仏具を、専門の技術を磨いてきた職人たちが生産工程を分業して製作します。

使用する木材や漆はひとつとして同じものはありませんが、それを同じ品質に仕上げることができるのは高い技術力があってこそであり、その技術の集結により完成される仏具こそが尾張仏具です。

【左上写真】
提供:尾張仏具技術保存会 様

[経済産業大臣指定伝統的工芸品]
文書提供:尾張仏具技術保存会 様



伝統工芸品「尾張仏具(木魚)」と賞状の写真

        ▲写真提供:加藤木魚製造所 様

素材 原木(松・桧・欅)、漆、銅・真鍮・銀、箔(金・銀)、粉、色の粉など
製法・工法 尾張仏具の製品は1000種類以上ありますが、ここでは一部製品の製法を紹介します。

◎木魚
数ある尾張仏具の中でも木魚は、日本全国で尾張地区でしか生産されていません。
木魚の製作は、まず原木から切り出した木材を粗彫りし、内部を抉り抜きます。十分に自然乾燥させ表面に飾り彫刻を施し、音の調整を行って完成です。作業日数は数日~数年でも、完成までは数十年かかる場合もあります。この完成までの時間には、作業日数のほか、木材が求める形に安定するまでの時間も含まれています。仏具では珍しく工程ごとの分業がなく、一人の職人が手懸けます。

◎寺院仏具
お寺にある小物類から机類、須弥壇など大小様々な物を形作るのが木地師です。材料は松・桧・欅などを十分に乾燥させたもので、木の強弱、割れ、木目、塩分を見極め、それぞれの仏具に適した木材を選別して仏具を形づくっていきます。仏具は各宗派や寺院によって寸法や形が異なり、かなりの経験と技術が必要になります。

◎位牌
位牌とは亡くなられた方の戒名・法名を記した木牌のことです。故人の御霊をお祀りするところであり、故人そのものとされています。そのため製造する過程において、木取り加工(電動工具で、余分なところを取り去り、大まかな形を作る工程)や細かな彫刻にもひとつひとつ注意を払いながら製造していきます。位牌には在家用位牌と寺院用位牌とあり地域によって様々な形があります。その地域の要望に沿って様々な形に合わせ製造することができます。

◎神具
主な木製の神具は、神棚、神鏡台、三方(さんぼう)などがあります。三方の製作では、一枚の板を残り1ミリ弱まで切り溝を入れ、木を蒸らし曲げて糊付けした後、昔の名残のままに糊の接着面が離れないよう編み込みを手作業で施します。底や側面も木目に逆らわず一面一面手カンナで仕上げ、手作業でしか出せない木本来の艶を出します。

◎仏像
仏師の仕事は、仏像の形を決めるところから始まります。まず依頼者のご要望を聞き、仏像の姿や大きさにある古来からの決まりをふまえながら、図面や絵で何度もやりとりを重ねていきます。納得のいく形が決まると、伝統的な工法で大まかなところから細部まで彫り進めていき、様々な技法を用いて礼拝の対象として相応しい仏像を完成させます。

◎木花(もっか)
木花は生花の代わりにお供えし、常に咲き誇るという意味から常花と呼ばれます。常花には樹脂製や金属メッキされたものもありますが、木彫りの常花は、製材した木をなるべく無駄にしないように木取り、ノミで荒彫りし、彫刻刀で薄く仕上げます。枝の部分は、部材を丸棒にしたのち、その木を短冊状にさいたり、火を使って曲げていきます。

◎丸金台(まるきんだい)
丸金台とはおりんを乗せる丸形の台です。製造方法、寸法割りは江戸時代から変わらずに継承されています。丸金台は六角形や四角形もありますが、湾曲している丸金台をつくるには特別な技術が必要で、木取りした木地をそぎ落として形づくっていきます。尾張には専門の職人がおり、全国各地でここで製造されたものが使用されています。

◎金具
尾張仏具の錺(かざり)金具は、主に銅・真鍮・銀などを用います。爪楊枝程度の細さの金具から、畳一枚分程の屋根に使用する金具、神輿や山車用の金具など、多種多様な製品を長年培われた多様な技術で仕上げていきます。手打ち金具は鏨(たがね)を用いて丁寧に柄を刻み、ヤスリ掛け等で形成後メッキ加工と箔押しを施し完成です。


尾張仏具は、生産工程を分業することで、それぞれの専門化が進んでいることが特徴です。ここでは尾張仏具の技法を一部紹介します。

◎塗り
漆の歴史は石器時代より始まり、その後仏教伝来により技法が発展しました。漆は権威や神聖な装飾に欠かせない技術として重宝され、現在では各地に広がり様々な技法で幅広く伝わっています。漆塗りは季節によって漆の乾きや粘度をかえたりと長年の勘と経験がものをいい、埃にも細心の注意を払って心を込めて塗っていきます。

◎金箔
尾張仏具の金箔は、漆の拭き取り加減を調整する技法に、艶を抑えた重厚感のある押し方が特徴です。全国に製品を流通させており、地域の需要に合わせた仕上げも行います。金箔はほんの少しの風でも飛ばされてしまうため、細心の注意を払います。また金箔との接着剤となる漆の拭き取り作業には熟練の技術が必要です。

◎彫刻
尾張仏具の彫刻は、それぞれの教義に基づき、動物や植物を伝統的な表現方法で彫ります。材料の選定や表現方法が代々受け継がれ、熟練した職人の巧みな刃物さばきから荘厳で華やかな彫り物が生まれ出ます。また伝統様式を踏まえながらも、新しい表現方法にたえず挑戦することも忘れません。

◎蒔絵(まきえ)・沈金(ちんきん)
沈金とは、塗りに絵を描くための装飾技法のひとつです。彫刀で漆面に紋様を線状に浅く彫り、彫った部分に生漆をすり込み、そこへ金・銀の箔や粉、あるいは、色の粉を沈めて研磨をし金線の紋様を描きます。とても細かく繊細な紋様が表現できますが、それに伴った技術が必要になります。

◎彩色
彩色は、それまでの工程が上手く進んでも、失敗すると全てが台無しとなる最後の工程です。まずは全体の仕上がりをイメージし、絵の具を置き、金泥を引きます。狙い通りの雰囲気になるよう一心に進め、より良い仕上がりへと高めていきます。完成した際、いつまでも手元に置きたい気持ちを閉じ込めて、お寺様の元へ送り出します。


伝統工芸品「尾張仏具(木魚)」製作風景の写真
▲写真提供:尾張仏具技術保存会 様
歴史 尾張仏具は、木製漆塗り製品が中心で、江戸時代初期から下級武士の内職であった錺屋職(かざりやしょく)の技術を基盤に、仏壇や仏具など名古屋城下において生産され始めました。
当時、長野県で産出される良質な絵材を木曽川から伊勢湾に下り、堀川より名古屋に運びこんでいました。
明治期以降には問屋が中核となり、専門性の高い技術を持った職人の分業制によって、
良質な材料をそのままに多種多様で質の高い仏具を大量に生産しました。
尾張地域が日本の中心にあることと問屋の力が強かったため、尾張仏具が全国に広く流通するようになりました。

作業風景の写真
▲写真提供:尾張仏具技術保存会 様
関連URL https://owaributsugu.com/

◆展示場所
尾張仏具技術保存会
〒460-0018
愛知県名古屋市中区門前町6-26
TEL:052-321-6012/FAX:052-331-9748



◆イベント開催
例年10月に名古屋市東区のオアシス21で開催される「尾張名古屋の職人展」にて、尾張仏具製造を実演しています。

ご興味のある方はぜひ足をお運びください。
※2020年はコロナウイルスの影響により中止しています。