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NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。
伝統工芸館 カテゴリ

総数:400件


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総数:400件

伝統工芸品京都府

京都府
工芸品の分類 漆器
工芸品名 京漆器

主要製造地域:京都府




《特徴》
京漆器は日本独自の工芸が確立された平安朝以来1200年の歴史を持つ技法と脈々とその技法を受け継いだ職人達によって造られている漆器です。

漆のもつ特性の一つに速乾性でない事が有ります。
その特性は漆で線を描き、塗込み、乾かない内に金粉を蒔く蒔絵文化は、この漆の特性を利用した代表的なものです。(20℃の温度と80%の湿度を適温として乾かします。)
今一つの漆の特性は乾燥してしまえば非常に堅牢なものになるという事です。
考古学の世界で何千年も前の漆塗りの器物が掘り出されている事で証明されています。

更に今一つ漆はすぐれた接着力をもっています。
下地で器物に麻布を張ったり、和紙を張る時には、この漆を米のりなどをまぜて張り、接着します。
この特性をよく理解し、すぐれた技法にて京漆器は作られています。

また、京漆器は他産地製品には見られない「わび」「さび」といった内面的な深い味わいを備えており、大変優雅でもあるので、特に高級品においては他の追随を許さないものとして現在に至っています。
その洗練されたデザインと、技術、技法により茶道具、食器、調度品、家具等が製作されています。

昭和50年に京漆器は通商産業大臣(現、経済産業大臣)により「伝統的工芸品」に指定されました。

[ 国指定伝統的工芸品(経済産業大臣指定) ]
提供 : 京都漆器工芸協同組合 様

素材 ヒノキ、カツラ、ケヤキ、スギ、マダケ、又はこれらと同等の材質を有する用材若しくは竹材、天然漆
製法・工法 【1】 漆の精製
漆の製造にはその精製加工の工程において「ナヤシ」及び「クロメ」と呼ばれる加工が行われます。
「ナヤシ」とは精製漆の乾燥被膜に光沢及び肉持ちを与えるために、原料の生漆の粘度に応じて2~3時間程度クロメ機(撹拌機)にてまぜる事をいいます。
又、「クロメ」とは「ナヤシ」の加工に引き続き、混ぜながら熱を与えて水分を除去する事をいいます。
この場合、熱源は電熱、ガス、炭火等が用いられ、加熱の温度は40℃以下で行われます。

【2】 木地作り
一般 に漆器の木地の材料は、ヒノキ、スギ、ケヤキ、トチ、キリ等使われています。
椀、鉢等を作る(椀物木地作り)箱などを作る(板物木地作り) 丸い曲物等を作る(湯曲げ木地作り)等に分けられます。
箱物を作る手順として次の作業が行われます。

木取り→荒削り→仕上削り→留め作り→きわ欠き→枠組み 隅木入れ→底板作り→底板入れ→隅丸作り→仕上げ

【3】 漆塗の下地
素地を強固にし、痩せを防ぐと共に、美しく仕上げるため、次のような工程を行います。
◆刻そ
まず木地の継ぎ目に溝を彫り、その部分に漆、米糊、木地粉、綿を混ぜた刻そ漆を埋めて補強します。
◆木地固め
木地表面に直接生漆を摺り込み、素地を丈夫にします。
◆布着せ
糊漆で麻布を貼ります。
◆地付け
砥の粉と少し粒子が荒い地の粉を漆と水で練り合わしたものを、ヘラで付けて乾燥させます。
◆くくり錆
角、面の補強と美しさを表現するため、漆を多めに入れた錆を付けて乾燥させます。
◆錆付け
砥の粉を漆と水で練り合わしたものを数回ヘラで付け乾燥させます。

【4】 漆塗りの下地研ぎ 中研ぎ
錆付けした器物が平滑に成る様に砥石を用いて水研ぎします。
特に器物の隅、角をととのえる作業が、器物の善し悪しを決めます。
さらに、生漆を摺込み(仕上げ錆固め)を終えた器物に、同色の漆を用いて中塗りをします。
◆中研ぎ
充分乾燥させた後、静岡炭等を用いて、平滑に成る様に水研ぎをします。

【5】 上塗り
下地が終わると次に下塗り、中塗りの工程を経て、吉野の紙数枚重ねてこした漆を、女性の毛髪で作られた刷毛を使い上塗りが行われます。
上塗りには(真塗り)黒漆を塗ったり、(色漆塗り)顔料を混ぜてよく練り込んだ色漆を塗ったり、(呂色塗り)後で行う艶上げを良くするため、油分を含まない漆で塗ったり(透漆塗り)、透明な漆を塗って木地の木目の美しさを見せたり、 (変わり塗り)刷毛目塗り等、多種の塗りがあります。

【6】節上げ
上塗りが終わって刷毛目がやや落ち着いたとき、塗面 に付着しているほこりを、鳥の羽軸の先で拾い上げます。

【7】呂色
上塗りし、充分乾燥させた後、次の4つの工程を経ます。
[7-1] 炭で表面を研ぎます
[7-2] 砥の粉等で磨きます(水胴摺)
[7-3] 摺漆をします
[7-4] なたね油と鹿の角粉等を使い手で磨きます
漆の表面 を鏡の表面のように美しく仕上げるためには7-3. 7-4.の工程を数回繰り返します。
永い経験と勘をいかしながら深みのある漆黒の漆面 に仕上げます。

【8】蒔絵
蒔絵は日本漆器を代表する技法で、平安時代に京都で完成された加飾の技法です。
漆で塗り上げられた器物に、何十種という刷毛や筆を使い、漆で模様を描き、その漆の乾かないうちに金粉などを蒔きます。
そして金粉の荒さを変えたり高くあげたり、ぼかしたり、色を変えたりして模様の立体感をかもしだします。
特に、絵の品位 の善し悪しがきまる仕上げの線かき(毛打ち)こそ、腕の見せ所です。
図案から手法に至る総合的な使い方は、永い歴史と自然環境の中で、継承されてきました。

【9】蒔絵の技法
◆研出蒔絵
漆で文様を描き、金粉を蒔き乾かし、金粉を蒔いた蒔絵の上に、漆を全面 に塗り、乾燥後木炭で平らに文様を研きだし、みがき上げ、仕上げる方法。
◆平蒔絵
漆で文様を描き、漆固めをして仕上げる方法。
◆高蒔絵
あらかじめ高く盛り上げて、その上に平蒔絵の技法で仕上げる方法。
◆ししあい肉合蒔絵
研出蒔絵、平蒔絵、高蒔絵などを併用したもの。
◆梨子地
梨子地粉を蒔き、透明漆を塗り研ぎ出した方法。

【10】 螺鈿・青貝
夜行貝や蚫貝等の貝片をちりばめ文様を表す技法で、厚貝(厚さ約1.5mm~3mm)を用いたものを螺鈿、薄貝(厚さ約0.3mm)を用いたものを青貝とよんでいます。
螺鈿は唐より伝わり奈良時代に盛んに行われ、平安時代に和風化されていきました。
一方青貝は貝を薄くする技術が発明され明国より日本に伝わり朝鮮半島をはじめ、アジア一帯に広く普及しそれぞれ独特の作風を持った作品が作られ、貝自身の放つ自然の輝きが人々を魅了してきました。
歴史 漆器は英語で「ジャパン」と呼ばれ日本を代表する工芸品です。

縄文時代には漆工が行われ様々な材料に用いられていました。
奈良時代には蒔絵が生まれ平安時代へと受け継がれ、とりわけ室町時代以降京都を中心に栄えた茶の湯の文化と共に、浸透し全国漆器産業の中心となり栄えました。

もともと中国で始まったと伝えられる漆器は、日本でも縄文時代にはすでに広まり、その種類も生活用具だけでなく、仏具、武器、文房具など多岐に及んでいました。

漆地に金粉を散りばめたように見える末金鏤(蒔絵)が生まれたのは、奈良時代のことで、この技法は平安時代へと受け継がれ、発展して、やがて研出蒔絵や平蒔絵が完成されました。
さらに、鎌倉時代から室町時代になると、高蒔絵、肉合蒔絵が行われますが、この頃には寺院や貴族などが、特定の蒔絵師をかかえるようになります。この時代に作られた「東山時代物」と呼ばれる数々の作品は、当時の京漆器の精彩ぶりを端的に示していますが、それは「わび」「さび」の境地に撤したまことに味わい深いもので、まさに日本の漆工を代表するものといえます。
安土桃山時代の京漆器は、新しく台頭してきた武士階級の趣味や好みを色濃く反映したものとなり、その様子は大変華麗なものでした。
しかし、江戸時代に入ると、こうした豪華さ華麗さの中にも繊細で緻密な趣を持つものが目立つようになります。嵯峨蒔絵や光悦などの作品からもそれがうかがい知れます。

以上のように、室町時代以降、京都は全国漆器産業の中心となり栄えますが、その原動力となったのは、数多くの名工の存在であり、さらには彼らの手と技による品質とデザインの優秀性であることはいうまでもありません。

昭和58年「京漆器-近代の美と伝統-」発刊にあたり、明治以降分散していた資料収集が数年にわたり行われました。そこには業界の歴史、作品、千人を越える工人の履歴等が判明しました。先人達の伝統の積み重ねが現在の京漆器です。このすばらしい技術は今後も受け継がれていかねばなりません。

近年、量から質、すなわち見かけだけが良いものより本当に秀れたものを見直すという消費者指向の変化から、純粋の伝統的な京漆器があらためて脚光を浴びています。今後生活に潤いを与えてくれる漆器をもっと取り入れたいものです。
京都漆器工芸協同組合では、工人四十数名、その大半が伝統工芸士の資格を持ち、商部二一数名の協力のもと、ハイレベルな作品作りとその需要の拡大に努力しています。
関連URL http://www.kyo-shikki.jp/index.html

◆展示場所
京都伝統工芸協議会常設展示場 ギャラリー圓夢
 〒605-0825 京都府京都市東山区高台寺西側 圓徳院敷地内 京・楽市「ねね」2F
 TEL&FAX : 075-525-1334
 定休日 : 水曜休廊日
 アクセス : JR京都駅市バス(206系統)にて東山安井下車徒歩5分



協同組合京都クラフトセンター
 〒606-8323 京都府京都市左京区聖護院円頓美町17
 TEL : 075-761-7000 / FAX : 075-761-2684
 営業時間 : 10:00~19:00 年中無休
 アクセス : 京阪本線 神宮丸太町駅 徒歩10分
        地下鉄東西線 東山駅 徒歩15分

公益財団法人 京都伝統産業交流センター 京都伝統産業ふれあい館
 〒606-8343 京都府京都市左京区岡崎成勝寺町9番地の1 京都市勧業館みやこめっせ 地下1階
 TEL : 075-762-2670 / FAX : 075-761-7121
 会館時間 : 9:00~17:00(入館は16:30まで)
 休館日 : 夏季休館日(8/19~20)、年末年始(12月29日~1月3日)
 入場料 : 無料