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NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。
伝統工芸館 カテゴリ

総数:400件


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総数:400件

伝統工芸品岡山県

岡山県
工芸品の分類 漆器
工芸品名 郷原漆器

主要製造地域:岡山県




《特徴》
郷原漆器の一番の特徴は、昔から伝えられた木地作りの技法にあります。まず、地元に自生するヤマグリの木を、生木のまま輪切りにして、すぐに年輪を中心にロクロで木地を挽き、後で乾燥させます。

[ 岡山県郷土伝統的工芸品 / 岡山県指定重要無形民族文化財 ]
提供 : 郷原漆器生産振興会 様

素材 クリ・備中漆
製法・工法 【1】 木地つくり
クリの木を生木のまま輪切りにして、年輪の芯を中心に生木のままで木地挽きをし、約6ヶ月間乾燥させます。

【2】 生地固め
約半年ほど生木の木地をよく乾燥させてからサンドペーパーできれいに磨き、その木地に漆の木から採取したままの生漆(きうるし)をしっかり塗り込んでから湿度65~70%、温度20度程度の室に入れると、約1週間で木地は硬く固化します。
これを木地固めと言い、漆器つくりの土台となる作業です。

【3】 底の麻布貼り
お椀の場合、熱い汁物を入れますので、内側を朱漆または黒漆で仕上げるには、補強するために底の部分に丸く切った麻布を生漆と小麦粉を混ぜて練った接着力の強い麦漆(むぎうるし)を用いて貼り付けます。
よく固化するまでに約1ヶ月を見込んでおります。

【4】 珪藻土で下地つくり
底に貼り付けた麻布が良く固化してから、お椀の内側に透漆にベンガラを混ぜた漆を塗り、その上にすぐに蒜山産の珪藻土を刷毛を用いて万遍に蒔きます。
この方法の下地を「蒔き下地」と呼びますが、数ある下地作りの方法の中で最も強い下地と言われております。蒔き下地は三回行います。
最初は珪藻土の粉末の大きいものを用い、二回目には中ぐらいのものを、三回目には粒子の細かいものを蒔きます。
それぞれ蒔いた後は固化してから生漆を塗り強度を高めます。これを「粉固め(ふんがため)」と言います。

【5】 下塗りと中塗り
珪藻土による下地がよく固化してから滑らかに磨き、その上に黒の下塗り漆を塗り、固化してからまた磨き、今度は黒の中塗り漆を塗り、固化してからきれいに磨きます。

【6】 朱または黒の仕上げ塗り
中塗りを磨いた上を朱漆または黒漆で仕上げ塗りを行います。
郷原漆器では「塗り立て」とも「花塗り」とも呼ばれる塗りっ放しで仕上げる方法を用いています。
この作業にはホコリが付かないように塗り上げる熟練が必要です。
このような方法で塗り上げた漆器は、使うほどにしっとりとした、潤いのある艶に仕上がってきますので、日々の暮らしの中で、しっかりと使っていただきたいものです。
この塗りのほかにロイロ仕上げがありますが、これは上塗りした面をさらに磨いては生漆を塗って拭き取り、固化してから磨き粉で艶出しをして仕上げる方法です。
歴史 岡山県最北部に位置し、鳥取県に接する真庭市の蒜山高原は、年間200万人を超える観光客は訪れる、雄大な高原地帯です。
その一隅にある郷原という集落は「郷原漆器」と呼ばれる普段使いの漆器産地でした。
伝承によれば、郷原漆器の始まりは明徳年間(1390~1394年)と言われております。
元禄時代の古文書には「郷原という地名は西茅部村にあり、住む人は皆漆器を作って売っている」との事が書かれており、江戸時代の記録には年間に40万点を生産していたことが書き残されております。
作られた郷原漆器の70~80%が山陰地方に出荷され、美しくて丈夫で安価なことから、「郷原輪島」とも呼ばれ、普段使いの器として広く用いられていました。
しかし、昭和の代に入り不幸な戦争の勃発による人手不足と、漆が統制品になり入手困難になったことも重なり、昭和20年の終戦を境に生産は途絶えてしまいました。

途絶えた郷原漆器の復活は、昭和60年から岡山県郷土文化財団によって調査研究が進められ、その試作品をもとに、平成元年から地元有志による復活生産への取り組みが始まりました。
平成4年には「郷原漆器生産振興会」を立ちあげ、平成8年には岡山県の補助を得て「郷原漆器の館」(真庭市蒜山上福田)が生産拠点として建設され、今日に至っております。

◆展示場所
郷原漆器生産振興会 郷原漆器の館
 〒717-0602 岡山県真庭市蒜山上福田425
 TEL : 0867-66-5611
 定休日 : 毎週木曜日