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NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。
伝統工芸館 カテゴリ

総数:400件


都道府県

総数:400件

伝統工芸品熊本県

熊本県
工芸品の分類 その他工芸品
工芸品名 山鹿灯籠

主要製造地域:熊本県




《特徴》
山鹿灯籠は、熊本県山鹿市のみに伝わる、手漉和紙と糊だけで作られる立体的な工芸作品です。「骨なし灯籠」とも呼ばれるように、手漉和紙を折り、糊付けし、内部を空洞化した柱や垂木などの部材を中心に組み上げることを特徴としています。

本来の制作の目的は、旧暦の7月16日の深夜、紙細工の灯籠を山鹿大宮神社に奉納し(上がり灯籠)、供覧された後、午前零時に全て神社境内の灯籠殿に納めること(下がり灯籠)です。現在でも、県内外から多くの観光客が「灯籠見物」に訪れています。

[国指定伝統的工芸品(経済産業大臣指定)]
提供:山鹿灯籠振興会 様

素材 和紙
製法・工法 灯籠は、材質によって木灯籠・石灯籠・金灯籠等に分類されます。ここでは金灯籠の製作工程を紹介します。
伝統工芸品「山鹿灯籠」の製作工程
部品切込み工程
【1】裏打ち
金灯籠の素材となる灯籠紙を作ります。金紙に糊を塗り、その上に和紙を貼り合わせ、厚く丈夫にするために裏打ちをします。

【2】歩(ぶ)つき
灯籠紙の上に歩紙(ぶがみ)を置きます。歩紙とは、伝統的な灯籠の寸法を紙等に刻んだもので、規格ごとに穴が空いています。この穴に押針を刺し、下に置いた灯籠紙に点穴を付けます。この点穴を目印に、天井・六角・束柱等の直線角材部分を切り出します。

【3】蛍貝(ようがい)ひき
歩つきをした灯籠紙の点穴と点穴との間を蛍貝という金属製のヘラでなぞり、節目をつけます。

【4】天井切り・六角切り・束柱切り
歩つき、蛍貝ひきをした灯籠紙を切り取り線に沿って小刀で切り離します。天井・六角・束柱等の各部品を切り離します。

【5】雛形取り
擬宝珠(ぎぼし)、蕨手(わらびて)、足、手びれ、足びれ、底紙と呼ばれる各部品は、伝統的に規格された雛形から型紙を作ります。

【6】型紙毛がき
雛形取りした型紙を灯籠紙の上に乗せ、鉛筆にて模写することを型紙毛がきといいます。これは湾曲した部品製作に使用するもので優美な型を崩さないために工夫されたものです。

【7】擬宝珠切り・蕨手切り・足切り・手びれ切り・足びれ切り・底紙切り
型紙毛がきをした灯籠紙を切板の上に乗せ、切取線に沿って小刀で切り離します。

【8】毛がき
歩紙や型紙を使用せず灯籠紙にコンパス、定規等を使って鉛筆で直接各部品の型取りをする技法です。台座、欄間、灯袋、弓、紋柱、紋、紋紙等の部品制作に用いられます。

【9】台座切り・欄間切り・灯袋切り・弓切り・紋柱切り・紋切り・紋切り
毛がきをした部品を切り取ります。

【10】ポンチ打ち抜き
灯袋や欄間は、六角形の形状のポンチを使用しハンマーで叩いて穴を空けます。

部品糊つけ工程
【11】そくい糊作り
そくい糊は日本全国至る所でいろいろな細工物用として使われている「米飯粒」と同様ですが、山鹿灯籠に使用する場合は良質の米が必要となり、さらに炊き具合に修練を要します。現在は、強度及び作業効率や虫食・カビ防止の面から水性接着剤を使用しています。

【12】擬宝珠小口つけ
部品切込工程にて切離した6枚の部品(擬宝珠紙)を1枚ずつ掌の上に乗せて「こね」て、各1枚ずつ小口つけをします。「こね」とは紙を湾曲させる技法をいい、小口つけとは、糊しろを作らず紙の厚みのみに、そくい糊をのせ貼り合わせる技法をいいます。

【13】蕨手置揚げ・足置揚げ・弓置揚げ
2枚同時に切り離した灯籠紙の側面に紙を小口つけします。2枚の灯籠紙を繋ぎ空洞を作るように巻いていく紙を、置揚げ紙といいます。置揚げ紙を「こね」ながら巻くように糊づけします。

【14】天井糊しろつけ・台座糊しろ・六角糊しろつけ・束柱糊しろつけ
天井・台座・六角・束柱は、小口づけせず、糊しろを造ってそくい糊で貼り合わせます。

【15】手びれこね・灯袋こね・足びれこね
手びれ、灯袋、足びれ等は糊つけを必要としないものですが、曲面に密着させるため、それぞれの部品紙を掌の上に乗せ密着させる曲面に応じて竹筒で「こね」て曲面を出します。その他、「こね」の作業は擬宝珠・蕨手・足・弓等を製作する際にも行います。

全体組み立て工程
【16】灯袋造り
上下の六角の間に6本の弓を接着し灯袋を造ります。

【17】地窓造り
灯袋の下部に地窓を造ります。

【18】天窓造り
灯袋の上部に天窓を造ります。

【19】紋造り
まず、灯袋の中に紋を入れるための紋柱を造ります。灯袋の六角の内面に6本の紋柱を各角に接着します。その後、各紋を糊つけした紋紙を紋柱の内面に接着します。

【20】底紙はり
六角の底部に底紙を貼付けます。

【21】足つけ
六角の角の中心部に6本の足を接着後、足の内面に沿って12枚の足びれを糊つけします。

【22】蕨手つけ
六角の角の中心部に6本の蕨手を接着後、蕨手の内面に沿って各6枚の手びれを糊つけします。

【23】擬宝珠造り
天井の上面中心部に台座を糊つけした後、台座の上に擬宝珠を乗せ糊つけします。

【24】天井はり
蕨手つけにて糊つけした手びれの上面に天井を接着します。

【25】点検
上下各6か所に糊つけした蕨手と足の高さを揃えます。このとき、上から蕨手・束柱・弓・紋柱・束柱・足の部品にずれがないことを確認します。
歴史 熊本県山鹿地方は、江戸時代初期より楮の栽培、紙漉が行われていたところです。寛永9年(1632年)、細川忠利が肥後に入国後の「肥後国郷帳」に各地の特産があげられていますが、和紙の原料となる楮は、益城・八代・芦北・山鹿・玉名・菊池の各郡で栽培されていることがわかります。

近世庇護の紙漉の始祖は、加藤清正が高麗の陣で、連れ帰った慶春・道慶です。彼らは最初飽田郡亀井村(現熊本市)に住み、細川入国前後に山鹿郡芋生村の川原谷(現山鹿市)に転住しています。その技術は子孫にも受け継がれ、藩の保護により発展しました。このように優れた素材があったからこそ、紙灯籠が作られるようになったのだと考えられます。

伝統を受け継がれてきた山鹿灯籠は、灯籠師松本清記がその技法を集大成し、後継者の確保と育成を行ったことで、近代的な伝統工芸品として普及し、市井に認知されていきました。
関連URL https://www.yamagatourou.jp

◆展示場所
山鹿灯籠民芸館
〒861-0501
熊本県山鹿市山鹿1606-2
TEL/FAX:0968-43-1152
開館時間:9:00~18:00
休館日:12月29日~翌年1月1日


大宮神社灯籠殿
〒861-0501
熊本県山鹿市山鹿196
TEL/FAX:0968-44-1257
開館時間:8:00~16:30
休館日:8月16日午後