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NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。
上総掘りの技術 | 民俗技術 カテゴリ

総数:127件

伝統文化

上総掘りの技術
伝統文化の分類 民俗技術
文化名 上総掘りの技術



上総掘りの技術《特徴》
「上総掘り」とは、明治20年代後半に千葉県君津市で考案された、深井戸掘りの技術です。

西上総地方の地形を利用して、地下水を自噴させました。農業用水や飲料水を確保するために多くの井戸が掘られ、現在も利用されています。また、水だけでなく温泉や天然ガスの掘削にもこの技術が使われてきました。

また、「上総掘り」のは、身近な竹を道具として利用したことや、掘削が少人数でできるという特徴があります。中でも、一番の特徴は、水が自然に地上まで吹き出す井戸が掘れるということでしょう。このような井戸を、自噴井戸または掘抜井戸といいます。

上総掘り発祥の地は、君津市の小櫃地区と小糸地区だといわれています。両地区とも川岸段丘が発達した河川中流域で、飲料水・農業用水の確保が困難な場所でしたので、より良い水を得る手段の一つとして井戸掘り技術の開発がすすめられました。

「上総掘り」は、まず、足場となる櫓(ヤグラ)を組み、上部に竹の「ハネギ」(重い鉄管を上下するときのバネ)をとりつけます。そのハネギの弾力を利用して長さ約7メートル・重量約30キログラムの鉄管を上下させて、鉄管の重量を地底に打ちつけて地層を砕いて穴を掘り進んでいきます。鉄管の下方には地層を砕く円形のノミ(鉄管の先に取り付けて掘削孔の底を突き崩す鉄製の道具)が固定され、管の内側には逆止弁が仕掛けてあります。

鉄管の長さをこえて掘り進められていくと、鉄管の上方に一本が7~8メートルの竹ひごを接ぎ足しながら、さらに掘り続けていきます。掘削の際には、掘り孔に比重の大きな粘土水を入れ孔の壁が崩れないように保護します。また、摩擦で熱くなるノミを冷やしたり砕いた掘り屑を粘性にし、取り込みやすい状態にするために粘土水を補給し続けます。

鉄管で砕いた砂や岩盤の掘り屑は、筒状で下方の内部に逆止弁を取り付けた「スイコ」という、掘り屑を専門に取り込む道具で吸い込みます。直径約4メートルの木製のヒゴグルマ(鉄管・スイコ・その他の道具の上げ下げに使うもの)の中に人が入り、体重を利用して回転させ、ヒゴグルマに紐で結びつけられた竹ヒゴを巻き取ることによって竹ヒゴのもう一方につながれた「スイコ」を地上に引きあげ、孔中の掘り屑を吐き出します。

孔の中に掘り屑が無くなると再び鉄管で掘り進み、次々と竹ヒゴをつないでいきます。このような工程のくり返しで、地下何百メートルも深く掘っていくことができます。水をとる層に達すると、桶(ケーシング)を入れます。昔は真竹を何本もつないで孔に入れていましたが、現在は、真竹の替わりにビニール管や鉄管を使用することもあります。

人々の暮らしを潤し、遠く海外にまで伝えられたこの技術は、昭和40年代の機械化の中で、一旦その役割を終えました。しかし、近年になって、自然と共生する道具立てや技術の特徴から、発展途上国への海外協力ばかりでなく、地球環境保護の視点からも注目を集めています。

「上総掘りの技術」は、平成18年3月15日文化庁から技術保持団体として「上総掘り技術伝承研究会」(会長 鶴岡正幸)が無形民俗文化財の指定を受け昔ながらの技術を保持、伝承する活動を行っています。


[国指定無形民俗文化財]
提供: 袖ケ浦市郷土博物館 様

袖ケ浦市郷土博物館

所在地 千葉県上総地方
展示場&開催場所 袖ケ浦市郷土博物館内に「上総掘りの技術」に関する展示室がございます。
住所:千葉県袖ケ浦市下新田1133
Tel 0438-63-0811
問い合わせ先 袖ケ浦市郷土博物館
Tel 0438-63-0811
アクセス ■車をご利用の方
東関東自動車道館山線 姉崎袖ケ浦ICから約20分
アクアライン連絡道  袖ケ浦ICから約15分
■電車・バスをご利用の方
JR内房線 袖ケ浦駅下車
平川行政センター・のぞみ野ターミナル行きバス乗車 袖ケ浦公園停留所下車(バスの本数が少ないのでご注意ください)
観るポイント 海外での井戸作りでも、大変活躍しているグローバルな伝統文化です。地球にも優しく、昔ながらの技術を大切に守っています。
伝統文化の
体験・一般参加
■「上総掘りの技術」を体験いただけます。
場所:袖ケ浦市郷土博物館
日時:6月初旬(ミュージアムフェスティバルの開催日)
■「上総掘りの技術」を技術継承の一環として見学いただけます。
日時:毎週日曜日
※ 要事前連絡(袖ケ浦市郷土博物館まで)