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NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。
伝統工芸館 カテゴリ

総数:400件


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総数:400件

伝統工芸品広島県

広島県
工芸品の分類 文具
工芸品名 川尻筆

主要製造地域:広島県




《特徴》
川尻筆は、動物の毛を主原料とし、高品質の「ねりまぜ」という技法を扱い、やがて大量生産の「ぼんまぜ」も取り入れ、次第に「川尻筆」の名は全国に知られるようになりました。1本の筆が出来るまでには大勢の人の気配りと様々に入り組んだ工程を経なければいけません。川尻筆は1本1本、昔ながらの手作業で作られています。穂首製造、軸製作を経て完成工程を終えるまでには、作るものの技術と情熱と愛情が注がれています。

[ 国指定伝統的工芸品(経済産業大臣指定)]
提供:川尻毛筆事業協同組合様

素材 獣毛
製法・工法 【1】原毛の選別作業
野生の動物の毛は、擦れたり切れたりして、状態も様々です。職人の長年の経験と勘で、目と手触りだけで良質なものだけを選別していきます。
【2】綿抜き
しっかりと毛を乾燥させたのち、原毛の根元に付いている綿毛を金ぐしを使い取り除きます。
【3】火のし
アイロンのように毛をまっすぐに伸ばす役割と、熱により脂分を溶かし出す役割があります。
【4】灰もみ
脂分が溶け出てきたら熱が冷めないうちに鹿皮で巻き、丹念に揉むことで脂分を抜き取っていきます。
【5】先寄せ
繰り返しクシをかけた毛を真鍮製の寄せ金の上に乗せ、寄せ板に当てて少しづつ毛先を揃えていきます。
【6】寸切り
筆のかたちを作るため、一の毛から腰の毛までそれぞれの寸法にはさみで切断します。
【7】毛組み
一の毛から腰の毛まで、使用する原料の性質、分量を考えながら選んでいきます。筆作りにおける設計図のようなもので、筆の作り手が最も経験とセンスを問われる所でもあります。
【8】平目作り
毛の根元をそろえ、逆毛やむだ毛を抜きとり、水でしめします。適量に割り、おさえ竹でおさえて、櫛でもつれ毛をとき平目にします。
【9】練り混ぜ
一の毛から腰の毛まで、それぞれ一定の分量に取り分け重ね合わせて一枚の「平目」にします。これを薄く伸ばして折りたたむように重ねます。これを何度も繰り返していきます。
【10】芯立て
平目を一定の大きさに割ります。これをこまに通して形を整えます。むだ毛を取り除き芯をこまから外して乾燥させます。
【11】上毛巻き
芯の外側に薄く引き伸ばした毛を巻き付けます。上毛は化粧毛とも言われ、美しいつやのある毛が使われます。
【12】焼き締め
乾燥させた穂の根元を麻糸で縛りしっかりと締め上げ、サッと熱したコテを当てて焼き固めます。このようにして穂の毛崩れや抜け毛を防ぎます。これで穂が完成します。
【13】繰り込み(軸入れ)
繰り込み台の上で軸を回転させながら、小刀を押し当てた軸を手のひらを使って回転させながら穂の太さに合わせて削っていきます。穂を固定してさばき筆が完成します。
【14】のり固め
ふのりをしっかりと穂に含ませた後、余分なのりを取り、仕上げクシをかけて毛並みを整えます。さらに麻糸を穂首に巻き付け不要なのりを取り除きます。最後に指先で形を整え立てかけて一週間程度自然乾燥させれば完成です。
伝統工芸品「川尻筆」の製作工程
歴史 川尻が筆とかかわるようになったのは、江戸時代の末期からで、天保9年(1838年)、川尻の菊谷三蔵が摂州(現在の兵庫県)有馬から筆を仕入れ、寺子屋などに置いて販売したのが始まりです。
筆の商売で成功した三蔵は、単に仕入れるだけでなく、筆の製造を村人に呼びかけました。川尻筆が初めて作られたのは安政6年(1859年)川尻の上野八重吉が9年間の有馬筆修行から帰った後、出雲より軸職人を雇い入れ、高品質の「ねりまぜ」を扱ったのが最初でした。やがて大量生産の「ぼんまぜ」も取り入れ、何人かの業者がこれに続き、「川尻筆」の名は次第に全国に知られるようになりました。
明治時代になると、学校の制定、小学校令の改正で筆の需要が高まり、川尻筆は大いに発展しました。第二次世界大戦中、一時衰えた時期もありましたが、それでも川尻筆の伝統と技術は途絶えることなく、今もなお受け継がれています。

◆展示場所
お問合せ
川尻毛筆事業協同組合
〒737-2603 広島県呉市川尻町西1丁目2-2
TEL:0823-87-2395

川尻筆づくり資料館
〒737-2631 広島県呉市川尻町502-39
TEL:0823-87-2390