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NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。
伝統工芸館 カテゴリ

総数:400件


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総数:400件

伝統工芸品奈良県

奈良県
工芸品の分類 その他工芸品
工芸品名 奈良団扇

主要製造地域:奈良県




《特徴》
奈良団扇の特徴は透かし彫りを含めた華やかな見た目と、実用性の高さです。奈良の風景や鹿、正倉院の文様などが透かしで扇面に彫られているデザインは、シンプルで可愛らしいものから、全面に細かい透かしを施したものなど多くの模様があります。仏教の陰陽五行に基づく色合いも鮮やかで、涼しげな透かし彫りと合わさり華やかな見た目になっています。

また、奈良団扇は観賞用ではなく実用性の高い団扇としても知られています。扇面の骨数は60~80本以上あり、他の団扇と比べ倍以上の本数あります。また骨一本一本も、半分以下の細さに割かれている為、団扇の“軽さ”と“しなり”を生み出し、奈良団扇独特の優しい中にもしっかりとした風をおこすことができます。さらに30年から40年以上使っていただける丈夫さも魅力です。

製造はすべて天然素材で、機械を一切使わず手仕事にこだわり、材料はもちろん道具まで手作業で作られています。1年をかけて1本の団扇を作り上げる作業工程も、他の団扇作りとは異なる部分が多くあります。

目で楽しみ、扇いで涼を感じる奈良団扇は、古都奈良から歴史ある風を運んでくれます。

[奈良県指定伝統工芸品]
提供: 池田含香堂 様

素材 和紙、竹
製法・工法 1,骨作り
「小割の差し柄」(※1)と呼ばれる竹の骨組みを作る。

(※1)…下記の2つの特徴を合わせたもの
◎小割…通常のうちわの骨組のように割いたあと、その一本の骨をさらに半分に割り細く、骨数を多くする。
◎差し柄…扇面と持ち柄の竹が別の竹になっている。また、奈良団扇の差し柄は紙を貼る前に差し柄をするのが特徴です。他の差し柄を使ったうちわの多くは、扇面の紙を貼りあげた後に柄をつける。

2,紙染め
ドーサ引き(※2)した手すき和紙に、丸刷毛で染めていく。染料は、大豆のしぼり汁や膠、胡粉など天然のものを使用。

(※2)ドーサ液の材料は、膠、松ヤニ、ミョウバン。効果としては、和紙の色にじみをなくし、発色を綺麗にし、また丈夫にする。

3,透かし彫り
10本分20枚の和紙を重ね合わせ、手製の小刀を使い一気に模様を「突き彫り」していく。

4,叩き貼り
骨組みと透かしを施した和紙を、木の板で糊を叩きつけながら表裏ズレないように貼りつける。この時、骨が細かすぎるため同時にヘラを使い「骨並べ」を行う。また使用する糊は、米粉から作る。

5,乾燥
天井に張り巡らせた麻紐の上で自然乾燥。次に重石を使い圧しをかけながら乾かす。

6,念付け
扇面に骨を浮かびあがらせる作業。専用の念付け棒を使い一本一本浮かびあがらせる。骨と和紙の隙間を埋め丈夫にするとともに、扇面全体が立体的になり美しく見える。

7,手元貼り
扇面下部に手元と呼ばれる、細工のある和紙を貼る。

8,アゴ落とし
扇面下部の余分な部分をそぎ取る。

9,裁断
半円上の刃物と木槌を使い、余分な紙を叩き切り、丸く裁断する。

10,ヘリ巻き
裁断面を隠すように2,3ミリの薄く長い紙をヘリにまいていく。

11,仕上げ
歴史 奈良時代、大陸から伝えられた団扇を奈良の春日大社の神職が手内職として作ったのが始まりです。この「禰宜(ねぎ)うちわ」と呼ばれていたものが、奈良団扇の前身であり日本で最も歴史の古いうちわです。

今現在奈良団扇を製造販売している店は、江戸後期創業の池田含香堂一軒のみです。
関連URL http://narauchiwa.com/

◆展示場所
池田含香堂
〒630-8224
奈良県奈良市角振町16
TEL: 0742-22-3690 / FAX: 0742-22-7122
営業時間: 9:00~19:00
定休日: 無休(9月~3月は月曜日)
アクセス: 近鉄奈良駅4番出口徒歩5分
Instagram: @narauchiwa