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NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。
伝統工芸館 カテゴリ

総数:400件


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総数:400件

伝統工芸品福島県

福島県
工芸品の分類 和紙
工芸品名 海老根伝統手漉和紙

主要製造地域:福島県




《特徴》
郡山市の中田町海老根地区には、今から350年ほど前の江戸時代から受け継がれている伝統的工芸品があります。それが、海老根伝統手漉和紙です。

主な原料は楮とトロロアオイです。クワ科の落葉低木である楮は繊維が太く長く強靱なので、紙漉きに適しています。トロロアオイは、オクラに似た花を咲かせる1年草で、根っこの部分の粘液「ネリ」が紙漉きにおいて重要な役割を果たします。

一般的に、紙は白いものが太陽の光に当たり変色し、黄色みがかっていくイメージがあります。しかし、海老根伝統手漉和紙は、その真逆の特性を持っています。最初は黄色みがかっており、時が経つにつれてだんだんと白くなることから、生きている紙「生紙(きがみ)」と呼ばれています。

紙を白くするため、化学薬品で漂白することが多い中、海老根では薬品を使用しません。無添加で作っているので生紙となり、時間の経過と共に白くなる特性を持つのだそうです。
紙質が強く丈夫なため、特に障子紙として高い評価を得ています。

現在では、地元小学校の児童が卒業証書用の和紙作り体験をしたり、毎年和紙を利用したライトアップイベントなども開催されています。

[ 福島県指定伝統的工芸品 ]
提供 : 海老根伝統手漉和紙保存会 様

素材 楮、トロロアオイなど
製法・工法 【1】 楮の裁断、蒸し、乾燥
収穫した楮を裁断し、長さをそろえます。
長さがそろった楮を備え付けの大きな釜で蒸し、皮をはぎ、その皮をまとめて乾燥させます。

【2】 ゴミ除去、叩解
表面の余分な黒皮を取り除きます。
黒皮を取り除いたものは白皮と呼ばれ、これをかまどに備え付けた大きな釜でじっくり煮熟します。その後、楮を井戸水に晒します。
続いて、専用の棒で楮を叩き、繊維を細かく分解します。この作業を叩解と言います。

【3】 漉き、圧搾
舟と呼ばれる水槽に、水と楮、そしてネリを入れ、馬鍬という大きなクシのような道具と、竹の棒でよくかき混ぜます。楮の繊維が均一に分散した舟の水を、簀桁という紙漉きの道具ですくい、前後左右に揺り動かしながら紙を漉いていきます。
紙は、均一の厚さに漉くことがとても難しく、楮やネリを入れる量の見極めて紙を漉く技術は、職人の勘と経験によるものなのです。その後プレス機で圧搾し、一晩かけてゆっくりと水を搾っていきます。

【4】 乾燥
圧搾した紙を乾燥させます。漉く紙の厚さは一定なので、卒業証書など厚手の紙にしたいときには、3枚重ねて乾燥させ、一枚の紙にします。
歴史 海老根地区の和紙漉きの始まりは、江戸時代頃からであると伝えられています。
和紙の原料となる楮が、阿武隈山系に豊富にあったことや、きれいなわき水があったことが農家の冬の副業としての和紙づくりを盛んにしました。

江戸時代末期から明治時代にかけての最盛期には、寺院と庄屋を除いて地区の全戸数で紙漉きが行われたと伝えられています。
昭和に入ってからも障子紙や唐傘紙用として紙漉きは続けられてきましたが、昭和63年に最後の一軒が廃業し、一旦途絶えます。しかし、平成10年に和紙の再興をめざし「海老根伝統手漉和紙保存会」が結成されました。保存会が結成されたからといって、すぐに紙ができた訳ではありませんでした。各戸にあった紙漉きの道具を集め、工房やかまどを作り、原料となる植物を育てるなど、作るまで2年もの歳月がかかったといいます。

◆展示場所
海老根伝統手漉和紙保存会事務局
 (工房直売及び受注製造販売)
 〒963-0712 福島県郡山市中田町海老根北向38
 TEL : 024-943-4264



◆イベント開催
秋蛍
海老根手漉和紙を使ったイベントです。和紙を使った行灯に、
住民や海老根小学校の児童、一般市民が絵や文字を描き、
ろうそくをともした光のページェントが、和紙工房周辺を舞台に
繰り広げられます。
海老根の里の夜を、秋の蛍のようにほのかに幻想的に映し出します。

 開催時期 : 9月中旬(柳橋歌舞伎と同時期)
 会場 : 海老根手漉和紙工房 周辺