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NPO法人日本伝統文化振興機構は、日本の伝統文化の継承・創造・発展のための活動を行っております。
伝統工芸館 カテゴリ

総数:400件


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総数:400件

伝統工芸品奈良県

奈良県
工芸品の分類 和紙
工芸品名 吉野手漉き和紙

主要製造地域:奈良県




《特徴》
吉野手漉き和紙には、千年以上もの歴史と風土、そして吉野で漉く職人の誇りが漉き込まれています。

和紙ならではのしなやかさや、柔らかい質感と深みのある風合いが愛され、美術工芸品や美しいインテリアなどにも利用されているほか、ウルシ工芸の生命といえるウルシを濾す紙まで作られます。
いわば日本の伝統的な美術工芸を支える重要な役割を果たしてきた柱の一つともいえましょう。

コウゾの皮は寒中の澄み切った水にさらすのが良い紙作りの秘訣。
近年になって水質が落ちたといわれる吉野川ですが、この清流がここの和紙作りを育ててきたともいえます。

《和紙の種類》
宇陀紙(国栖紙)
白土を入れて漉いてあるのでやわらかみがあり、虫がつきにくく、丸めても弾力で戻らず、静かにそっと納まるという特徴を持っています。掛け軸の総裏紙として使われいます。

美栖紙
漉いた紙をすぐに板に張り付ける(簀伏せ)ため、柔らかみがあり、湿度の変化があっても紙幅に伸縮がなく、表装用中裏紙として欠かすことのできない和紙です。

吉野紙
美栖紙と同様に簀伏せをして作られています。
特徴としては、薄くきめが細かく、漆濾しを行う場合にはなくてはならない紙です。

吉野杉皮和紙
吉野には「吉野材」という全国的に有名なブランドがあり、製材する際に廃棄する杉の樹皮を資源として有効利用しようという観点から生まれた紙です。
吉野杉の内樹皮と楮の繊維を混ぜて漉きあげることで、独特の暖かみのある色彩と手触り感の良い紙が出来上がります。

草木染め和紙
和紙の原料である楮(こうぞ)に、桜・あけび・ねむ・トマト・ヨモギ・アイ・サカキなどの樹皮を炊きだして混ぜ合わせたものを和紙に漉いたものです。

[ 奈良県指定伝統的工芸品 ]
提供 : 福西和紙本舗 様

素材 コウゾ
製法・工法 普通、和紙ができるまでには48回の工程が必要と言われています。厳冬期を中心に製作される和紙は、冷たい水を使うため、そうとうな重労働になります。

【1】 楮の伐採
楮畑から楮を刈り取り、一定の長さに揃えて切ります(1.2m)

【2】 楮蒸し(原木蒸し)
約4時間楮を蒸します。

【3】 楮皮剥ぎ
蒸した原木より樹皮を剥ぎ取ります。これを黒楮(クロソ)と言います。

【4】 黒皮削り
楮の樹皮より表皮を取り除きます。これを白楮(シロソ)と言います。

【5】 天日干し
繊維を緊密にするため、白楮にして2年間天日干しをしながら貯蔵します。

【6】 水浸漬(白楮ゆすぎ、または楮さらし)
白楮の束を花びらの形に開かせた形で吉野川で晒します。(※1)晴天の日に、冬は約8時間。夏は4時間。

【7】 塵切り
カミソリの刃で白楮の傷の部分を取り除きます。

【8】 白楮の煮熱(白楮煮き、または楮煮き)
草木灰汁(※2)でマッタリと煮ます。(ソーダー灰で煮ることもある。)

【9】 水洗い(紙素出し)
草木灰汁を洗い流します。

【10】 塵取り
丁寧に紙素の塵を取り除きます。

【11】 打解(紙素打ち)
紙素を石の上で、2本の樫の棒で細打ち(※3)します。

【12】 .解繊(ザブリかけ※4)
ねり(※5)と白土を加え、ザブリでかきまぜます。

【13】 手漉き(紙漉き)
厚さを一定に揃えるため、特に注意しながら漉きます。

【14】 紙床の圧搾(紙棚(※6)の水とり)を行い、湿紙の乾燥した後、選別し、出荷します。

※注釈説明

※1 晒す・・・流れ水で洗って洗浄するとともに、繊維をしっかりと固める目的があります。
※2 草木灰汁・・・主に、かし、くぬぎなど堅い木を焼いた灰です。
※3 細打ち・・・繊維を柔らかく、キメ細かくするとともに、粘りを付けるために行います。
※4 サブリ・・・繊維を細かくし、よく練り混ぜるための木製の道具です。
※5 ねり・・・うつぎの木の樹皮を細かく削いだもの。
※6 紙棚・・・紙床のこと。 漉き上がった紙を水きりするために、重ねておいた状態。
歴史 吉野和紙は、大海人皇子が養蚕と共に村に伝えたのが始まりと言われています。
明治中期頃までは、 国栖地区を中心に和紙の原料である楮が栽培され、国栖の約半数戸で和紙作りを行っていました。

第二次世界大戦を境に需要が減ったものの、近年になっては優れた風合いと粘り強さを備えた 高級和紙の良さが求められています。
楮を清流にさらし、一枚一枚丹念に漉いた和紙が庭先に干される 様は冬の風物詩です。

現在も昔ながらの手作業で漉き上げられ、暖かい手触りが心を和ませてくれます。
優れた紙が生まれる 何よりの条件は、美しい空気と清らかな水に恵まれること。その点では、ここは紙漉きに恵まれた 山里といえるでしょう。
関連URL http://kuzunosato.jp/syoukai/index.html

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