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JTCOメルマガ『風物使』

2021年07月16日 配信
「雨傘が想いを結ぶ」 ~季節の使い・JTCO『風物使』大暑号~

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「雨傘が想いを結ぶ」
~季節の使い・JTCO『風物使』大暑号~
  vol.124 2021年7月16日発行
   (旧暦 6月7日・水無月)
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◆このメルマガは、NPO法人日本伝統文化振興機構(JTCO)のメールマガジンに
お申し込みくださった方、もしくは当機構活動にご協力いただいている個人/
団体/法人様にお送りしています。


拝啓

東北地方まで梅雨明け宣言が出され、いよいよ夏本番です。

熱中症に気を付けて、太陽の恵みを存分に楽しみましょう。


+‥‥‥+ 2021年大暑号 目次 +‥‥‥+

◆今号のテーマ
・【器物】権威の象徴でした:傘

◆和遊苑 おすすめの一品
・【姫革】メガネケースハードタイプ発売!

◆新着記事
・【埼玉県の伝統工芸品】草加本染ゆかた

◆季節のレシピ
・【神奈川県の郷土料理】しらす丼

◆編集後記


+。+ 今 号 の テ ー マ ━━━・・‥

【器物】権威の象徴でした:傘

※本記事は、画像付きで下記ページでもお読みいただけます。

https://bit.ly/3rb0upi


「久方の天(あま)ゆく月を網に刺し わご大王(おほきみ)は蓋(きぬが
さ)にせり」
(柿本人麿『万葉集』巻三・二四〇)

【訳】遥か天空をゆく月を網にとらえて、わが皇子はその月を天蓋にしている
よ。

雨の多い時期はもちろん、夏の日よけにも欠かせない傘。日本では、実用品と
してすでに千年以上の歴史がある傘ですが、傘とは本来どのようなものだった
のでしょうか。


●貴人の権威を表す、古代の傘

世界史上の傘の起源は、古代オリエントと言われています。アッシリアやペル
シャ、エジプトなどのレリーフや絵画には、王の頭上に差しかけられる傘が描
かれています。

日本では、4~5世紀ごろの古墳時代の遺跡から、絹などの布を張った木製の傘、
つまり「蓋(きぬがさ=衣笠)」を象った蓋形埴輪(きぬがさがたはにわ)や、
蓋の上部に飾りとしてつける木製の立ち飾りの現物が出土しています。これら
は、王や豪族の威容を示すための道具であったと考えられています。

東京国立博物館の法隆寺宝物館に収蔵されている「太子絹笠」は、聖徳太子
(574-622)が斑鳩宮(いかるがのみや、現法隆寺東院)から、推古天皇の宮
であった小治田宮(おはりだのみや、現明日香村豊浦)への参内の際に用いた
差し傘の蓋布と伝えられ、方形の蜀紅(しょっこう)という、紅糸で織られた
錦が使われているといいます。

高松塚古墳(694年 - 710年頃)の「男子群像」には、この「太子絹笠」と似
たタイプと思われる、方形の蓋布の四隅から総角(あげまき=紐飾り)を垂ら
した差し傘が見られます。

飛鳥時代に制定された『大宝律令』(701年)には、儀式用に使用する蓋の色
が、身分によって決められていました。これによると、高松塚古墳に描かれた、
緑色の蓋布に四隅に朱色の錦と緑色の総角をあしらった蓋は、一位以上の大納
言のものであると言えます。

この傘は、柄の先に骨組を引っかけて吊るすような仕組みになっていたようで
す。「太子絹笠」の蓋布のみが残っていることから、使わないときは柄と蓋布
は別々にして保管していたのはないでしょうか。


●平安時代:実用品としての傘

主に絹でできた「蓋(きぬがさ)」が、貴人の儀式や祭事に使われていたのに
対し、「大傘(おおがさ)」は、布のほかに竹や菅、もしくは紙に油を引いた
ものでできており、雨の時にも使用されていました。

平安時代中期の辞書である『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』(938
年)には、旅行用の道具として蓑笠(みのがさ)とともに大傘が「柄の有る
笠」として掲載されています。

平安文学には、実用品としての雨傘が頻繁に出てくるようになります。10世紀
末に書かれたラブコメディ『落窪物語』には、雨の夜にヒロインの姫君のもと
に通うかどうかを迷った少将が、お供の者に傘を探させて出かけていくくだり
があります。

「『大傘一つ設けよ。衣ぬぎて来む』とて入りたまひぬ。帯刀、傘求めに歩
く。」
(『荻窪物語』)

【訳】 「大傘を一つ探して来い。着物も脱いで来なくちゃな」と言って、少
将は部屋にお入りになった。お共の帯刀は、傘を探しに行った。

この場面の大傘がどのような形状だったのかは不明ですが、旅行道具とされ、
家のどこかに収納されているということは、今の傘と同じようにすぼめること
ができていたのかもしれません。

雨傘が絵画に初めて出てくるのは平安末期(12c)の『源氏物語絵巻』です。
「蓬生(よもぎう)」の帖では、雨の中、光源氏が傘を差して末摘花の館に向
かう場面が描かれています。この傘は端折傘(つまおれがさ、骨の先端が内側
に曲げられた長柄の持傘)と言い、参内など、公家の外出時に従者が袋に納め
て持ち運んでいたそうですから、当然閉じて収納していたのでしょう。

「下りたまへば、御先の露を馬の鞭して払ひつつ入れたてまつる。雨そそきも、
なほ秋の時雨めきてうちそそけば、『御傘さぶらふ。げに木の下露は、雨にま
さりて』と聞こゆ。御指貫の裾は、いたうそぼちぬめり。」

(紫式部『源氏物語』蓬生)

【訳】 源氏がお車からお降りになったので、惟光はお足もとの露を馬の鞭で
払いつつ、館へとご案内する。雨の雫もまた、秋の時雨と同じように降り注ぐ
ので、「お傘がございます。まったく、木の下露は雨にまさりますね」と申し
上げる。源氏の御指貫の裾は、たいそう濡れてしまっているようだ。

しかしながら、ここではお供の惟光は傘を差さず、源氏の露払いをしています
から、このころはまだ、傘は一部の上流階級にのみ許されたものであったこと
がうかがい知れます。


●鎌倉時代:傘が普及する兆し

鎌倉時代の『一遍聖繪(いっぺんひじりえ)』(1299年)は、踊念仏で有名な
一遍上人の布教活動を描いた絵巻物で、傘を差す人々が非常に多く描かれてい
ます。雨傘・日傘を差している場面だけでなく、閉じた傘も描かれており、現
代の和傘と似たような機構の傘が一般に使われていたことが確認できます。

また、この絵巻物では、上人の講和に向かう人々など、それほど身分が高くな
いと思われる人も、笠だけでなく傘を差していますから、このころには日用品
として一般に普及しはじめていたのでしょう。

冒頭の歌は、天武天皇の皇子である長皇子(ながのみこ)が、猟に出たときに
柿本人麻呂が詠んだものです。天空に浮かぶ月を皇子のものとして蓋(きぬが
さ)になぞらえるあたり、当時の権威的な傘の存在を象徴するようです。

かつては貴人のみに許される特別な品であった傘も、長い年月をかけて市井の
人々の日用品として生活に欠かせないものになっていきました。雨や炎天下な
ど、不快な状況から身体を守ってくれる傘に感謝して、大切に使いたいですね。

▼参考サイト(2021年7月14日参照)

別府大学:きぬがさ2―古代王権と蓋―
repo.beppu-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php/gk01401.pdf?file_id=6754

洋傘タイムズ
https://www.kasaya.com/times/index.htm

絵巻物に描かれた「傘」の意匠 : ヒトとモノとの社会的・文化的関係性に関
する研究(1)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssdj/56/3/56_KJ00005879013/_article/-char/ja/

第22回 『源氏物語絵巻』「蓬生」段を読み解く
https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/column/emaki22
ほか



+。+ 和遊苑 おすすめの一品 ━━━・・‥

【姫革】ハードメガネケース販売開始!

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+。+ 新 着 記 事 ━━━━━━━・・‥

【埼玉県の伝統工芸品】草加本染ゆかた

従来の浴衣の製作方法は、長板中形と言われ、型付屋で6.5メートル程の長い
板へ生地を張って、糊で型付け、さらに裏面も同様に行い、紺屋で染料の入っ
た瓶に浸して染め上げる手法のため、生産性も低く、広い作業スペース
も必要でした。

一方、草加市の浴衣は、狭い場所でも効率的に染め上げられる工法を採用して
います。

↓↓↓記事はこちら↓↓↓

http://www.jtco.or.jp/japanese-crafts/?act=detail&id=411&p=11&c=14

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+。+ 季 節 の レ シ ピ ━━━・・‥

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シンプルなだけにしらすの味がものをいいます。小さな子供から大人まで楽し
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+。+ 編 集 後 記 ━━━━━━━・・‥

夏至を過ぎてから、関東では急に暗くなるのが早くなったように感じます。

でも、今も5時前には明るくなっているので、今夏こそは「朝日とともに起き、
夕日とともに寝る」生活を実践したいと思っています。

・・・しかし、どう考えてもやることが多すぎて週末でも7時には寝られませ
ん。

まずは、生活をシンプルにすることから始めなくてはなりませんね!

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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月1~2回発行
発行開始日:2010年6月18日

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